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155 五か年計画

ソ連のあの計画ではないです。

引継ぎは順調に進んでいる。そして、最後に、


「この本に土地の治め方が全て書いてある。今日からはお前が新たな前田を作るのだ。前田利長。」

「はい。家臣も、民も、皆が幸せに暮らせる世を作れるように頑張ります。」


父上が利久伯父上から貰った本を今度は僕が受け継ぎ、正式に前田家の当主となった。


「お前はまだ、若い。吉継や久太郎だけじゃなく、功績のある、他の皆にも頼ることを忘れるな。」

「はい。」


まずは、皆に信用されるように頑張ります。



翌日


今日は、今後の方針について発表する。


「皆、集まったね。では、今後の方針について発表するよ。」


僕がそう言うと、蘭丸が、事前に用意しておいたくす玉を3つ持ってきた。


「我が一番、叶えたいことは皆が幸せに暮らせる世を作ること。だけど、それを叶えるためには具体的に何をすればいいかをこの2年間、ずっと考えてきた。色々な立場の人と話したり、考えるうちに、その答えは3つに纏まった。1つ目は。」


蘭丸に合図して、くす玉を割ってもらう。


「与六郎、読んでもらってもいい?」

「ええと、富国強兵(ふこくきょうへい)ですか?」


僕が頷く。


「今後、天下は羽柴が取ると思う。九州、関東、奥州。どこも、徳川殿や毛利殿に比べたらそれほど強いとは言い切れない。だけど、天下統一して戦がなくなるかと言われたらそうではないと我は思うんだ。」

「かつて、信長様も天下を統一したら世界を見てみたいと言っていましたからね。」


長頼さんが付け足してくれた。ありがとうの気持ちを込めてちょこんと首を縦に振る。


「関白殿下は明に興味があると言っていた。だけど、仮に今、日ノ本の武士が全員集まって戦っても、明には絶対勝てない。地球儀を見てもらえればわかるけど、明はこの国の何倍も…いや、何十倍も領土がでかいし、人口も多い。そんな国に、挑んでも今の状態では絶対勝てない。そう我は思っている。」

「しかし、そのような状況で体ばかり鍛えても意味がないと思うのですが。」


武闘派だと思っていた与六郎が話す。


「与六郎の言う通りだよ。じゃあ、逆に何を鍛えればいいと思う?」

「…それは、その。」

「わかる人、いる?」


吉継がすっと手を上げる。…ほかの皆がわからない時は吉継や久太郎さんに頼ってもいいよね。


「吉継。」

「例えば鉄砲の狙撃技術とか、新たな武器の開発などを行えばよろしいかと。」


流石は僕の右腕だ。僕は頷く。


「人っていうのはどんなに努力しても変われないこともある。だけど、狙撃に関しては練習を積めば、確実にうまくなるし、その鉄砲よりも強い武器を作って、相手を圧倒する、なんてことも努力すれば可能だよね。」

「実際に努力を積んできた孫四郎様はまさにその通りですな。」

「我も最初から刀が得意というわけではなかった。だけど、信長様の小姓として使える前に、父上や長頼さんに鍛えてもらったおかげで今の自分がいる。きっと皆の得意なことも、出来るまでたくさん努力して今の自分が出来ていると思う。」


皆が頷く。


「今後、日ノ本一の軍を作るために佐久間盛政と富田重政を中心として兵士の育成を、そして、皆で新種の武器の製造を考えていきたいと思う。それでよろしいか?」

「「「はっ。」」」


これで1つ目の発表は終わった。


「2つ目。」


蘭丸が、2つ目のくす玉を割る。


「孫十郎殿、読んでもらってもいいですか?」

「ほっほっほ。これは、殖産興業(しょくさんこうぎょう)ですかな?」


頷いてから話始める。…ここは重い話じゃないから少し肩の力を抜いて話しますか。


「既に敦賀や北ノ庄改め、福井では始めているけど、全体で話すのはこれが初めてだね。前田家は現在、石鹸を銘柄品として全国に展開しようとしています。皆が普段、この城で使っている石鹸なんだけど、これがいい匂いがして、使いやすいと評判がよく、先日、敦賀で石鹸を生産することに専念した工場を始動させ始めました。吉継、労働条件は―」

「休みを7日に2日とり、1日四刻労働、残業は禁止で、その代わりに衣食住はこちらで保証し、賃金もそれなりの金額で雇っています。」

「この条件でも1日3000個、1ヶ月で72000個生産出来ていて、しかも即完売しちゃうぐらいの人気があるんだ。今度、京に行くときに帝にも官位のお礼として献上する予定だよ。」

「帝にも⁉」

「自慢じゃないけど、一応正三位だから帝に会うことも可能なんだよね。父上はまだ官位を貰っていないので無理ですけど。」

「でも、俺も来年貰えるって藤吉が言ってたぞ。」

「どうでしょうか。頑張るだけだから忘れてしまうかもしれませんよ?」

「…あいつならあり得る。」


皆が少し笑っている。…ちょっとずつ、雰囲気が良くなっている気がする。


「福井では湿布というのを生産開始したそうです。詳細は後日、久太郎さんに聞いてください。」

「…全部丸投げ?」

「時間の都合上ね。…他に、通貨の統一も考えています。」

「これに関しては前に俺が伝えといたから話さなくてもいいぞ。」


そうなんですか?通貨の統一は確かに、父上からの提案でもあったけど。国ごとに仕える通貨が異なるのが面倒だから加賀・能登・越中・越前だけでも統一しようと言ったのがきっかけで、若狭の五郎左もこれに賛成し、現在統一した通貨を作っている最中だ。将来的には丹後の与一郎君までは最低でも広げたい。欲を言えば全国でこの通貨を使えるようにしたい。という話をしようと思ったんだけど…大丈夫かな?


