64 安土へ ~孫四郎の恋編~
お知らせ:本日10時頃に58話を新たに投稿しました。
是非読んで下さい。
お昼を食べて最初に向かったお店は八百屋だ。それぞれ料理に必要な物を買っていく。
「大根は絶対にいるね。3本は入れよう。」
「葱もいりますね。これは10本あっても問題ない―」
「7本で十分。ええと人参は8本いるかな。」
こんな感じでささっと選びお会計をする。京に比べたら全然安くてびっくりしちゃったよ。次は服屋だね。
服もささっと選ぶ。久太郎さんは成長がとっくに終わっているのでまだ成長し続ける僕ら3人組の服を買う。僕はいつも緑色の木綿の服、慶松が水色の木綿の服、そして万福丸は…ここで時間がかかるか。元々大名家の息子だもんね。長政殿はどんな服を選んだかな?…青色にしとくか。よし、これで新しい服もゲットした。
そこからは普通に皆の欲しい物を買っていたら気づいたら夕方になっていた。さて、帰りますか。
「ううっ。今日も売れなかった…。」
「姉さん、泣かないで。姉さんは悪くないから。」
どこからか悲しい声が聞こえる。…こんな店と店の間でこっそりやってるのか。
「孫四郎さん、か~えろっ。」
可哀想に。こんな場所じゃ売れないよ。何を売っているんだろう?品揃えを見てみるか。
さて店を見てみると…。可愛い…。さっきの会話からして姉の方だろう。滅茶苦茶可愛いじゃん。
「孫四郎さん、何してるの?」
「しっ!黙っててください。…ちょっといいかな?ここでは何を売っているの?」
「しくっ。しくっ。」
「姉さん、お客様だよ。」
「あ、いらっしゃいませ!こちらでは…ヒクッ。石鹸を…。」
何を言っているかわからなくなっちゃったよ。
「とりあえずこのタオル…じゃない手拭で拭いて。」
タオルと言った瞬間妹の方がちらっと見てきた。でも何も聞いてこなかったということは特に気にしなかったということだろうか。
「ありがとうございます!…この店では石鹸を売っています。1個100文なのですが…お侍様は優しいので80文にしますね。」
いや、安くしちゃ駄目でしょ。赤字なんでしょ?
「別にいいよ。元の金額で。全部買うよ。合計いくら?」
「ぜ、全部⁉…ええとお侍様が言うとおりに値段にしますと4貫ですが…大丈夫ですか?私の店なんかに―」
4貫ぐらい簡単に払えるよ。本当に銭は溜めて損じゃない。
「いいよ。このお金があればあなたたちも好きなものが買えるでしょ?これでいい?」
大金を見て驚いているのか上の女の子は動きが止まってしまっている。
「…本当にいいのですか?」
「いいよ。これで2人に笑顔が戻ってくるのなら。」
「…ありがとうございます!絶対にこのお金を無駄にしません。」
良かった。…泣き止んだ後の笑顔が本当に可愛い。にしても石鹸100個か…。まあいいや。この子たちは多分今日だけだったら黒字でしょ。
「石鹸そんなに買ってどうするの?洗い物や手洗いに使っても…。」
「いいじゃないですか。僕が買ったおかげであの子たちは笑顔で暮らせる。それでいいじゃないですか?」
「…まあね。」
さて夕飯を作りますか。
2日後
街をぶらぶら歩いていたらまたあの石鹸売りの少女たちに出会った。
「石鹸いかがですか?何でもきれいに落ちますよ~!」
確かにね。あの石鹸は不思議なことに前世で使っていた物とそんなに変わらなかった。…何で誰も買ってあげないんだろう?もしかしてこの2人、家がない?
「お2人さん、こんにちは。」
「あ、お侍様!いらっしゃいませ!」
「ねえ2人とも。家って今どんな感じなの?」
急にこんなことを聞いたら驚くよね。でも聞かずにはいられなかった。
「なつ、ちょっと店番任せていい?私はお侍様と話をしてくる。」
「わかった。」
急に声色が変わった。とりあえず茶屋にでも行って話を聞きますか。
お茶を飲みながら女の子は話を始めてくれた。
「私は桜と言います。妹はなつという名前で医術に詳しいです。」
今話している桜は石鹸を売る専門の子でなつって子は医者ということだろうか。
「実は私たちの父と母はとある戦で焼かれて亡くなったのです。」
ドキッとした。安土から近い焼き討ちの場所はあそこしかない。
「比叡山の焼き討ち。お侍様もご存知ですよね?」
「うん。僕もあの戦場にいたから…。」
「え、お侍様は―」
「僕は前田孫四郎利長。孫四郎って呼んで。…ごめんなさい。あの時僕が信長様を止めていれば―」
「いえ、別にそのことはまだいいのです。ま、孫四郎様にはわからないかもしれませんが民にとって親が戦死するというのはある意味慣れた事なのですよ。」
それはきっと桜となつだけだよ。
「それで行き場がなくなった私たちを救ってくださったのは今の天下人、織田信長様でした。」
信長様が?一体どういうこと?
「あの方は母が大事と言っていた衣食住のうち食をひょんなことから毎日提供してくださいました。」
「じゃあその服は自分たちで縫った物っていうこと?」
「はい。服は母に縫い方を教わっていましたので。…ですが住居だけは見つからなかったのです。」
それにしては身体がきれい…そうか石鹸で体を洗っているからか。水は川から汲んでいるのか?
「今はこのお店とお店の間で何とか生活していますがこの間みたいに誰かに大量に買ってもらわないともうこの市も追い出されてしまいそうで…。」
「わかった。僕の屋敷においで。」
勝手に口から出ていた。
「え、ほ、本当ですか?」
「だって住処がないと毎日安心して寝れないでしょ?それにね、今、前田・堀家で毎日家事ができる人が1人しかいないんだ。もしも良ければなんだけど僕の家で住んでみない?食事・家賃はなしで。」
「でもそれは孫四郎様に迷惑なんじゃ―」
「迷惑じゃないよ。僕の家に住んでいる人は元々は別々の場所で生まれそれぞれ違った人生を送ってきたんだ。それが2人ぐらい増えても何の問題もないよ。」
「…ありがとうございます。本当にありがとうございます…。」
「お礼はいいから早くなつに伝えてあげな。」
親がいなくて家もない可愛い子を家に入れてこの時代では何が悪いかな?僕からしたらお世話してあげるだけだもん。2人とも、僕が幸せにさせてあげるよ。
不思議だな。桜と一緒にいると胸のドキドキが止まらない。茶々様たちの時とは違うドキドキだ。これって…恋?
桜となつはオリジナルキャラです。
孫四郎は桜を好きになってしまいました。果たしてこれから孫四郎はどうなっていくのか。また明日の投稿をお待ちください。
午前10時ごろに58話を新たに追加しました。今後のストーリーに関わるので絶対に見てください。
明日は12時と20時の2本投稿です。
あ、Merry Christmas!です!




