41 虎に噛まれる
本当に1年を1話にまとめました。
孫四郎はそんなに活躍しませんがあの人が今回亡くなります。
元亀3年。数えで11歳になった。まだまだ成長盛りだ。今年中に150cmは行くかな。周りを見るとそろそろ久太郎さんの伸長に追いつきそうだ。
さて今年は僕が参加する戦がなかった。(本心では喜んでいる)でも周りではたくさんの出来事が起こったのでそれについてまとめてみることにした。
まずは対浅井・朝倉に関してだ。3月に信長様は浅井長政殿の居城である小谷城を再び攻めた。7月には虎御前山砦を築き8月には朝倉家臣の前波吉継と富田長繁が降伏した。さらに10月には秀吉様(実際に頑張ったのは半兵衛先生)の働きにより浅井家臣の宮部継潤が織田方に寝返った。これにより浅井は北近江に釘付け状態になっている。
次に対三好だ。去年から三好義継と松永久秀殿の動きは怪しくなっていた。今年に入ってからも味方の畠山昭高殿と戦ったりこちらが調停するためにやってきたら籠城したりするなど織田家との敵対心が見えていた。でも久秀殿は信貴山城の戦いで死ぬはずだからこれはもしかして偽りの裏切りなんじゃないかなって思うけど。
そして信長様と義昭の関係も変わった。これまではお互いに信用していたけど信長様が17条の詰問文を送った結果、義昭は激怒したらしい。怒った義昭は周囲の大名に信長を討つよう命じる文を送ったそうだ。多分そんな手紙は役に立たないよ。あの甲斐国の御方を除いたら。
東側ではあの有名な『信玄の西上作戦』が始まった。まず9月29日に山県昌景と秋山虎繁が三河に攻めてきた。10月10日には信玄本隊も遠江に侵攻を始め三河・遠江の城がどんどん武田の下へ落ちていった。14日には家康殿と信玄がいよいよ激突した。結果は言わずともわかる武田の圧勝だった。ゲームでは一言坂の戦いと呼ばれていた戦いだと思う。
16日からは二俣城の戦いが始まった。ゲームでは難攻不落の城だったけど山県昌景の金堀衆によって水源を断ったことにより城兵たちは士気が低くなって降伏した戦いだった。実際にも似た戦いをしたらしくこの戦いによって遠江で中立を決め込んでいた地侍たちは一気に武田に降伏した。
我ら織田に情報が届いたのは二俣城の戦いの最中の11月下旬だった。信長様はすぐに水野信元殿、佐久間信盛様、平手汎秀殿、林秀貞殿、森可成様、滝川一益様を援軍として派遣した。結果を知っているこちらとしては出来れば皆の出兵を止めたかった。でも無理だった。信長様はもう何を言っても聞いてくれないからだ。何で聞いてくれないの?武田には3000ぐらいの援軍を出しても変わらないのに…。こうなったら皆生きて帰ってくることだけを祈ることしかできない。皆様、どうか生きてください。
12月22日、徳川と武田の両軍は再びぶつかった。三方ヶ原の戦いである。徳川・織田連合軍は必死で武田を食い止めたが惨敗だったらしい。以下は無事に帰ってきた佐久間殿の報告である。
「この度の戦では早々と撤退してしまってしまい申し訳ありませんでした!」
「本当にその通りだ。今後の戦で取り返さなかったらクビも近いと思っておけ。」
今だけは本当にその通りだと思う。噂によると佐久間様は1人で先に安全なうちに撤退を開始していたらしい。…このままではいけないね。僕が話題を振ろうか。
「それで、当時の様子はどうだったのです?」
「は、はい。…た、武田軍は我らが後から突くことを知っていたのです。そ、それであのたけ、武田―」
何を言っているのかわかりづらかったのでまとめることにした。まんまと罠に騙されてしまった家康殿の家臣は信玄にただで三河を踏ませないように徹底抗戦をしたらしい。最初は勢いがあったおかげが武田勢を押す勢いがあったらしい。だが徳川・織田軍は兵数が少なかったのもあって段々減っていった。一時、家康殿は敵兵に突っ込んで死ぬことも考えたそうだが夏目吉信や鈴木久三郎という武将が家康殿の身代わりになっている間に逃げろと言って浜松城に逃げて帰ったらしい。徳川は多くの有力な家臣が戦死した。織田軍も最後まで残った平手汎秀殿と森可成様が討死したそうだ。恐れていた事態が起こってしまった。可成様の死は避けられなかったのか。僕は何で止められなかったんだ。もしも止めておけば変わったかもしれないのに。
「これは水野殿が可成殿から最後に託されたものでございます。」
「これは。…十文字槍。三左が愛用していた。」
懐かしい。志賀の陣の時も持って戦っていたね。でももうあの方に会うことは出来ない…。
「私が持つべきものではないことはわかっております。これは信長様がお預かりくださいませ。」
は?何でそうなるの?やっぱり頭がいかれちゃってるんじゃない?
「お待ちください。この槍の持ち主は可成様でございました。つまりこの槍は森家が所有している物。ということはこの槍は可成様の嫡男である長可殿に渡すべきではないでしょうか。」
「孫四郎の言うとおりだ。俺が持っても適当にその辺に放置するだけだ。だが長可だったら親の形見として大事に使ってくれるだろう。」
いや、放置しちゃ駄目でしょ。可成様の亡き形見だよ?
