100 信長に日ノ本を任せるか、皆で日ノ本を治めるか
タイトルがいつもとは違う感じですね。
「父上、一体これから何が行われるのですか?」
「…。」
何で無視するの?
「柴田様は何か知っているんですよね?」
「…。」
何かこの人たち怖いんですけど。いつも優しいはずなのに…。
大広間に着いた。
「失礼します…。あれ?賦秀さんや久太郎さんもいる。長可殿も?」
「久しぶりだな、孫四郎。俺たちの席は端っこだぞ。」
この時点で確定した。多分織田家の将来に関する大事な話し合いをするんだ。雑談だったら皆ごちゃ混ぜで座るはずだから。
「…さて、孫四郎。何でここに呼んだかわかるか?」
今日の司会は丹羽様か。
「…ここに揃っているのは少なくとも5年以上信長様に仕えている人たちばかり。つまり、今後の織田家の方向性について話し合うのかと―」
「具体的には?」
具体的か。…勘でいくか。
「上様を中心にして国を治めるか、信忠様を中心にして国を治めるか。とかですか?」
「…何で分かった?」
「勘です。…強いて言うなら信長様と信忠様の方向性の違いかな。」
「なるほどな。…らしいですよ、皆様。」
「まさか孫四郎にも感じられるとは思わなかったですね。おや?その顔を見る感じ柴田殿と秀吉殿はわかっていたような表情をしていますが。」
「光秀殿は孫四郎のことを舐めすぎ。こいつは久太郎よりも察する能力が高いんだから知っているに決まっているでしょ。」
「藤吉郎の言うとおりだ。まあ光秀はまだ新参者だししょうがないか。」
それは言わない方が良かった気が…でも確かにその通りなんだよな。
「…何も言い返せません。」
「ちょっと柴田様。流石に言いすぎですよ。」
「親父様、もうちょっと手加減を。」
「俺は別にいいと思いますけどね。」
柴田派の皆さんも意見が分かれてる。いや、これは成政様が特殊なだけか。
「…とりあえず話し合いましょうよ。信長様がいない間に話さないと。」
「孫四郎の言うとおりだ。…誰から話しますか?」
皆の視線が柴田様の方へ行く。
「わしか。」
「柴田様の意見は言わなくても皆、わかりますからね。」
「賦秀、それは一体…まあそうだな。わしはこれまで通り信長様に任せればいいと思う。信長様がいなかったら今のわしの立ち位置はないからな。」
特にこだわりはないけど柴田様の場合、一度信長様に命を助けてもらったからそういう選択をしたということか。
「賦秀さんも、ですよね?」
「まあ、そうですね。俺の場合、妻が信長様の娘様の冬ですから。」
「じゃあ孫四郎さんもじゃないの?」
久太郎さんに聞かれた。…そうでもないんだよな。
「ちょっと考えさせてください。…恒興殿も信長様のままでいいと考えてますよね?」
「まあな。そもそも俺はあまり信忠様たちと関わらないというのも理由の一つだが。」
「…逆に長可殿は信忠様を支持する感じですか?」
「いや、私も孫四郎殿と同じ感じだ。」
…森家が生き残っているのは信長様のおかげ。でも今は信忠様直属の家臣だから悩んでいるのかな。
「…多分、今、口を開かない皆さんは―」
「私は信忠様と今後の日ノ本を作ってみたい。」
おっと。十兵衛様がここで攻撃に出た。攻撃?それはちょっと違うか。
「…なぜ?」
「信長様は確かに強い。だがあの方は周りに厳しすぎる。だから謀反人が出てくる。では、どうすればよいか。信忠様と共に新たな国を作ればよいのではないか、と私は考える。」
「それはおかしいぞ、光秀殿。確かに信長様は厳しい。だが、我らにはある程度の勝手な振る舞いは許されている。それはなぜか。それは信長様だって好きで人を殺しているわけじゃないからだ。もし、俺が信長様の立場に立っていたら家臣に舐められたくないから敵には厳しく接しると思うが…。」
「私はそうは思えぬ。秀吉殿、だったら何故、上月城は見捨てられた。何故、鹿介は死ななくちゃいけなかった!」
「それは、それはおいらだって思っていたことだ。だから、俺は決断できていないんだ。…鹿介が今、織田家にいたらきっと毛利攻めが楽になっていただろうなって今でも思うけどな。」
十兵衛様と秀吉様の議論か。…すごい瞬間を目にしているな。
「だったら!」
