50 終わりの始まり
他者が戦うので薄い内容の第一次高天神城の戦いと孫四郎が戦いに行く第三次長島一揆について書きました。
…ストックが尽きちゃう。やばい。
天正二年。この年の出来事として覚えていることは2つしかない。第一次高天神城の戦いと第三次長島一向一揆だ。でもそんなことより嬉しいことがあった。
正月8日
2日前に信長様から手紙が来た。曰く、「俺にまた娘が生まれた。お前の嫁にする予定だから3日以内に見に来ること。又左も呼んでいるぞ。あと、長浜城にはよるなよ!秀吉と会う暇があったらさっさと未来の嫁に会いに来い!」とのことだった。ということで久太郎さんにお留守番を任せ岐阜城へ向かうことにした。
岐阜城に着くとちょうど荒子からやってきた父上に出会った。一応父上に浅井の子を家臣にしたことをばらしたかと聞いたけど全く知らないようだった。とすると…。
「又左殿と孫四郎殿ですね。」
「あ、長谷川さん。今日の担当は長谷川さんですか?」
「はい。今日は荷物が少なそうですね。」
「一泊二日で帰る予定なので。」
「とりあえず荷物を置きに行きましょうか。久太郎殿と孫四郎殿の部屋は今も当時のまま残されているので。」
長谷川秀一さん。信長様の側用人で誰に対しても丁寧語を使う優秀な人。でも久太郎さんや自分とは違いお固すぎるからあまり関わりづらいんだよね。
そして部屋が今もそのままという事実に驚いた。そろそろ誰か別の人の部屋に変わってるかなって思ったけど話を聞いた感じ誰もその部屋にふさわしい人が来ていないかららしい。荷物を全て置いて京からのお土産を持って向かった。
「失礼します。前田又左衛門様、孫四郎殿到着です。」
「おう!入ってくれ!」
な、何だ?いつもよりテンション高いぞ。とりあえず挨拶をして入ってみた。
「これがこの間生まれた子だ。どうだ?」
僕に聞いてるんだよね。でもいきなり言われても感想が思いつかないよ。
「か、可愛らしいです…。」
「同じく。」
父上の感想薄っ。僕も言えたもんじゃないけど。
「そうか。…それでな。1つ悩みがあるのだ。」
何だろう…。
「まだ名前が決まっていないのだ。」
え?
「ちょっと待ってください。この姫様は孫四郎と―」
「婚姻させるぞ。」
それはわかってる。前にデータで見ちゃったもん。え?
「わ、私たちが決めていいのですか?」
「俺が名付けても奇妙、茶筅、三七のように適当にしか名付けられんぞ。生まれたのが姫の時は大体他人に聞いている。」
確かに信忠様、信雄様、信孝様の幼名ってひどいもんね。だからと言って僕らで付けていいのかな?
「早く出さないと適当に名付けちゃうぞ。」
確か永姫なんだよね。でも読みが『なが』なのは嫌だな。…『えい』と読ませるか。
「永姫がいいと思います。永は末永くなど縁起がいいですから。」
「…であるか。」
「はい。」
「…其方の言う通りにしよう。成長したら嫁にするからな。」
きっとこの子は優しい子になるよ。目線からそう語っているもん。
「信長様、俺は何で呼び出されたので?」
「又左とはこれから話があるからだ。孫四郎、先に戻ってろ。」
「わかりました。」
一体何を話すんだろう?と思いながら部屋に戻った。
その日は疲れたからか布団にくるまったらすぐに寝てしまった。翌朝、食事を取った後、京へ戻った。
5月
~勝頼視点~
今、俺は父上が成し遂げられなかった高天神城攻略を始めている。高天神城は遠江東部唯一の徳川の城でここを落とせば完全に東部は武田領になる。先に昌景や昌幸たちにも相談しておいたが特に異論は出なかった。皆わかっているんだ。俺は無駄なことはしないことを。三方ヶ原でなぜ生きているかわからない森可成を討つように命じたのも俺だし長篠城の奥平が寝返ったときもすぐに取り返すのではなくあえて高天神城を選んだのも今、信長と戦ってもとてもじゃないが敵う訳ないからだ。だが高天神城を取るのも相当悩んだ。これで信長を刺激しないだろうかと思ったが史実ではこの高天神城の戦いまでは武田は勝利を続けているんだ。まずは1勝。そこからどうやって信長を撃退するか考えよう。大丈夫。父上が残してくれた家臣は皆優秀だ。絶対に武田は生き延びる。
