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話は開戦直前に遡る。
~半兵衛視点~
秀吉殿、なぜ勝手に撤退するんだ?せっかく孫四郎と共闘できると思ったのに。
「おい、藤吉郎!お前のせいで俺らは死ぬかもしれないんだぞ!」
「すまない小六殿。」
「すまないでは許されないですよ!兄上を信じてここまで来たのに何で勝手な行動を取っちゃうんですか!」
「…。」
「おい!何か言ったらどうだ?」
「…お前らなあ。俺を怒らせるとどうなるか忘れたか?」
秀吉殿が怒る?あの優しい秀吉殿が?
「あ、その。」「あ、あ…。」
2人ともさっきの威勢どうしたの?
「このこのこのこの!」
ある意味怖い。猿のように爪で2人の顔をひっかきまわし始めた。
「わ、悪かった。…じゃねえよ!お前が悪いんだよ!」
痛そう…。
「半兵衛殿どうすればいいんだ…。」
「いや、あなたがわる―」
そう言いかけてはっとした。危ない。2人の二の舞になるところだった。
「何々?おいらがわる?」
「いえ何でも。…帰りましょう、長浜に。」
こうなったら覚悟を決めるしかないか。
長浜城に帰った。さてどうしようか。
「このままじゃ信長様に謀反の意思ありと疑われそうだな。」
「一応城門は空けておきましょう。それだけでも謀反の意思がないことは伝えられます。後は勝手に帰っていたことの言い訳ですが…。」
どうすればいい?この人は生かさなくちゃいけない人だ。きっと後々天下を取ると思う。
「俺の人生もここまでか。」
「あ~あ。藤吉郎に付いていかなければな。」
「本当にそれよ。皆を巻き込んだことが一番申し訳ない。」
「…最後の宴をしますか。」
「「それだ!」」
秀吉殿と2人で叫んでしまった。羽柴秀長は強運の持ち主だ。
「な、何です兄上、半兵衛殿。」
「今日は皆で飲みまくるぞ!どんどん人を呼んで来い!」
「え、ちょっ、ちょっと!」
「いいんですよ。さて始めますか。」
始まって半刻したところで秀長殿が近づいてきた。
「半兵衛殿、これで一体どうなるのです?」
「静かにしていたら何か企んでるなって疑われるでしょ?でも馬鹿騒ぎしておけば信長様も『こいつ何やってるんだ?』みたいな目で見てくれるかなって。」
「…そんなに上手くいきますかね?」
「いいじゃねえか!さて、飲むぞ小一郎!」
「私は酒は苦手です…。」
「飲め飲め!」
「あ、ああ!」
楽しそうだ。…あれ、ちょっとまずいかもしれない。
ゴホッ!ゴホッ!
「半兵衛殿?」
あれ?血痰?
「どうかしたか半兵衛?」
「あ、何でもないです。咽ちゃっただけです。」
逆に怪しいと思わせちゃったかな?
「…今日は休んだ方がいい。兄上のことは私が見よう。」
「酔ってるように見えて俺も案外使えるぞ。最近のお前は働きすぎだ。もし藤吉郎に何かあったら俺らで対処するから先に帰ってな。」
「…ありがとうございます。」
孫四郎、秀長殿、小六殿。3人に勘づかれちゃったな。もう残されたときは少ないな。でも、私はまだやらねばならぬことがある。秀吉殿、孫四郎、慶松を支えていかないと…。