「あとは、電気というものを作ります。」

「その、電気というものは何ですか?」


あれ?与六郎って、そういうのに興味あるの?


「電気そのものを説明するのは難しいんだけど、それが出来ると、例えばここから遠く離れた人に連絡を取りたいときにすぐ、伝言を伝えられたり、石鹸とかも、人が特に手を入れずに作ることができるようになるんだ。…一番身近で言うと静電気かな。冬に、何かしらの金属に触ったときにバチっとした衝撃を感じたことない?」

「ああ、ありますね。つまり、そのばちっとしたもので何でもできるってことですか?」

「流石に静電気ぐらいの力じゃ何もできないけど、電気があればこれまでの生活が大きく変わると思います。」

「じゃ、じゃあ、襖を私たちが来ただけで開け閉めすることも―」

「出来ます。」

「馬の代わりに移動する乗るものも―」

「出来ます。」

「ご飯を勝手に炊いてくれるものも―」

「出来ると思いますよ。電気の力は偉大ですから。」


前世でいう自動ドア、電車、炊飯器か。頑張れば出来るかな。


「何で、そんなすごいものを殿は知っているのですか?」

「葡萄牙では既に、我らの想像を超える者が出来ていると堺の商人の人に聞いたので。」

「葡萄牙ですか。鉄砲といい、電気といい、やはり南蛮の国は私たちと住んでいる世界が違うように感じますね。」


そんな目をキラキラさせちゃったら嘘とは言えないよね。


「…3つ目は何ですか?」


3つ目はそんな軽い話じゃないよ。蘭丸に合図を送りくす玉を割ってもらう。


「一孝殿、読んでもらってもいいですか?」

「農業改革、ですか。」


少し目を変えて頷く。


「この改革には2つの意味がある。1つは天候関係なく米を安定して生産させる方法。これは、主に、()()()()()()()()()()()()にお願いするから今日は発表しない。…もう1つの意味は民の在り方を変えるということ。今まで、我らは年貢を取って、民の生活を苦しめてきた。だけどね、よく考えてほしいのは、皆は誰のおかげでご飯を食べられているかという話なんだ。民がいなかったら米を食べることは出来ない。凶作の年なんか、年貢を取ったら、食べる物もなくなって、餓死しちゃうかもしれない。そうなったら、我らも食べる物がなくなって、死んでしまうかもしれない。…そうなるぐらいなら、年貢制をやめて、民が不必要な分だけ、役所みたいなところでお金と取引できるようにすればいいかなと思ったんだけど…どうかな?」

「勿論、ただでとは言わないよな。」


父上がわざとらしく聞く。


「刀、槍などを回収させてもらわないと年貢は廃止しないという風にしようかなと。」

「いわゆる刀狩りだな。…異議がある奴はいるか?」

「…我々の食べる米はどうなるので?」

「その買い取った米を皆に俸禄という形で渡そうと考えています。」

「俸禄?」

「これまでは土地だけを与えていたと思うのですが、これからは土地ではなく、生活に必要な米と金で皆に払う方式に変えようと思っています。」

「勿論、金額は働いた分、稼げるようにする。米は家族の人数分の量を渡すから食には困るまい。」

「これからの世は金が重要になります。…皆からも、民からも信用を得たいのです。…駄目ですか?」

「働けば衣食住が保証される。そういうことで間違いないので?」

「そうです。」

「だったら、この奥村永福、殿のこのお考えに一切反対しません。」

「村井長頼も賛成です。」

「俺は、今生きているだけでも感謝しかないので、特にこれといって反対はありません。」


永福さん、長頼さん、盛政がすぐに賛成してくれた。


「勿論、蘭丸も賛成ですよ!」

「冨田重政も賛成します。」

「ほっほっほ。わしも賛成します。」

「篠原一孝もその案を受け入れます。」

「青山吉次、受け入れました。」


あと、1人のみ。


「大谷吉継、勿論、賛成です。」

「…ありがとうございます。俸禄は毎月、月末にお支払いいたします。…絶対にやってほしくないことが1つあります。」

「検地だな。検地は民の信用を得てから行う。やるべき時期が来たら孫四郎が順次、皆に知らせるから、それまでは絶対やるなよ。」

「「「ははっ。」」」


これぐらいかな?…1つ忘れてた。


「これらのことを5年後には全て、目標達成できるように皆で頑張りましょう。名付けて、『五か年計画』です!」

「そのまんまじゃないか…。でも、わかりやすいな。」

「…では、今日はこれで解散とする。」


そう言って、皆で頭を下げる。…疲れた。今日は早めに寝よう。大名はブラックだから早めには寝れないだろうけど…。

次回から本格的に内政回が始まります。

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