36 話が通じない坊主たち
日々PVを更新していて本当にやりがいを感じています。
1571年に入ります。この年は若干少なめにやってありますのでご安心ください。
元亀2年2月、浅井家臣で佐和山城主の磯野員昌が降伏した。去年、横山城を落としたことによる南北の両断が決断の理由の一つだろう。これにより近江に関しては東側のみに集中すればいい状況になった。とすると次は長島に行くのかな?
当たりました。4月25日に信長様に長島を攻めるから準備をしろと言われた。何度も戦に行くうちに何を持って行けばいいかがわかってきたので準備は早く終わった。さらに腕を上げるためにいつもの練習場へ向かうことにした。
今日は回転する的を1つだけつけて的にしっかり当てる練習を行う。もちろん連射式では意味がないので単発銃でやる。…20秒。遅い、遅すぎる。
「やはり上手いですなあ。今の様子を見る限り孫四郎様に敵う者がいるとは思えませぬ。」
松右衛門さん、僕は今逆のことを考えていましたよ。
「まだまだですよ。僕よりうまい人がいるのを知っていますから。この間共闘した重秀殿とかは全然相手になりませんでしたし。」
「…そういえば次の戦では我らも―」
「行きません。私のみが行くようにと言われていますので。」
相手が何を言うかがわかるようになってしまった。信長様の影響だろうか。
「なぜです?」
「長島ではおそらく狭い土地で一揆勢と戦うと思われます。具体的に言えば桶狭間ぐらい狭い場所です。そんな場所で連射式を使ったとしてもせいぜい10人ぐらいしか戦うことができないからです。」
「ですが孫四郎様のみでは人数が少ないのでは?」
「大丈夫ですよ。柴田様や氏家様が今回は信長様と共に行きますから。」
「柴田様がいるということは佐々様も行くということでしょうか?」
「ええ。だからほぼ問題はないはずです。」
「俺を忘れていないか?」
そう言って現れたのは蒲生賦秀さんだ。…ちょっといじってあげようかな。
「暇なんですか?賦秀さん。」
「そんな言い方はないんじゃないか?まあそうなんだけど。」
…まさかの当たりだったのか。何か申し訳ない。こういう時だったら「な、違う、違う!俺も特訓しに来たんだ!」とか言えばよかったのに。流石にこのままじゃかわいそうだから話題を変えるか。
「次の戦も賦秀さんがいれば負ける気はしませんよ。確か今回も柴田様の与力として参加するんですよね?」
「ああ。と言う訳で孫四郎は俺が絶対守るので皆様方は心配しなくても大丈夫です。」
「頼もしいお方だ。我らの隊長をよろしくお願いします。」
勝手なこと言ってくれるなあ。…大丈夫だと信じようか。この人本当に強いから。
5月12日 津島
何が守るだ。全然違う部隊じゃないか。柴田隊と織田本隊の動きは違うということに先に気づけなかった僕も悪いけど。そんなことを気にしていてもしょうがない。今回もまた人を殺していかないと駄目なのかな…。なんて思いながら銃の手入れをしていたら信長様が歩き回りながらブツブツ何かを言いながら近づいてきた。
「焼き討ち、焼き討ち…。って何でここにいるんだ?」
こ、怖っ。この人やっぱり火のことを考えていると人柄が変わるよ。まあそんな人は前世でもいたから慣れているけど。
「あ、信長様。人目のつかないところで出陣まで銃の手入れをしていたのですが…。それよりまた焼き討ちですか?」
「仕方あるまい。長島の連中は男女親子関係なく俺らを憎んでいるからな。大名とは違って宗教勢力は話が通じないし、その―」
「坊主は何を言っても聞きませんからね。現に加賀ではもう83年間、仏教勢力がずっと治めていますし。」
「珍しく反対しないんだな。」
「何をやっても言うことを聞かない人に対して優しくしても意味ないことぐらい知ってますよ。でも焼いた後にどうするのです?」
「まあその時々によって作戦を変える。落とせそうなら落とすし無理そうなら帰るし。」
「こういうところはよく決めていないんですね。」
「まあな。俺のやり方はそんな感じだ。甲斐の信玄とか相模の氏康だったらもっといい方法が浮かぶかもしれないが。」
武田信玄や北条氏康は日本史の教科書でも優秀な殿さまだったとか書いてあったから知っている。信長様も彼らのことを先輩のように慕っている。でも今年中に氏康は死んで2年後には信玄も病死するはずだ。そこからはもう信長様に敵う勢力がぐんと減って天下に大きく近づく…おっと、これは今考えなくていいね。
「…そういえば、お前ももう10か。」
「はい。それがどうかしましたか?」
「…そろそろ縁談の年頃だよな。」
急に心臓がドキドキし始めた。10歳で結婚?この時代では確かにあっているのかもしれないけど…。
「又左からも話があるかもしれないがどこの家から貰いたい?」
珍しくないですか?自分で決めていいなんて。
「私が決めていいんですか?」
「ああ。お前だから聞けるのだ。」
どうしよう。うーん。
「今はまだ決められません。しばらくしてから考えさせてください。」
「…逃げたな。でも確かにそうだな。とりあえず燃やす準備を皆にするように言うか。」
本当のお嫁さんは誰だかは頭に入っていそうだけどまだ見ていない。いつものように勝手に入ってこないかな?