「でも、柴田様も言っていたけど今の立ち位置にいるのは誰のおかげかを考えたらどうしてもあの方のおかげとなってしまうんだ。…光秀殿もそうだろ?」
「…そうは言っても―」
「俺は違う理由で悩んでいる。」
そう話すのは一益様だ。
「あの方は最近、皆で弄んでいる気がするのだ。」
「…一益様もですか。」
「五郎左もか。…家康殿や水野殿の件も上様は全て知っていた。これは調べていてわかったことだ。だが、何故かあの方は言わなかった。」
信長様は何で言わなかったんだ?いや、それがわからないから『気がするのだ』と言っているのか。
「だから俺はこのままでいいのか悩んでいる。」
丹羽様も頷いている。…段々意見がまとまってきた。
「…話していいですか?」
「久太郎か。いいぞ。」
「私は最近、秀吉様と共に三木城で戦っていたのですがその時に感じたのは、上様本隊より居心地が良いなと言うことです。これは手取川の時の柴田様の陣にいた時も言えるのですが2人の陣に共通しているのは皆様の対応が温かいと言うこと。そのおかげで、私も孫四郎さ…殿も戦を安心して戦うことができました。ですが、最近の上様の本陣は常に緊張感が張り詰めており、こんな状況では常に本領発揮して戦うことは中々難しいなと感じました。」
そう言えば、『さん』なんてこんな大事な会議で言ってはいけなかったね。反省します。
「つまり、今の信長様が戦を行い続けてもいつかは―」
「いつか、信長様の独断で戦を進める可能性がある、と。」
長可殿、ナイスです。確かに今の久太郎さんは詰まっていたよ。これも信忠様の教育方針によるものかな?
「…そうですね。だから私は今の信長様に国の政を任せようとはとても思えませぬ。」
「…悩んでいる皆の意見はどれも納得いくな。」
「丹羽様、俺も話していいでしょうか?」
「…又左。」
父上か。
「もしも6年前の信長様がここにいたら私は喜んで天下統一事業に協力していたでしょう。だってあの時の生活は楽しかったですから。皆が笑いながら生きていけていた。だが長島攻めが終わったあたりから信長様は方向性を間違えてしまった。」
「…あれは、私も悪い―」
「孫四郎は黙っていろ!」
…父上が怒っている。あまり茶々を入れるのはやめておこう。
「…俺は情けなかった。長年、仕えている主君が悩んでいるのに助けられなかった。助けられなかったが積み重なった結果が今の魔王になった信長様だ。…つまり何言いたいかは、孫四郎。わかったな。」
ようやく順番が回ってきた。
「…久太郎さ―殿が話し終わった時点で話そうと思っていたんですけどね。何故か、先に父上が話しちゃうから中々話せなかったんですよ。…結論を言う前に私の自論を話させてもらいますね。私も上様に仕え始めて12年になります。最初の方は信長様は常に先を見通している素晴らしいお方だと感じておりました。だけど最近の信長様は何かに怯えているような気がするのです。まるで誰も信用できないみたいな感じです。これは、恐らく信用していたはずの家臣の謀反が起こりすぎているからでしょう。別所長治殿や荒木村重殿のことを上様は信用していました。この2人なら裏切ることはないと。だけど裏切った。…このことを流石に佐久間の仕業だと思わなかった信長様は皆を信じられなくなった。だから上月城は見捨てられた。だから有岡城は根絶やしにしようとした。だから黒田官兵衛殿が裏切ったと勘違いし嫡男を殺すように命じた。全て繋がっているのですよ。…私たちも信用されていると思っているだけで実は敵視されているかもしれませんからね。…では、どうすればよいか。私の中では答えは1つです。それは、
信長様の足りない部分を補う。
これが我々にできる最低限にしてかつ、最も信長様に効く方法です。…十兵衛様が嫌いなのは今の信長様で、信長様の夢は嫌いじゃないですよね?」
「別に嫌いってわけでは…だがその通りだ。上様の志自体は私も共感できるからな。」
「皆様もそうですよね。天下布武。この信長様の夢は悪い志ですか?いいえ、違いますよね。今の信長様もこの志を忘れているわけではないと思います。だけど上様は色々なことが重なり、大事なことを忘れてしまっている。…だったらその足りない部分を補えばいいじゃないですか。だって、
家臣は主君の足りない部分を補うのが役目ですから。」
ちょっと生意気だったかな?