その2か月後、高天神城は武田の手に落ちた。
6月下旬
~孫四郎視点~
信長様から書状が来た。曰く、長島と決着をつけるから来い。とのことだ。
「何か悪いね。僕が行けばいいのに‥。」
「久太郎さんの強みは内政、僕の強みは狙撃だからしょうがないですよ。」
「それはそうだけど…。」
「それに、今回の戦は来ない人が多いみたいだし。」
「秀吉様が来ないのは意外だったね。風邪をひくなんてらしくない。」
「こういう時の秀吉様は本当に風邪ですからね。でも秀吉様の場合は弟の秀長様がいるから代役も完璧だし。」
「今回の部隊分け複雑だったよね。あれは一体…。」
そう。今回は振り分けがいつもと違う。具体的に言うと
本隊:信忠様、信包様、秀成様、長利様、信成様、信次様、斎藤利治殿、長可殿、恒興殿、孫四郎など
柴田隊:柴田様、佐久間様、稲葉様、蜂屋様、賦秀さん
信長隊:信長様、秀長様、半兵衛先生、丹羽様、安藤殿、成政様、父上など
水軍:九鬼様、一益様、林様など
という風にいつもとは全然組み合わせが違うのだ。柴田様と父上、成政様を分けたのはなぜかわからない。
「まあ頑張ってね。」
「ご武運を。」
これで最後の長島遠征の予定だ。でも途中で寄り道をしてから行こうかな。
長浜城に着いた。秀吉様からずっと見に来てくれって言われてたから見に来たけどよくよく考えたら秀吉様は今風邪をひいているんだよね。まあうつらないように布を巻いておくか。
「孫四郎~!ゲホゲホ。」
ありゃりゃ。これは結構ひどいね。
「お前様無理しないで。今日は私が孫四郎を見るから。」
「すまんな、ねね。じゃあ寝させてもらうとするか…。」
いなくなったのを確認して布を外すと何で巻いていたのかと聞かれたので前世での予防効果について説明したら本当かな?と疑われた。本当なんですよ!…科学的には。
城内はすごく広かった。荒子なんか比べ物にならないぐらいにだ。いいなあ。こんな城を手に入れてみたいな。あ、でも広すぎると守るときに苦労するね。よく城内の様子を見ておこう。いずれ攻めるかもしれないから。
…うん、大体見学できたかな。これで万が一この城が敵になっても簡単に攻められそうな作戦を立てられそうだぞ。今度の戦が終わったら久太郎さんや慶松と一緒にどうやってこの城を攻めるかシミュレーションしてみよう。
「どうだったかな?私の説明で足りた?」
「はい。おかげさまでこの城の仕組みがよくわかりました。」
「そう?なら良かった。」
「おい佐吉!また鍛錬の約束忘れただろ!」
「何のことです?私はいいとは言っていませんでしたが。」
「いーや!お前はうんと言っただろうが!」
何をしているんだ。あの2人?佐吉って言ったか?ええと…。
「あの、ねね様。何であの2人は喧嘩しているのですか?」
「あの子たちはうちの旦那の子飼いなんだけどね。いつもああやって喧嘩しているんだよ。」
「止めた方がいいですか?」
「大丈夫。孫四郎が止めなくてももう1人が止めるから。」
この3人組ってもしかして…。
「市松!佐吉!またやってるのか。」
「げっ。虎之助!」
「…またあなたですか。」
「全く。佐吉は反応が曖昧なのが悪いし市松も反応を上手く返せない奴を攻めるのはよくないだろ?」
「…。」
佐吉が後の石田三成、市松が福島正則、虎之助は加藤清正になるはずだ。もうこの頃から三成少年と正則少年は仲が悪かったんだ。
「あ、おねね様。それと…。」
これは自己紹介した方がいい流れだね。
「初めまして。織田家家臣前田孫四郎利長と申します。以後お見知りおきを。」
「あ、あ、あ!」
どうしたんだろう?
