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133 運命の清州会議 ④三法師との出会い

年内最後の更新です。

今年もありがとうございました。来年もよろしくお願いします。

六月二十八日


今日から織田家は新体制となる。


「…いよいよだな、孫四郎。」

「そうですね。…三法師様はどこに?」

「あ、そうだった。すまないが孫四郎、迎えに行ってくれるか?」

「わかりました。」



ええと、確かこの部屋だったよね。


「失礼いたします。今日から三法師様の傅役となりました、前田利長と申します。」

「其方が孫四郎か。…我が三法師じゃ。よろしゅうな。」


…え、ええ⁉今、この子、そちって言ったよね?信長様や信忠様とは違う感じか。


「はい。…本日は、新当主お披露目ということで―」

「わかっておる。…我を抱け。」


抱く?…抱っこってこと?


「何をしておる?早くせねば、皆が飽きるぞ。」

「…申し訳ございません。では、失礼します。」


2歳の主君、か。…軽くてよかった。


「…其方、いい匂いがするの。」

「そうでしょうか?」

「お花の匂いがするが…。」

「ああ、石鹸が他の家で使われている物と違うからだと思いますよ。今度、三法師様にもいくつかお裾分けしましょうか?」

「良いのか?」

「前田家は金には困らないので。」

「聞いたことがあるな。又左と孫四郎は織田家で1,2を誇る金持ちだと。」

「お金はあるに越したことはありませんから。」

「気に入った。我の蔵入地を其方が治めよ。」

「私ですか?」

「其方が悪い人のようには思えぬ。任せても良いか?」


僕、土地を治めたこと、一度もないよ?…待てよ。確か三法師様の所領って坂田郡20万石じゃなかったっけ?久太郎さんは佐和山9万石…領地被ってるよね。だって、僕らだけで29万石なんて、河内国と変わらないよ?


でも、近江って明治時代の最終検地で85万石ぐらいあるって授業で行ってた気がするから…間違いではないかもしれない。


「こんな口約束でいいのでしたら…。」

「構わぬ。祖父や父が認めた其方を我は大切に扱う。それだけじゃ。」


そんなことを話している間に、大広間前まで到着した。



…いよいよだ。


「新当主がこれより入られます。」


横を見ると、秀吉様が俺に三法師様を渡せ、みたいな目で見てくる。でも、今日はそんなことさせないよ。貴方に抱えられたら柴田派の人からブーイングが来るから絶対渡すなって父上や久太郎さんに朝、厳命されたから。


「…行きましょう、三法師様。」

「うむ。」


入った途端、皆から大歓声を浴びた。…こんなこと、初めてだ。秀吉様は慣れているのか、ニコニコしながら上座に向かう。


…こんな横に座っていいのだろうか。いや、いいよね。万が一があったら困るし。


三法師様は全然緊張していなかった。だけど、いつ、自己紹介をしていいのか、タイミングを伺っているように見える。


「…もう話して大丈夫ですよ。」

「…そうか。」


そう、僕に告げた後、微笑んだ三法師様。そして、


「我が、織田家新当主、織田三法師である。…よろしゅうな。」


と皆に話した。…数えで3歳。こんなに堂々としている2歳児、見たことがない。しかも、普通に話しているし。やっぱりこの方、只者ではないな。


「「「ははーっ。」」」


皆、三法師様に頭を下げる。


「顔をあげよ。」


そう話した三法師様は急に僕のことを見る。…もしかして話す内容、わからなくなっちゃった?


