表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
174/198

170 犬千代誕生

タイトルでわかってしまいますが…待望の嫡男誕生です。

六月、なつによる定期健診の時期がやってきた。


「順調ですね。予定通り、八月に生まれるかと。」

「ちゃんと言いつけを守っていたもんね。偉いよ、永。」

「えへへ。…桜姉様も見てもらったらどうですか?」

「…?え?」

「…最近、来てないですよ。もしかしたら…。」

「わかりました。では、診察いたします。」


もしかして…?



数分後


「…おめでとうございます。2人目の子がお腹の中にいることが確認できました。」

「男の子?女の子?」

「それは、もう少し大きくならないとわからないですね。あるいは医療機器の発展が進めばわかりますが。」

「僕、医療機器に関しては全くわからないんだよね。…ありがとう、桜。」

「こちらこそ、ありがとうございます。…旦那様?」

「…なつ、梅も見てくれない?さっきからソワソワしているから怪しくて。」

「わ、私⁉そんな、まさか、同じ時期に―」

「畏まりました。すぐに、診察しますね。」



数分後


「その顔、やっぱり?」

「孫四郎様、敏感です。」

「…梅、しばらく金沢から動いちゃ駄目だよ。」

「え?」

「…本当はもっと君とお出かけしたいけど、お腹の中の子に悪影響を与えたら大変だからね。…でも、ありがとう。」

「それは…こちらこそです。」

「…お二人とも来年の一月頃に生まれると思います。」

「正月か。流石に、帰って来れないね。二人ともごめんね。」

「…むしろ立ち会えないことの方がこの乱世では多いのです。旦那様は気にせず、戦に集中してください。」

「そうですよ。…一緒に頑張りましょう。」

「…そう言えば、一年いないって言いましたよね?」

「うん。四国勢と一緒に九州に年内に攻めるって―」

「…!それ、辞退できませんか?」

「え、何で?多分無理だと思うけど。」

「…ちょっと、こちらに来てもらってもいいですか?」


そう言われて、一瞬部屋を出る。


「孫四郎様、戸次川の戦いって知ってます?」

「いや、流石に知らないよ。…どんな戦いなの?」

「仙石秀久率いる豊臣軍が島津の釣り野伏せ戦法に引っ掛かり、大敗する戦のことで、史実通りに行くと長宗我部信親や十河重存が討死する戦です。」

「…本当に知らないな。何で、わからないんだろう。」

「前田家には本来関係ない戦ですからね。…このままだと、多分、孫四郎様も死にますよ。」

「でも、引っ掛からなければいいんじゃ…仙石秀久は死んでないけどどうなるの?」

「いいところに気が付きましたね…。仙石秀久は、勝手に突撃して大敗したため、所領没収されています。」

「…!逃げるのも駄目だと。」

「はい…。」

「…だったら、その未来、僕が変えてみせるよ。」

「…!そんな無茶な…いや、史実を知った孫四郎様なら出来るかもしれません。」

「でしょ?…笑ってよ、なつ。久太郎さんが悲しむよ?」

「…信じていますから。孫四郎様(命の恩人)が帰ってくることを。」

「うん。…桜たちには絶対に言わないで。反対されるに決まっているから。」

「…状況によっては、伝えますよ?」

「わかった。…じゃあ、戻ろうか。」


死ぬかもしれない戦は過去に何度も経験しているから、身震いとかはしないけど…皆を生かす。それが、今回の戦の目標だ。



八月二十七日


その日もゆっくり、皆で過ごしていたら、永の陣痛が始まった。


「うっ…生まれそうです…。」

「大丈夫、永?まず―」

「孫四郎様は、下がりましょう。…大丈夫、永姫様なら絶対大丈夫ですから。」


蘭丸は僕の気持ちを瞬時に理解してくれたみたいだ。…待つ、か。



待っている間に、出立の準備も始める。流石に今日は出ないけど明日か明後日には出ないと…三人を待たせるわけにはいかないから。


「その服は緑の風呂敷に、こっちの巻物は赤い箱に入れて。」

「わかりました。…五六八姫様の時より、落ち着いているようで。」


前回の出産の時も一緒にいた新九郎がそう話す。


「…ま、まあ、流石に子供も出来たのに、オロオロしているわけにはいかないから。」

「…そうですね。」


ギャアァァァ!


この泣き声、間違いない。


「殿、生まれましたよ。」


梅が、呼んでくれた。


「…わかった。今から、行くね。」



「…永、大丈夫かい?」

「はい。…永は頑張りましたよ。ほら。」


そう、指差す方向には、小さな赤子が白い布に巻かれていた。


「…抱いてあげてください。」

「うん。」


…キャハキャハ!


え?


「…泣かれない?もしかして、笑っている?」

「…間違いなく、孫四郎の子、そして利家様の孫だね。」

「母上…。私も笑っていたのですか?」

「うん。利家様も、義父上に抱かれたとき、笑っていたって言ってたから。」

「…そして、男の子ですね。永、本当によく頑張ったね。偉いよ。」

「…名前は決まっていますか?」


「勿論。この子の名前は、犬千代だよ。」


「…代々の幼名を受け継いだのですね。」

「それに、嫡男だという印にもなるから…。」

「…ちゃんと考えているのですね。」

「当たり前でしょ。自分の…僕たちの子供だから。」

「…将来、孫四郎はこの子が受け継ぐ。」

「そうなったら、僕、どうなるのかな。人斬り内府とか言われたくないよ?」

「…自分で作りましたね?」

「あ…。」

「冗談ですよ。私たちは誰も孫四郎様に恥をかかせるようなことはしませんから。」

「本当かな?…これからも、よろしくね。永、犬千代。」

「はい!孫四郎様。」


この幸せを守りたい。だから、僕はまだまだ死ねないよ。永が頑張ったんだ。今度は僕の番だよね。

史実では一人も子供がいなかった前田利長と永姫夫妻。この世界では、中身が違うとはいえ、まず、一人目の子を授かりました。


次回、いよいよ、戸次川の戦いです。(もしかしたら長めになるかもしれません)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