「もしかして9歳で初陣を飾ったあの…!」
それか。確かに有名だよね。当時としてはありえない年齢で初陣だもんね。
「はい。まさか金ヶ崎が初陣になるなんて思いませんでしたけど。」
「お、某、加藤虎之助と言います。覚えて頂ければ幸いです!」
「虎之助殿ですね。覚えておきます。」
加藤清正に名前を知っててもらっていたことは嬉しい。将来的に城の建設を手伝ってもらったりするかもしれない。
「なあ虎之助。暇なら鍛錬しようぜ。」
「え、いや、その…。」
困ってるね。
「市松殿、私は虎之助殿とお話をしているのです。半刻ほどお待ちくださいませんか?」
「ええ?」
「市松、この方の言うことを聞いておけ。もしかしたら俺らでも出世の道が開けるかもしれないぞ。」
大丈夫。そんなこと気にしなくても君たちは歴史に名を残す武将になれるから。
「ちぇっ!」
うーん。癖だと思うけどあまり好きにはなれないな。佐吉も何かタイプじゃないし。虎之助殿ぐらいかな、まともなのは。
「すみません。孫四郎様。」
「あ、孫四郎で構いませんよ。事前に調べておいたのですが同い年だったので。」
「え、俺…某のことまで調べてあるので?」
しまった。余計なことを言ってしまった。
「同年代の将来の競争相手を事前に知っているのです。」
「お、俺が?」
「はい。きっと虎之助殿は近いうちに私の役職など抜いてしまうでしょう。」
正直おだててるようにしか言えないや。ごめんね。
「ありがとうございます!でも流石に抜けるとは…。いや、せめて孫四郎様の下まで追いつけるように頑張りますね。」
「応援してます。」
その日は長浜で一泊した。秀吉様のくしゃみの音がうるさすぎて全然寝れなかったけど急に来訪した僕が悪いんだから文句は言わない。でも常人のくしゃみよりもうるさい気がするんだけどな。まあ気にしない、気にしない。
翌朝には長浜城を出て岐阜城に向かった。流石に何度も京と岐阜を何度も行き来しているから迷うことはなかったけど相変わらず沿道は整備できてないね。信長様、そろそろ尾張・美濃・近江の道ぐらいは整備したらどうですか?
岐阜城
久しぶりに会った皆様にご挨拶をした後、今日は信長様ではなく信忠様に挨拶をする。
「初めまして、信忠様。某、前田孫四郎利長と申します。」
「其方が前田孫四郎か。父から其方の活躍ぶりは聞いておるぞ。」
顔は信長様とは違い優しそうだ。
「私は其方とは違いまだ初陣を終えたばかりだ。そのためまだまだ分からないことが多い。どうか私に戦というものを教えてほしい。」
いや、僕に聞くよりもお父上様に聞く方がいいですよ。
「信忠様、勝蔵でございます。方々の準備が整いました。いつでも下知をどうぞ。」
長可殿は信忠様と1個違いだったはず。もしもあのことが起きないのであれば将来いいコンビになるかもしれない。
「わかった。…此度の戦で長島の地を我らの手に戻そうぞ!行くぞ!」
「応!」
流石は信長様の子だ。でも信長様とは違い明るいオーラを感じる。この方ならきっと未来が切り開けるはずだ。でも信長様とは相性が合わないだろうな。光と闇って中々一体化しないもんね。
7月14日。いよいよ一揆勢とのラストバトルが始まった。まず始めに柴田隊が守備の準備をしていた一揆勢を追い払った。信長様率いる本隊も小木江村一帯を破った。信忠様が命じられたのは僕が1番嫌いな戦い方だった。
「孫四郎、我らは敵の拠点4か所を焼き払うように命じられた。」
「…関係ない民も巻き込まなくてはならないのですよね。信忠様はどうお考えでしょうか。」
「私も其方と同じ気持ちだ。だが以前父上から聞いた話では話を聞かないものには優しくしても意味がないと言っていたぞ。」
それ、僕が言ったことでしょ!何でしれっと信長様は自分の台詞のように使ってるの?
「…確かに信長様の仰る通りですね。わかりました。焼き討ちしましょう。」
「いいのか?」
「はい。…実は私がその言葉を言ったんですよ。1回目の長島攻めの時に。ですが比叡山のあの燃え方を見てから躊躇するようになってしまって。ですがここで燃やさないとまた一揆が発生した時に舐められるかもしれないですし。」
「…もしかしたら其方、父上を超える恐ろしさを持っているかもしれんぞ。」
そ、そんなわけないですよ!あの人と一緒にしないで!
