15 上洛開始!
ここから数回は久太郎や利家、秀吉、信長視点がメインとなります。しょうがないですよね。孫四郎はまだ戦に出られる年頃じゃないですから。
7月、足利義昭が岐阜にやってきた。理由はわかっている。何度言っても上洛してくれない朝倉を見限ったためだ。ちなみに僕は義昭のことを内心では様とつけないようにしている。理由としてはこの人がいなかったら信長包囲網は起こらなかったかもしれないということを調べたことがあるからだ。でも流石に本人の目の前では呼び捨てにしないけどね。
8月には一旦上洛に向かう準備として信長様率いる兵が250人ぐらいで下見として南近江に行ってきた。しかし六角家が通さないと言ってきたのでやむを得ず六角家を滅ぼしてから上洛するしかなくなったらしい。六角は頭おかしいのか?信長様のことを疑っているかもしれないのはともかく今回の戦には以前野良田の戦いで負けた浅井勢も付いてくるんだぞ?
9月7日、いよいよ信長様が岐阜を出陣する。義昭を連れて京に上洛するらしい。途中で六角との戦は避けられないだろうな。
「留守中も任せたぞ。」
「はい。いつも通り、頑張ります。」
解答合ってる?いつも以上の方が良かったかな?
「久太郎は俺の戦をしっかり学べ。では行くぞ。」
お見送りの言葉をかけておこう。
「気を付けて行ってらっしゃいませ。」
「そこは『ご武運を』とかですよ。」
あ、そうか。ただのお出かけとは違うよね。久太郎さんの言うとおりだね。
「ではご武運を。」
「ああ。気を付けて行ってくる。」
ニヤニヤしながら言わないでくださいよ信長様。恥ずかしいよ。
~久太郎視点~
孫四郎さんあまりこの世界の風習をよくわかっていないな。まだまだ教えてあげないと。ん?あれは。
「信長様、徳川の旗が。」
「お、来たか。呼んでこい。」
多分援軍の大将を呼べってことだよね。
「はい。」
徳川の大将である松平信一殿を連れて再び信長様の下に連れてきた。僕が話そうと思ったら先に信長様が信一殿に話した。
「来たか信一。品野城の時はやってくれたな?」
品野城の戦い。聞いたところによると桶狭間の戦いの2年前に起こった織田家と今川家の戦いのようだ。尾張国や三河国に当時いた方々の間では有名な話でこの時に織田方は信一殿に50人ぐらい討ち取られたとのこと。恐ろしいお方だ。
「あ、あの時は敵だったのでやってしまったこと。今は家康様と同様、信長様にも忠誠を誓います。」
「ハハハ。そこまでしなくてもよい。お前は家康についていけばいい。それで何人連れてきた?」
「微力ながら千ほど連れて参りました。」
「千か。織田が四万四千、徳川が千。…果たして浅井はどれだけ出してくれるだろうか。これで五百とか言ったら…。」
流石に婚姻同盟相手の浅井家が数百で来るわけないと思いますよ。
「数だけで勝負は決まりませんよ。つい最近でも木下という方が50名で墨俣を落としたではありませんか。」
信一殿の言うとおりだ。それで言ったら孫四郎さんの師匠で秀吉様の与力になっている竹中半兵衛殿も21名で城を落とした話もあるしね。
「まあな。さてそろそろ出陣か。久太郎、皆を集めてこい!」
またお仕事が来た。
「お任せください。」
最初は秀吉様の所に行こうかな。
~利家視点~
いつものように藤吉と話をしながら呼び出しを待っていた時だった。
「失礼します。利家様、秀吉様。そろそろ集合とのことです。」
誰だ、お前。知らねえ奴だ。
「おっ、菊。元気にしていたか。」
「はい。今小姓になったのも秀吉様のおかげ。誠に感謝しております。」
「藤吉、知っているのか?」
「知ってるも何も利家殿が謹慎していた時に一時的においらの家臣になっていたからな。」
「堀久太郎秀政と申します。ちなみに孫四郎殿は本日はおりません。」
「何で知っているんだ?あ、そうか。同じ小姓仲間として知っているのか。」
いや、それだけじゃないな。孫四郎はまだ7つだ。戦に出すわけにはいかないだろうからな。
「はい。しかも私の隣の部屋が孫四郎殿の部屋となっていまして。」
どうでもいいんじゃね。って藤吉?何を考えているんだ?
「何と。菊と孫四郎が隣同士か。美男子2人が隣同士なんて。」
あ、そういうことか。確かに孫四郎は美男子だ。きっと俺の血を継いだからだろう。
「うちの孫四郎が美男子なのは俺もそうだからだろ。」
「いや、あれはまつ殿に似ているぞ。」
「何だと?」
思わずじろっと睨んでしまった。こんなところで喧嘩するなんて俺ら子供みたいだ。
「あ、その—」
「早くお越しください。信長様に何を言われても知りませんよ。」
ほう。しっかりしているな。そしてすぐに恥ずかしくなった。こんな若者に早くしろって言われるなんて。
~信長視点~
全員集めきったな。それじゃあ気合い入れをするか。
「これより義昭様を京に無事にお届けする!その手前にいる六角・三好三人衆を倒し畿内を制圧しようぞ!」
「オオッ!」
これなら大丈夫だな。急いで近江に向かおう。
数日後 佐和山城
ようやく待ち合わせ場所に着いた。久太郎はへとへとになっているな。お前、戦向いてないな。
「ええと、本当にここにいるんですか?浅井長政様は。」
「ここで会うと約束したからな。それに、ほらあの旗印。」
「あっ。」
久太郎もまだ甘いな。周りの様子ぐらいしっかり見てくれないと。でも本物の浅井の旗を見るのは初めてだから仕方ないか。
義弟殿との会談が始まった。
「初めまして、義兄上。某は浅井新九郎長政にございます。」
「織田上総介信長だ。此度の援軍、感謝する。」
「いえ。義兄上の天下布武のためならばこれぐらいたやすいことです。」
「市は元気にしているか?」
「はい。あのような可愛らしい姫君を頂けてこの長政感服しております。」
ここらで大事な質問をするか。
「時に長政よ。もしも俺と義景が戦になったらどうする?」
これは試しだ。ここで義景の味方になるって言っても俺はこの場では殺さないし俺の味方になると言っても家中の厄介者がいるからきっとその通りにはならないだろう。
「仮にですよね。」
「ああ。」
さあどう返す?少し期待しているぞ。
「そうなる前に義兄上と義景様が協力関係になるように尽力します。」
「そうか…。」
残念だ。これではな。
「義兄上?」
「いや、何でもない。では今日は佐和山に泊まらせてもらうぞ。義弟殿。」
「どうぞごゆっくりお過ごしください。」
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織田軍は11日に愛知川北岸まで来た。対する六角は当主義治と父の承禎、弟の義定を観音寺城に、田中治部大輔を和田山城に、吉田助左衛門重政を箕作城に入れた。さて織田軍はどう出るのか?次回に続く。
信長上洛戦が始まりました。次回が観音寺城の戦いになります。
孫四郎視点はしばらく来ないと思います。予めご了承ください。