永姫
1574-1623
織田信長の娘。前田利長の正室。
生涯―
ストップ!ストップ!え?信長様の娘様?それも12歳年下の子?父上を超える年の離れ具合だぞ。父上と母上の10歳差もこの時代では意外だなって思ってたけど僕はそれ以上に差があるの?そして今見たの間違いじゃない?今から3年は多分生まれてこないしこの合戦中に見たら集中できないじゃないか。いや、集中できるけど。
数時間後
~賦秀視点~
孫四郎、ごめんな。俺は勘違いしていたようだ。まさか攻め口が違うなんて知らなかった。これからはあまり無駄なことは言わないようにしよう。
先程柴田様に呼ばれた。一体何を言われるのだろうか。
「お呼びですか?柴田様。」
「ああ。見ておけ賦秀。これはやってはいけない戦だ。こんなことをして得をする者など誰もおらぬ。」
そう言われて長島の様子を遠目で見てみた。
「こ、これは。村が燃えている…。」
「信盛殿がやったことよ。そ―」
「こんなことをしても民は復旧作業に時間を割くことしかできなくなり信長様が仮にこの土地を統一したとしてもこの地からは米が取れない。つまり年貢を取り立てることも出来ない。」
「流石だ。わしが言おうとしたことを全て言ってくれたな。いいか、賦秀。お前は焼き討ちという非人道的な戦をするな。焼き討ちは鉄砲よりも被害が大きい。というわしもこれより良い方法が浮かばないのだがな。」
柴田様は頭よりも腕を使う人ですからね。
「俺はどんなに言うことを聞かない勢力でも分かり合えるような解決策を導き出して見せます。」
「お前に出来るか?いや、出来るな。孫四郎とお前はわしらとは何か違うものが見えているからな。」
俺や孫四郎の世界と柴田様やお館様の世界が違う?なぜだ?俺は柴田様のような獅子奮迅をやりたいだけなんだが。
「何をぼそっとしている。話は終わったぞ。」
「あ、すみません。すぐに持ち場に戻ります。」
泣いてる?そんなように感じたのは俺だろうか。柴田様が泣くなんて滅多にないから驚いている。一体何があったんだろう。でも気にしてはいけないものの気がするからそーっとしておこう。
16日
信長様から撤退するように伝達が来た。民家を燃やしたけど全然一揆勢が立ち上がる様子がなかったからだ。何のために燃やしたんだよ。今そんなことを思っても仕方がないか。とりあえず撤退の準備をしますか。
しばらく進むとあまり見たことのない狭間に出た。ここはどこなんだろう。こんな細い道から撤退する必要なんてあるのかな?なんて思っていたその時だった。
「て、敵襲!」
そんな。嘘だろ?まさかここで襲ってくるなんて。
「ここはわしが殿軍となる。皆は急いで逃げよ!」
「氏家卜全も残りましょう。稲葉殿たちは早く逃げられよ。」
柴田隊と氏家隊がこの場に残ることになった。初めての殿軍だ。緊張する。
四半刻ほど戦っていたがこちらの被害は今のところ軽症者が10名ほどだ。皆、早く撤退してくれ。
「伝令!本隊は無事撤退できたそうです。我らも撤退しましょう。」
「逃がすな!柴田勝家!喰らえ!」
次の瞬間、柴田様の腕に矢が刺さった。
「柴田様!」
「これぐらい何ともない。さて、鬼柴田の戦を見せようか!」
「勝家殿、その傷で戦われても足手纏いになるだけですぞ。いくら鬼柴田といえどもこの数を前に前線で戦うのは無理です。」
氏家殿が止めにかかる。この人も数多の戦に参戦している。柴田様には劣るかもしれないけどそれでも氏家直元という男は南近江にいたころから有名な人だった。
「其方の言う通りじゃ。じゃがそれで撤退したら我らは後ろから相当な被害を―」
「この氏家めにお任せあれ。某も随分年を取りました。死ぬなら畳より戦場が良い。最期に花を咲かせてくだされ。」
「しかし。」
「貴方は生きなければなりません。さあ早く!」
氏家殿の覚悟が伝わった。親父様が困ったような悲しみのような表情をしている。
「親父様、帰りましょう。今後の織田のために。」
と佐久間盛政殿が言ったことでようやく柴田様も覚悟を決めたのか表情をいつもの鬼のような顔に戻り、
「…すまぬ。皆、退け!」
と皆に命じた。悔しい。一揆勢ごときに大切な御方を失うなんて。…もう一揆勢には容赦せぬぞ。
その後の話によると氏家殿は佐々木祐成に討たれたらしい。あの人は確か旧六角家臣だったはず。六角家臣も今はばらばらに散っているんだな。仮に旧主であろうとも信長様に逆らうのであればことごとく滅ぼしてやろう。…火攻め以外の手で。