あ、燃えてる…。でも何かいつもと燃え方が違うように見える。何か希望の炎のように見えるのは僕だけだろうか。いや、長可殿もきれいだな~みたいな感じで見てるからきっと僕が異常なわけではなさそうだ。
「さて、移動しようか。」
いや、僕らが異常なだけのようだ。信忠様は初めてだったからか今にも泣きそうだ。なんかごめんなさい。
【孫四郎君、信長様に影響されまくってるんじゃない?】
【そうかもしれない。…どうしよう。】
嫌だ嫌だ嫌だ。あの人と一緒のように思われたくない。
翌15日には九鬼水軍と信雄様率いる水軍が長島の周りの川・海を船まみれにした。やばすぎる光景だ。前世でも見たことがないよ。やっぱり僕らの主君って変わり者だよね。
残っている城は長島・屋長島・中江・篠橋・大鳥居の5つのみだ。篠橋城と大鳥居城は降伏を申し込んできたけどそんなんで許されるんだったら今までの戦いで死んだ皆に申し訳ないと考えた信長様は拒否をし続けた。8月2日、大鳥居城の兵士が脱出しようと逃げ出してきたけど信長様は念入りに外壁一周に人を並べ構えていたため続々と討たれていった。あれ?この中の首に女の首もある…。信長様、貴方本当に人ですか?
12日、篠橋城の兵士が長島城で降伏したいと意味わからないことを言ってきた。でもこれで長島城の兵糧を早く減らせると思った信長様は彼らの言い分を承認した。思惑通り9月29日に長島城兵は降伏を申し出てきたけどあの方は断じて許さなかった。出てきた兵士を次々に鉄砲で討ち取っていった。地獄絵図だよ。何で皆出てきちゃうの?いや、出なくても討たれるのか。なんて思っていたその時だった。
「そこまでだ!我ら、織田信長の首を取るためだけにこの世に生きてきた!皆、あいつを討て!死ね!」
やばい。一気に800人ぐらいが突っ込んできたよ。
「ぐはっ!」「兄上…。」
この声は信広様と秀成様の声だ。まさか…と思った時には遅かった。横では2人はすでに血を吐いて倒れていた。
「死ね!」
まずい。僕もやられちゃう。
「どけどけ!」
「ぎゃっ!」
この声は…。
「大丈夫か?孫四郎殿。」
助かった。
「ええ。ありがとうございます、長可殿。」
「気にするな。っておっと!」
あ、後ろから刺されそうですよ!ここは僕が撃つか。
「おのれ、おのれ!」
「ありが―」
「お礼は後で構いません!まずはここにいる敵を倒しましょう。」
「…そうだな。後ろは任せたぞ。」
「お任せを。」
大体300人ぐらい僕らだけで討ち取ったと思う。他の皆も一揆勢を討ち取っていったけど50人ぐらいの人には逃げられてしまった。この戦いだけで織田一族は6人も亡くなってしまった。怒った信長様は落としていない2つの城を火攻めにした。その結果合計2万人の死者が出てしまったそうだ。
「…燃えろよ、燃えろよ。炎よ燃えろ。」
とうとう信長様と同じように歌うようになってしまった。
「珍しいな。お前が火に関する歌を歌うなんて。」
「信長様…。僕はようやくわかりました。今回の戦で敵に情けは不要だということに。」
「…!お前がそんな風に考えるとは思わなかったぞ。」
もう許せないんだ。少しの隙が味方を失ってしまう。そんなことはあってはいけない。
「お前が鬼になるなら俺も敵に対しては情を捨てるぞ。」
まさか…。信長様、あれで本気じゃなかったんだ。
「孫四郎、これからは修羅場ばかりだ。それについて来れるか?」
「…はい。皆が笑って暮らせる世のため私は心を鬼にして戦っていきます。」
僕は…俺は決めた。今後は必要ならば焼き討ちも躊躇しないよ。例え犠牲が増えようとも。
第3章完結。
闇に染まった信長と多少ダーク要素が加わった孫四郎。一体これからどうなるのか、明日以降の投稿をお待ちください。
この後21時に登場人物のまとめを出します。是非見てください。




