39 1人目の家臣
まさかの前回の後書きに書いたことが本当になりました。
果たして誰を家臣に加えるでしょうか…。
しばらくずっと火を眺めていた。早く撤退の命令が出ないかな。なんて思っていたら隣に半兵衛先生がやってきた。
「ずっと眺めていても体に悪いだけですよ。」
「わかってますよ。でも…。」
涙こそ出ないが何か悔しいような悲しいようなそんな気持ちで混沌としていた。
「孫四郎はこの戦で何を学んだ?」
学んだことか。…よし。まとまった。
「そうですね。いくら言うことを聞かない相手とはいえ簡単に非道な戦法で攻めてはいけないこと、そして駄目なことだとわかっていて反論しないのはいけないことだということがわかりました。」
「そうだね。とすると君が今取るべきことがわかるんじゃないかな?」
まさか後始末?
「後始末はやりたく…そうか。まだ奥に逃げた人がいる。その人たちを助けに行かないと。」
とっさに思い付いた。多分先生はこれを言いたいんでしょ。
「え、そこまで考えられるの?…私もついていくよ。君だけじゃ危ないから。」
違ったらしい。でも結果オーライだ。
「話は聞かせてもらった。おいらも協力しよう。まだ助けられる人がいるんだろ?」
ビックリしたなあ、もう。
「盗み聞きは良くないですよ。でもありがとうございます。秀吉様。」
「多分奥にいるのは子供のはず。あまり大勢で向かっても子供たちは恐怖で怯えるだけでしょう。とするとここは10人ぐらいの少数で奥に向かうのが妥当かと。」
秀長様も近づいてきた。
「秀長殿の言う通りです。秀吉殿、それでいいですか?」
先生が聞くと秀吉様は、
「うむ。では今から行く者を決める。ええとまずはおいらだな。で、小一郎、半兵衛殿、小六殿、孫四郎までは確定。後の5人は君と君と君と君と君!長康は残っていろ!」
とすごい適当に人を決めた。僕は見ていたんだ。奥に逃げていく子供たちのことを。何とか助けてあげないとまた悲劇が生まれてしまう。急ぐんだ、僕。
山をしばらく登っていくと質素な小屋があった。…怪しい。
「藤吉郎、流石にここにはいないだろう。早く上に行こうぜ。」
ちょ、小六殿。駄目ですよ。
「小六殿、そうやって見逃すと助けられる命も助けられなくなるぞ。」
「秀吉様の仰る通りです。それにあれを見てください。扉が開いています。わざわざ開けていて誰もいないと思わせて本当はいるという事案は結構あるのですよ。」
似ているかはわからないけど源頼朝が石橋山の戦いの後に洞穴に逃げた時も大場軍はまさかこんなところにはいないだろうと感じた人がほとんどだったらしい。梶原景時という男を除けば。
「秀吉殿、孫四郎。ここは2人で行くべきかと。」
「どうしてだ?」「どうしてです?」
2人で同じことを聞いてしまった。
「この足跡を見てください。1つを除けば残りは全て子供です。子供たちにとっては10人でも大勢と勘違いしてしまい恐怖で何も言えなくなってしまうでしょう。」
こんな消えかけの足跡まで気づくとは。流石は半兵衛先生。僕も見習わねば。
「それと言い方は悪いですが兄上は猿顔で孫四郎はまだ子供だからもしかしたら大人には話せないことを話してくれるかもしれません。」
猿顔?似てないよ。鼠の方が似ている気がする。とは言わないでおこう。
「とりあえずこれをつけてもらって。」
「何だ、これは。…孫四郎、このお面は何に似ている?」
「猿ですね。…先生、これはいらないですよ。」
「確かに。」
先生意外に遊びの精神ありますね。…ってそうじゃない。
「半兵衛殿‼おいらで―」
「行きますよ!早くしないと逃げられてしまいます。」
「そうだな。じゃあ小一郎。警備は任せた。」
「お任せ下さい。」
流石に鉄砲とかが入っている風呂敷は先生に預け、防衛のための刀のみ持って中に入ることにした。
中に入ってみたけど真っ暗だった。
「秀吉様、ろうそくに火を点けて。」
「おう。任せておけ。」
小声での会話はあまり慣れていないからいつも以上に慎重に行動している。子供たちは…いるぞ。気配で感じる。多分奥だ。足音を立てないように忍び足で向かう。多分この人たちの考えは奥まで行けば見つかりにくいと感じたのだろうか。足跡がしっかり残っちゃってるから無駄だけど。
みーつけた。と言ったら信長様より怖くなっちゃうね。とりあえず恰好からしてそれなりに偉そうな御坊様…いや和尚様だね。和尚様に声をかけてみよう。
「和尚様でしょうか。私は前田孫四郎と申します。横にいるのは木下藤吉郎殿です。」
「…その様子からして我らを殺すつもりではないのはわかりますな。我らをどうするおつもりでしょうか?」
何と。抵抗しようとしないのか。いや、まずしないよね。少人数の時は大人しく降参するのが正しい。
「信長様には内緒なのですが我らの隊に交じっていただいて逃げて頂こうかと。」
「藤吉郎様の軍でしたら多少の人数が増えてもばれにくいと思います。どうですか?恐らくこれを蹴ると信長様の軍はあと3日も残るそうですのでやがて見つかって殺されるかもしれませんが。」
僕初めて藤吉郎様って言ったね。長いけど意外にしっくりくる。当の秀吉様は…まったく気にしてない。
「そうは言われましてもな。」
「和尚様、ここはこの方々の仰る通りに動くべきです。」
そう言ったのはまだ7つぐらいに見える男の子だ。お弟子さんかな?
