156 幸せに暮らせる世のために ①富国強兵
この『幸せに暮らせる世のために』は間々に戦・年末等の回が入るため、番号が飛び飛びになります。
例:①→②→九州征伐→③→④→年末→⑤…みたいな感じです。
勿論、例なので実際に九州征伐をこんなに早く入れる予定はないです。
今日もいい朝だ。夜空を見るのも好きだけど日の出を見るのも好きだ。…ん?あれは。
「おはようございます、徳姫様。…今日もいい朝ですね。」
「おはようございます。…私のことは様で呼ばなくてもいいのに。」
「癖なんですよね。どうしても年上の人は呼び捨て出来なくて…。」
「…殿も優しすぎる。」
も?…信康殿のことかな?
「…僕はそんな優しくないですよ。」
「…その顔で言うのは卑怯ですよ。」
「そうかな?…あっ。」
「ふふふ。少しは慣れました?」
「…そう言われると自然には言えないですよ。」
「…徳は特別な存在ではないですから、皆と同じように接してほしいです。」
「…わかったよ。これからは、こんな感じで話すけどそれでいい?」
「いいですけど…これが、本当の孫四郎様ですよね。」
「わからないよ?もしかしたら僕じゃなくて我が本性かもしれないよ?」
「それはないですね。…これからもよろしくお願いします、貴方様。」
「こちらこそ、よろしくね。…徳。」
…そろそろ、子作りも考えなくちゃいけないよね。
朝ご飯を食べたら、外へ出かける支度をする。今日は、新たな武器の開発会議を行うことになっている。
「今日の欠席連絡があるのは父上と盛政と与六郎ですね。それ以外の皆は揃っていますし…始めますか。」
父上は、摩阿姫を嫁がせる準備のため、盛政と与六郎は兵士の訓練の監督のため欠席と聞いている。あ、勿論、与力の久太郎さんたちや、敦賀を治めたての吉継もいないけど。
「…何か考えてきた人はいますか?」
蘭丸が手を上げる。…本当に大丈夫かな?
「蘭丸は何を考えてきたの?」
「殿が以前、作った連射式銃の大砲版はどうでしょう?銃身を回転させながら連射する大砲みたいな。」
それ、ガトリング砲だね。…これを作ると軍国主義になりかねないんだよな。
「うーん。案としてはいいんだけど、それを作っちゃうと、敵はさらに対策した武器を作る、で、また我らもそれに対抗できる武器を作る…というのが永遠に続く気がする。」
「でしたら、空気が弾となって出る大砲はどうでしょう?」
それは空気砲だね。確かに、人は死なないだろうけど…というか、それ、意味があるか?そういえば、蘭丸以外の皆は空気という言葉の意味を説明していない気がするけど…蘭丸には色々教えすぎたかもしれない。自分の正体以外ほとんど喋っちゃったからな。
「ん?空気って何?」
「…そういうことですか。何か、ごめんなさい。」
いや、これは100%僕が悪いです。
「…要は相手に絶対、作ることが出来ない武器を作ればいいと。」
「そういうことです。」
「例えばですが、水を大砲か何かに詰めて、線を引くと一気に全ての水が発射されるものはどうですか?」
長頼さんも僕と長い間一緒にいるから、考えがぶっ飛び始めている。…だけど、ありだね。
「敵を近づかせない、運が悪ければ、当たった途端、勢いが強すぎて圧死する可能性もある…ありですね。」
「でも、本当に出来ますか?殿のことを信じていないわけではないのですが…。」
「頑張れば出来ると思います。…ですが、出来たとして、問題が1つあります。水を汲み替える手間があるということ。これがその銃…水大砲とでも言いましょうか…の弱点になると思います。」
「でも、それは今までの鉄砲でも同じことでは―」
「大砲は大きいから、詰め替えが大変です。弾だったら穴から入れれば何とかなりますが水は、入れ物に入れたとしても…タンクを作ればいいか。」
「タンク?」
「葡萄牙の言葉で液体を溜める巨大な容器みたいな意味です。…でも、そのタンクを一々戦場で作るのも面倒くさいし…やっぱりなしですね。」
「…大砲の中に液体が入った弾が入っていて、見た感じは普通の弾と同じなのですが、何かしらにあたるとすぐに火が付くようには出来ませんか?」
「出来なくはないですよ。…ただ、すごく簡単なので他家に真似される可能性は非常に高いです。」
「それ対策の、強力な盾を作れば、もし、真似されても、こちらが被害を喰らうことはないですよね?」
「楯も真似されるかも…楯は真似されないように出来るか。…いけるかもしれません。」
「…では、試作品製作の段階に?」
「進めましょう。まずは、我が試作品を作ります。試作品が無事、完成次第、皆に作ってもらうのを手伝ってもらいます。」
「その間、私に最強の盾を作るのを任せてもらってもいいですか?」
「蘭丸が?出来るの?」
「私だけではできないですけど…皆で作れば出来るかと。」
「そうだね…。でも、毎日考えなくていいからね。月に4日ぐらいで、大丈夫です。」
「了解です!…一緒にやりましょう?青山殿。」
「…その目で言われるとやらざるを得ないんですよね。いいですけど。」
青山殿も気づいちゃったか。蘭丸、21歳なのに可愛すぎる。美少年はずるいよね。悪いことじゃなかったら何でも許されるもん。
早めに終わったし、訓練の様子の視察に行きますか。
「次!…まだまだいけるぞ!竹刀が折れるぐらいの気持ちで来い!」
「この打ち込み台が壊れるまで、休憩なしにしますよ?」
「そ、そんなの壊せない―嘘だろ?」
「はい、壊せました。…皆さんも壊せますよね?」
「…泣き虫が壊せるなら俺だって!」
「そこまではやらなくていいぞ。…与六郎、やりすぎ。」
「でも、竹刀も打ち込み台も同じぐらいの固さでは?」
「それは、俺たちが異常なだけだ。…竹刀ぐらいがちょうどいい。」
な、何だか、見ている感じ、盛政の方がマシのように見える。打ち込み台をあんな綺麗に…しかも木刀で壊すなんておかしすぎるでしょ。…盛政に任せて正解だったかな。
次回は年貢廃止のあれについてです。