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【書籍化】七年間婚約していた旦那様に、結婚して七日で捨てられました。  作者: 酔夫人
第3章

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第5話 天秤を傾ける

「お忙しい中、迎えにまで来ていただいてありがとうございます」


 ヒューバートからの手紙の返事には二日後の夕方からなら時間が取れることと、その後にパーシヴァルも呼んで三人で食事をしたいと書いてあった。

 アリシアに断る理由はなかったし、パーシヴァルも喜んだので了承の旨を返すと、夕方アパルトマンまでヒューバートが迎えにくると返事が返ってきた。


「俺こそ、食事の誘いを受けてもらえて嬉しかった」


 ヒューバートが差し出したアイビーと白い花でまとめられた花束を受け取る。まるでデートのようだとアリシアは胸がくすぐったくなった。


「プリム、今日はありがとう。パーシヴァル、あとでミロ様が迎えにくるから準備をしてまっているのよ」


 時間までパーシヴァルといてくれるというプリムに花束を預けて、アリシアは見送ってくれる二人に手を振って部屋を出た。



「まずは店の場所を決めるべきだな、君が考える理想の立地と建物の広さは?」

「貴族の方も来られる場所で、以前の店くらいの広さの店舗スペースと、その倍くらいの広さの工房がほしいです」


 アリシアが答えにヒューバートは少し考えこんだあと、アパルトマンの外に停まっていた馬車の御者になにかを言った。頷いた御者は馬車をどこかに移動させてしまった。


「君の条件にあった建物がここから歩いて直ぐのところにある。馬車だとかえって時間がかかるから歩いていこう」

「まあ、最初からその場所で待ち合せればよかったですね」


「外での待ち合わせなんて、何かあったらどうするんだ。それが騎士団の詰め所の前でも外での待ち合わせなど論外だ」

「あ、ありがとうございます」


 過保護なほど大事にされることに慣れなくてアリシアは戸惑うが『嬉しい』とも感じる。


(この『嬉しい』はこの先もっと大きくなって、やがて……いいえ、いまはお店のことに集中するべきだわ)


「着いたぞ、ここだ」

「え?」


 まだ最初の角を曲がっただけなのに「着いた」と言われ、戸惑うアリシアにヒューバートが斜向かいの建物を指さす。

 大きな通りに面した角の建物、その一階がヒューバートのいうアリシアの条件にあった店舗らしい。


「二階から四階は全て事務所として色々なところに貸し出しているが、一階と二階以上は入口が違うから他と顔をあわせることはあまりないだろう。一階の入口は二つ、大通りに面した扉と路地のほうにある扉だ」

「あの建物は侯爵様のものなのですか?」


 アリシアの疑問にヒューバートは首を縦に振って応える。


「パーシヴァルが一人で出入りできるほど安全な建物だと紹介できる。二カ月前までコルボー家が事業に使っていたが、彼らは手狭が理由で移転した。不動産業者がここを知らないのはこの立地なら仲介は要らないからだ」


 借り手探しに苦労しなさそうな物件。ヒューバートが提示した家賃はアリシアの予算を少しだけオーバーしていた。


「家賃が問題か?」


 相場からしてヒューバートがアリシアに身内価格で提供してくれたのも分かっていたが、家と店の家賃を払うことになるため理想的な建物でも家賃を妥協することはできなかった。


「他との兼ね合いがあるから、申し訳ないがこれ以上は安くできない。騎士団の詰め所も近くて治安のいいここは人気なんだ。それで提案なのだが、あのアパルトマンにこのまま暮らすのはどうだろう。警備員も常駐しているし、家賃も父親が子どもの生活を支援しないほうが問題だと思う」


 ヒューバートに甘えてはいけないと頑なな心が反射的にその提案を断りかけたが、「現実を見なさい」と理性によって叱られる。ここはあの田舎の街と違う、アリシアだけでパーシヴァルを守ることはできない。


(新聞のことだって……)


 王都にきた翌日からしばらくはアパルトマンの周辺にアリシアの動向を探る者が集まっていたが、今では不自然なほど誰もいない。それが誰のおかげだと分からないアリシアではない。