「…次は孫四郎の挨拶じゃないのか?」


あ、自分の挨拶は終わったってことね。


「…違いますよ。次は貴方の叔父の信孝様とお父上様の友達の信澄様ですよ。」


そうこっそり告げたら後ろから信孝様と信澄様が登場した。


「…後見人となった、織田信孝である。」

「同じく、津田信澄でございます。」


信澄様、そろそろ織田って名乗っていいんじゃないですか?多分、誰も反対しないですよ。


「…そして宿老は柴田勝家、丹羽長秀、羽柴秀吉、滝川一益に加え、池田恒興を新たに加える。」


そういえば最後まで一益様来なかったね。…無事であることを祈ることしかできない。


「三法師様の傅役には前田利長を付ける。」


…久しぶりに利長って言われたよ。それだけ孫四郎という呼び方に慣れたのだろう。


「よろしくお願いします。」


そう言って頭を下げる。勿論、三法師様に向かってね。



その後、今後の所領配分に関する話などをした後、解散という流れになった。


「…私たちも部屋に戻りましょうか。」

「…帰りもお願いしていいか?」

「いいですよ。…あれ?柴田様、まだ戻らないのですか?」

「…秀吉がいない、今だから言える話だ。」


な、何だろう?まさか、本当に嫌いって言うのか?


「…お市様と結婚することになった。」


ああ、その話か。…ある意味、そうだね。


「めでたい話じゃないですか。…これからは、娘婿になるってことですね。」

「そうだな。…秀吉に付くのか。」

「そうですね。どうしても、僕は秀吉様を裏切れないみたいです。」


まあ、嘘だけどね。


「…孫四郎、帰りたい。」

「あ、そうでしたね。ごめんなさい、柴田様。」

「…いや、わしがこの場でぼうっとしてたのが悪い。…気にせずに行け。」

「は、はあ。」


…気まずい空気が流れちゃった。



「…ここでよろしいですか?」

「ああ。…ありがとな。」

「いえ。…三法師様は何か、夢はありますか?」

「我の夢?」

「はい。」

「…祖父も父も亡くしてしまった我に、夢なんてない。」


そ、そうだよね。…普通の子なら理解できない状況のはずなのだ。それを理解してしまったが故の悲しさがあることに何で気づけなかったのだろう。


「…孫四郎はどうなのだ?」

「私ですか?…私は皆が幸せに暮らせる世を作りたいと考えてますよ。」

「…幸せに暮らせる世か。だから、父上は我に其方の話をよくしてくれたのだな。」


…どういうこと?信忠様、一体何を三法師様に話したのですか?


「…我は天下を望まぬ。我が望んだところで、誰も言うことは聞かぬ。」

「そうでしょうか?私が見た感じ、三法師様はきっと―」

「秀吉や其方の方が人望がある。…我は陰ながら其方らを支えたい。」

「…!」


本当に2歳児ですか?信忠様の教育方法、良すぎでしょ。普通、この時代の大名の子として生まれてきたら天下を取りたい!とか民を守りたい!とか…そんなことを思っている子が多いと思ってた。


「どうかしたか?」

「いえ。…何だか信長様と信忠様を見ているような気がして。」

「…?」

「三法師様は信長様と信忠様の良いところを受け継いでいるってことですよ。」

「我が?」


きゅ、急に幼児みたいな反応来た…。


「そ、そうですよ。」

「…眠い。」


そうだよね。まだ2歳…数えでも3歳だもんね。


「…今日は色々、ありがとうございました。」

「…これからよろしゅうな。ふぁー。」


…今日はゆっくりお休みください。



…帰る前にお市様たちに会いに行くか。次、いつ会えるかわからないし。


「…これからよろしくお願いしますね、権六。」

「こちらこそ、お市様のことを必ずや幸せにして見せまする。」

「様はいりませんよ。」

「恐れ多いですが…お市。」


…やっぱり今日はやめておこう。

三法師は信長と信忠のいいところを足して2で割ったような性格です。

勿論彼も、重要人物の一人です。


勝家とお市、その幸せはいつまで続くでしょうか…。


本作での秀吉派と勝家派の確認です。


秀吉派   勝家派

羽柴秀吉  柴田勝家

堀秀政   佐々成政

前田利長  前田利家

丹羽長秀  佐久間盛政

池田恒興  津田信澄

蒲生賦秀  織田信孝

森長可   

中川清秀

長岡忠興


現状不明

滝川一益

織田信雄


史実とは多少の違い(孫四郎と信澄のみ)ですね。現状不明の2人も数話先で発表する予定です。


次回からは天正壬午の乱に入ります。孫四郎は出てきません。徳川・木曾・真田視点がメインとなる予定です。

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