「慶松、急に話しては―」
「慶松?其方もしかして大谷の…。」
秀吉様知ってるの?豊臣秀吉と関係ある大谷と言えば…吉継?関ケ原で無念の死を飾るって聞いたことがある吉継かな。
「はい。大谷慶松です。母からは何度か秀吉様についてどのような御方かなどを聞いております。」
もしかして親戚ですか?
「やはりな。…和尚、この子と某は縁者。これならば何とでも言い訳が通りますぞ。」
どういう言い訳をしても無駄だと思うけどね。でも言い訳じゃない方法なら僕に任せてください。
「行くなら今です。絶対に全員の命を助けることをお約束します。どうか私たちを信じてください。」
僕が最後に和尚様にお願いをする。
「わかりました。皆、絶対にはぐれないこと。何が何でもこの方たちの言うことを聞くこと。いいですね。」
「「「はい。」」」
この後は木下隊の人数が多かったのもあって無事にこの和尚様と大谷吉継?含む12人の子供たちを部隊に混ぜながら京方面に逃がすことに成功した。戻りながら慶松から聞いたのだがあの小屋より上には誰も逃げなかったそうだ。つまりそれ以外の人は皆焼かれ死んでいったということだ。出来れば皆逃げてほしかったな…。
数日後
今日は秀吉様から話がしたいと言われていたので木下家に向かっている。…何か岐阜に住んでいた頃の前田家より外観が汚い気がする。
「よく来たね孫四郎。暑いでしょ?中にお入り。」
「ありがとうございます。ねね様。」
中は意外に綺麗なんだよね。座布団に座ると同時ぐらいで秀吉様もやってきた。あれ?慶松もいる。
「よ、孫四郎。元気そうだな。…すまんな。忙しい中来てもらっちゃって。」
「気にしないでください。たまには外出しないと体に悪いですし。」
「そうか?…今日はな、孫四郎にお願いしたいことがあって来てもらったんだ。」
「ここに慶松がいるということは慶松関連のお願いですよね。」
「流石だな。じゃあ依頼内容を言うぞ。」
何だろう。全くわからないけど。
「慶松をお前の家臣にしてやってくれないか?この子は俺の手には余る才能を持っているんだ。」
え、いいの?うんって言っちゃうよ?流石にメリットの方がでかい時は遠慮しないからね。あ、でも慶松がどうしたいか聞かないとね。
「私はいいですけど慶松はそれでいいの?」
「はい。孫四郎様の躍進は山でもよく聞いていました。聞くところによると私と3つしか年が変わらないそうですし。」
そうなんだ。大谷吉継は1565年に生まれたんだ。じゃあ後輩ってことだよね。
「いいんだな?孫四郎。」
「はい!逆に秀吉様こそいいのですか?」
「おいらよりは絶対にお前の方が相性が合うと思うぞ。」
決まりだね。
「わかりました。とは言っても頼りない主君になっちゃうかもしれないけどよろしくね、慶松。」
「いえ、私こそ雇ってもらっただけですごく嬉しいです。一生、孫四郎様のことをお支え致します。」
「雇うわけじゃないよ。召し抱えるというか家族のような感じに扱うかもしれないけどそれでいい?」
「…!ありがとうございます!」
雇うよりも召し抱えるの方が皆喜ぶって信長様から聞いていた。これ、本当だったんだね。絶対に僕はこの子を大事に扱います。せっかくだし半兵衛先生の下で勉強もさせるか。ん?そういえば僕、家を建てていないや。どうやって慶松と生活しよう…。
大谷吉継、ここで登場です。
本作では六角家臣の子→延暦寺に預けられる→秀吉に拾われるという説を採用しました。
秀吉に拾われた後孫四郎の家臣にしたのはオリジナルですけど。
吉継は1559年生誕説と1565年生誕説がありますが私は主人公の後輩(というか年下の家臣)が欲しかったので1565年説を採用しました。
キーワードに入れているということは重要中の重要な人物となることです。一体どんな活躍をするのか、ご期待ください。
これで出てきていないキーワードの人物は藤堂高虎のみになりましたね。高虎は一体いつ出てくるのか。流石にすぐには出しませんが結構近めでまずは軽く出そうかなって思ってます。
次回が1571年最後の話になる予定です。