(パーシヴァルの父親として差し出された援助を、私が利用してしまっていいのかしら)


「それに、この提案は俺の下心でもあるからな」

「したご……ええ!?」


 自分の考えに浸りきって何も考えずにヒューバートの言っていることを繰り返しかけ、『下心』などと言いかけた自分にアリシアは驚いた声がでる。


「好きな女性に良いところを見せたいというのは十分下心だろう? ついでに、君の店や家が俺のものだと思うと独占欲が満たされる。自分が抱え込んでいるような気がして満足するし、安心できる」


 本心を明け透けに語ったからか、照れ臭そうにするヒューバートにアリシアの心臓がキュッと握られた気がした。


「あと自覚がないようだから注意しておくぞ。君は目立つ。その色形も目立つけれど、姿勢を伸ばして立つ姿とか気品があって、いまこうして街中でも君はすごく目立っている」

「それは、侯爵様が一緒にいるから」

「君一人でも十分目立つ。そんな君が店をやるのだから安全第一、貴族向けの商品を扱う店は空き巣や強盗の被害に遭いやすい」


 子どもと暮らし、女性を雇う以上は安全は担保しなければいけない。


「それでは、アパルトマンをお借りします。あちらのお店の賃貸契約もお願いします」


 頭を下げながら、アリシアは自分の狡さを自覚する。

 ヒューバートの厚意に恐縮する気持ちは本当だが、ヒューバートならアパルトマンでこのまま暮らすことを提案してくれるかもしれないと思っていたのだ。


(甘えてしまっているわ)


「あのアパルトマンに部屋が買えるくらい稼いでみせます。中古物件でもお高いでしょうけれど、頑張りますわ」


 ***


 店舗の賃貸契約を締結するため、ヒューバートは馬車を呼んでアリシアと共にレイナード商会の建物に向かった。


「お帰りなさいませ」

「アランに俺の部屋に来るよう伝えてくれ」


 入口にいた女性商会員にアランを呼ぶよう指示したあと、アリシアをエレベータの乗り場までエスコートする。自分の背中に周りの商会員たちの驚きの視線、『あの会長が女性に愛想よくするなんて信じられない』という声がぶつかってきてヒューバートは苦笑する。


「秘書のアランがくるまで、従業員の話をしようか。確か、パタンナーとかいう職人だったな」

「はい。プリムとも話をしました。商業ギルドで募集をかけてもらおうと思ったのですが、それより侯爵様に相談したほうが安全に人を雇えると思いまして」


 プリムが何か言ってくれたようだとヒューバートは察し、彼女の隣人に甘味と酒を差し入れすることと心にメモをする。


「分かった。パタンナーについては俺のほうで探してみよう。一週間ほど待っていてくれるか?」

「はい、大丈夫です」


 自分でも探すが、ステファンとミシェルにも協力を仰ぐことにした。


「職人のことはこちらに任せてもらいたいが、王都で商売をやる場合は商業ギルドに加入しなければならない。俺からの推薦状は用意した。これがあると早く審査に通る」


 自分の推薦によって審査が早く通るのは本当だが、それよりもレイナード侯爵家の庇護があることを示すことで周囲からの余計な嫌がらせがなくなるとヒューバートは思っていた。


「プリム嬢はすでに君の従業員だからな。従業員を守る制度もあるギルドには早めに加入したほうがいい」

「お気遣いありがとうございます」

この世界は馬車が交通の中心の世界です。

「バス停」は「馬車の停車場」に修正しました、御指摘ありがとうございました。



読んでくださり、ありがとうございました。感想をお待ちしています。


ブログもやっています

https://tudurucoto.info/

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 馬車を使っているのに「バス停」という言葉に違和感を覚えました。そういう世界観と言われればそうなのかもしれませんが‥
[気になる点] タグにドアマットと入れたほうが良いと思います。 [一言] 妊娠するようなことしておいて、一週間で離縁するとは…。 モノ扱いが酷すぎて絶句します。
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