「申し訳ありません。私は勝手な振る舞いが多く―」
「わかっているならすぐ直せ。孫四郎、森家にこれを届けてもらってもいいか?」
「私がですか?」
「お前は森家と仲がいいだろう?俺は今、顕如との文の内容を考えていてそれどころじゃないのだ。許せ。」
顕如と仲いいの?もしかして石山合戦はあのショボい淀川堤の戦いだけでおしまい?ってそんなこと考えてる場合じゃない。しょうがない。僕が運ぶか。
「わかりました。」
と言って持ってみたけど持てないや。改めて可成様が力持ちだったことがよくわかる。
「久太郎も手伝え。」
「あ、はい。」
ごめんね、久太郎さん。巻き込んじゃって。
久しぶりに岐阜の森家を訪ねた。
「長可殿、孫四郎です。ちょっと出てきてもらってもいいですか?」
「いいですよ。ちょっと待ってて下さい。」
相変わらず門の開き悪いなあ。そういえば可成様は直す直すと言って全然直さなかったな。そして長可殿は相変わらず言葉遣いが丁寧だ。武人とは思えない。
「お待たせしました。…これは。」
「既にご存知かもしれませんが4日前の26日。森可成様は武田軍との戦闘中に力尽きてそのまま討たれたそうです。これはその可成様が水野殿に最後に託した槍でございます。」
「わざわざ俺に届けるためだけに来てくれたのか?」
口調が変わった。どうしたんだろう?ちょっと怖いよ。これって勝三モード?
「いえ、長可殿の体調とかも気になって来てみました。」
「俺は全然元気だ。父は言っていた。俺が死んだらお前が森の長となる。だからしっかりしろと。」
「悲しくないのですか?他家の私でも最初に聞いた時は悲しくて何も話せなかったのですが。」
「…。それは、その…。」
我慢しているね。どうしようかな。なんて考えてたら体が勝手に動いていた。
「…孫四郎殿。」
「泣いていいんですよ。今泣かなかったらいつ泣くのです?それこそお父上様は悲しむと思いますよ。」
「…ウウッ。ウウッ。」
僕は長可殿の肩あたりを抱いてあげた。本当に身長が伸びたなって感じるよ。あれ?近くで様子を見ていた久太郎さんは複雑な表情で様子を見ていた。どうかしたかな?
「すまんな。さっきは変なところを見せちゃって。これ、孫四郎殿にあげるよ。」
これは…あっ!可成様にとってもう1つの大事な武器の鉄砲じゃん。
「いいのですか?これは大事な―」
「いいんだ。父上は生前、俺が死んだらこの鉄砲は孫四郎に渡してくれって言ってたから。」
「こんな大切な物を受け取れません!僕が一体、可成様に何をしたというのです?」
「受け取ってくれ。その代わりに俺らのことを忘れないでほしいんだ。孫四郎は絶対に出世するだろう?でも俺は父上の立場につけるのかさえ危うい。それを―」
そういうことか。…わかったよ。
「受け取ってあげなよ、孫四郎さん。」
「わかりました。長可殿のことはともかく、蘭丸たちのことも常々心に入れながら生きていきます。」
「そう言ってもらえてよかった。」
その後、可成様の妻のえい様や蘭丸たちとも挨拶をした後、岐阜城に帰ることにした。
「孫四郎さんって人の気持ちが読めるのか読めないのかよくわからなくなってきたよ。」
そんなので悩んでたの?いつものように『僕にもやってよ~』かと思った。
「人の気持ちは大体わかります。でも1つだけわからない感情があるのです。自分が経験したことのない感情で。」
「その分からない時の対応が賦秀への対応ということか。」
わかってるのか。やっぱり僕はこの人には敵わない。
「そうですね。…そういえば明日は正月か。」
「今年は後半忙しかったら時の感覚が狂っちゃうよね。何か買ってく?」
「やめておきましょう。この状況でも喜ぶのは信長様ぐらいしかいませんから。」
「そうだね…。今日は早めに寝よう。」
そんな会話をしている最中にも可成様との思い出がどんどん出てくる。あの笑顔、戦い方、勇気。何を取ってもあの人は強かった。可成様、貴方に教えてもらったことは絶対に忘れません。いつかあなたを超えられるように日々鍛錬を続けます。
森可成退場です。志賀の陣で生かしても7話先で戦死してしまった…。出来ればもっと活躍させたかったです。ですがここで退場することで可成の次男、長可が活躍できる機会が増えるかなって思って討死させてしまいました。
森家はここから長可・蘭丸が活躍していきます。この2人も最期が悲しいんですよね。どうやって回避させようか、またそれとも史実通りに最期を迎えてしまうのか。どんな未来になるかは私の頭の中に入っていますがネタバレになってしまうので今、ここでは書きません。
可成の考えは長可・賦秀・孫四郎にそれぞれ受け継がれていきます。槍・鉄砲の名手。誰がどの才能を受け継ぐかは皆様の想像通りです。




