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137 春が来れば

十一月


~利家視点~


「…藤吉、本当に親父様と戦をするんだな?」

「ああ。…ここまで来ちまったんだ。ここで引いたらダサいだろ。」

「…皆わかってるよ。藤吉が勝つって。だけどどうしても親父様に死んでほしくない―」

「利家殿、いい加減覚悟を決めたらどうだ?どちらかは滅びる。いや、柴田様は死ぬ―」

「…もういい。俺は親父様の味方をする。」

「ま、待ってくれ!利家殿!利家殿!」


すまないな、藤吉。俺も段々理解できるようになってきた。これぐらいの演技をしないと家を残すことは出来ない。



十二月二十一日 佐和山城


~孫四郎視点~


…始まっちゃったよ。秀吉様と柴田様・信孝様の戦が。


二日、秀吉様は長浜城の柴田勝豊を攻撃した。勝豊は柴田様の甥だけどこの時、越前は雪深く、柴田様は援軍を出すことが出来なかった。結果、長浜城はわずか数日で落ちてしまった。


そして、二十日には信孝様が守っている岐阜城を攻撃した。信孝様は犠牲者を出さないようにするため、一旦秀吉様に降伏した。


この程度で戦は終わらない。長島の一益様も怪しい動きを始めているし信孝様はまた挙兵しようとしている。そしてつい先日には信澄様も突然、伊賀から逃亡した。おそらく向かった先は越前。…何で止められなかったんだろう。無理だということは分かっている。だけど、せめて止められていれば…。


「孫四郎さん、信澄様がどうしても会いたいって。」


…え?逃亡したんじゃなかったの?


「すぐに会うと伝えてください。」


…いや、会っていいのかな?いいよね?今、会わないと次いつ会えるかわからないし。



「…北陸に行くつもりですか、信澄様?」

「流石にわかるか。…雰囲気が変わったな。」

「そうでしょうか?自分ではよくわからないですが…。」

「…別れの挨拶をしたくてな。」

「…そんな気がしてました。次の戦で柴田様と一緒に死ぬつもりなんじゃないかなって。」

「…止めないのか?」

「止めても無駄だということはわかっていますから。」

「…すまぬな。其方を巻き込んでしまって。」

「気にしなくていいですよ。僕、何となくわかってたので。あの時、柴田様に付くと話された時から。」

「…今だけでも昔の其方に戻ってくれぬか?」

「戻ると言いますと?」

「…演じているのだろう?無理に。」


…バレてたか。


「…そう言われると、止めたくなっちゃうじゃないですか。」

「やっぱりな。…横にいる久太郎の様子を見ていればすぐにわかる。無理をしているって。」


…それだけが理由じゃないっていうのはわかるのに何で濁すんだ?…それを言ったら僕もだけど。


…止めてほしいのか。僕に。意味ないとはわかっているよ。でも…。


「…信澄様がいなくなったら三法師様はどうなるのですか?きっと秀吉様の操り人形になりますよ?信雄も信孝様も秀吉様には敵わないですから。…信孝様は柴田様に付こうとしているので関係ないかもですけど。」


信澄様がキョトンとしている。


「信雄と呼び捨てにしたことが引っ掛かりますか?」

「い、いや。其方も呼び捨てにするのかと。」

「織田家で私が尊敬できるのは信長様、信忠様、三法師様、そして貴方様です。あの馬鹿は尊敬できるわけないです。」

「…これが孫四郎の真の姿か。」

「もう僕は決めたのです。これからは織田家のために動くのではなく自分が信用できる人のために動くって。」

「…その奥にはまた違う野望があるな。」

「どうでしょうね?…次会った時は敵ですからね。」

「わかってるよ。…天下はお前が取れ、孫四郎。」


…上様そっくり。


「…泣かないと決めてたのにそんなこと言われたら涙が止まらなくなっちゃうじゃないですか。」

「…たくさん世話になったな。改めて礼を言う。」

「…お礼を言わなくちゃいけないのは僕の方です。今までありがとうございました。」


ビックリするぐらい自然に言えた。さっきまでの僕は一体何だったんだ?


「達者でな。」


そう言って信澄様は北陸に向け、再び歩み始めた。



「…行っちゃった。」

「天下取り、か。…孫四郎さんにできるかな?」

「今の僕にはできないです。…でも、いつか、皆が幸せに暮らせる世のために腹を括らねばならない時が来る。」

「…?」

「いずれ久太郎さんにもわかる時が来ますよ。」


春が来れば、きっと忙しくなるだろう。…あの3人を助けないと。

20時にもう1話投稿します。

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