「…そうだよな。信長様が信忠様がという問題じゃない。…何のために家臣がいるのか、ウウッ。信長様。」
「藤吉郎、泣くのはよせ。よせったら…。」
「五郎左も泣いておるではないか…。」
な、何が起こっているんだ?こんな話で泣いている?…どうすればいいの?
「…よーし!これで決まったな。信長様を今後も我らがお支えする。良いな!皆の衆!」
柴田様が纏めてくれた。
「「「はい!」」」
~信忠視点~
「だそうだぞ、兄者。」
「信忠様も悪いですね。盗み聞きなんて。」
「まあいいじゃないか。…父上は羨ましいな。孫四郎のような忠臣がいて。」
「…そうですね。」
皆で父上の足りない部分を補う、か。…そうだな。皆が一体となって父上を支えたら織田家は本当に日ノ本を統一できるんだろうな…。
~光秀視点~
私は騙されないぞ、孫四郎。悪いが独自の行動を取らせてもらう。
先に言ってしまいますが光秀はここから思想が変わっていきます。…あのことも本当に起こってしまう。
分岐点。なぜ分岐点かわかりますか?
某朽木転生のような異伝を作る際の分岐点ならここしかないだろうなと思い、当初の構想からここで一旦織田家臣みんなが集まって話し合いをさせてそこから織田家の方針を決めさせようと決めていました。孫四郎だったらここで2パターンの答えを皆に伝えそうだなって思い、この話を分岐点とすることにしました。
つまり、後々ここから異伝が始まるということです。でも今から同時進行したら私が今どこの話を書いているかがわからなくなってしまうので少なくとも本能寺が終わるまで(遅い場合最終回後)までは書けません。しばらくは本編をお楽しみいただけると嬉しいです。
次回は加賀攻めです。久しぶりに孫四郎と勝家の2人がメインになります。
最後に:現在、第11回ネット小説大賞に応募しています。この作品を少しでも多くの人に知ってもらいたいので応募しましたがそもそも見てもらえるかさえわからない状態です。(書いている5/31現在8026作品が応募されています)
皆様にお願いしたいのは3つです。
1つ目は誤字報告です。最近、誤字脱字の修正をしているのですが、最初の方は誤字がかなり多くなっており、今でも修正が追い付いておりません。特に孫四郎の一人称なのですが最初は僕、真ん中が俺、そして現在がまた僕となっていますが、何故か最初の方に俺が出てきている場合があるので見つけ次第、報告して下さると嬉しいです。
2つ目はブックマーク登録です。最近は投稿した翌日には2000人以上の方に読んで頂いているのですがその中でブックマークしていただいている方は588名と1/4ほどの方にしか登録していただいておりません。登録していただければホームの左側に何時に更新されましたというのが一目でわかるので是非、登録の検討をよろしくお願いします。
3つ目はいいねです。いいねが1つつくだけで私のやる気はどんどん増していきます。今後の話を早く読みたい方はいいねを押していただけると嬉しいです。
以上3点をよろしくお願いします。