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いつかゲームになる日まで  作者: 白藤あさぎ
12/32

    -File 4-

   −File 4 1日目:探索−




???の手記 n番目 ・月・日


彼女が悪質なストーカー被害に遭っているらしい。何週間も前から、盗撮や手紙が毎日のように送られてきている。今日そのことを、涙ながらに打ち明けてきた。ずっと言えなかった。仕事で忙しくしているから心配かけたくなかった。そう言いながら、ずっと肩を震わせていた。


身につまされる思いだった。彼女を害する存在も、この幸せに侵食しようとしていたものに気づかなかった愚かな自分自身も、殺してやりたいほど憎らしい。


被害は警察に通報した。けれどどれだけ役に立つかは正直期待できない。

そして厄介なことも重なった。できればこのまま何事もなく過ぎればいいが…

___





「…俺たちが勝ち残るには謎を解くしかねぇって事だよな…」

「……」

「手がかりを隠す犯人もいないってことだ。まあ…脱落者を多く出すために時間切れを狙うやつはいるかもしれねーけど」


結局全員を信用できることはない。

最終的には自分たちだけで進んでいかなきゃいけない。


「…ここでじっとしていても仕方ないね。正直嫌だけど、もう一度あの部屋をちゃんと調べなくちゃ…」


Mouthが隠した情報があるかもしれないなら尚更、徹底的に。

タイムリミットは夜明けまで。どうせ今日は眠れない。瞼に焼きついたあの光景、閉じればきっとまた蘇る。


「けど、とりあえず二人が戻ってくるのを待って、彼らが得た情報を共有するのが先だね」


Mouthがいれば、もともとそういう話し合いになるはずだった。どれほど正確な情報が得られるかはわからないけど、一度全員から話を聞いた方がいいだろう。Mouthがどのタイミングで殺害されたのかも、おおよその検討がつけば執行人も絞り込める。


告発するほどの積極性は…というより気力は、自分にはなかった。

確かに存在していて、ついさっきまで生きていたはずの人のあんな変わり果てた姿は、受け入れることすら抵抗がある。けれど同時に強烈な現実を突きつけてくるのも事実だった。告発すれば負け。つまり死ぬということ。もうあんな光景はごめんだ。


「ゲーム開始時にすでにああなっていたってことは…あの人は一人きりになったタイミング…つまり部屋の探索の時に殺されたってことだよな。開始宣言はまだだったのに、ゲームマスターがそれを指摘していないってことは、ルール上問題なかったってことか」

「…だって、配られた時点で指示書は効力を持っていたんだ。多分、目眩しのつもりなんだよ。わざわざ開始の一時間前に配ったのは、執行人と犯人がそれぞれの目的のために行動を取りやすくさせるため。実際始まるまでは誰も警戒しなかったし」

「なら、今後それは適用しないな。少なくとも単独行動をさせることはなくなる」


…もしかすると、Mouthはわざと部屋探索の話を持ちかけたんじゃないだろうか。

一人ずつ順番に、終わったら次の人を呼ぶ約束だった。つまり…Mouthの前後にいたEarとNoseは絶好のチャンスだったということ。Earの反応からして彼女は考えにくい。だとすると…


チーン


エレベーターの到着音が鳴って、扉が開く。HandとNoseが暗い面持ちでそこにいた。


「一応脈を取ってみたぜ。きちんと死んでんな、ありゃ」

「とりあえずおろして、ベッドに寝かせて起きました…」


Handの手も服も血がついていた。そこから無意識に目を逸らす。


「俺、ちょっと服着替えて来ます。扉開けたままにしときますんで」


Handが自分の部屋に入るのを見やった後、僕はさっきの思考の続きでそっとNoseに視線をやった。早々に煙草に火をつけ、ふぅっと太く煙を吐く。

独特な匂いが廊下に充満して目を細めた。


煙たさに狭まって霞んだ視界。横を向いてる彼の耳元に、小さな引き攣れがあるのを見つけて僕は思わず凝視した。


記憶の奥に混ざった無数の顔の中に、重なる部分を必死に探す。この感じ…最初に彼を見た時にも感じた。


「あ…?」「っ」


ふいと顔が向けられ、肩が跳ねた。

見すぎた。そう思って視線を逸らす前に、口に煙草を噛んだままのNoseがぐっと顔を近づけてにやりと笑った。


「俺の顔になんかついってかァ?Brainくんよぉ」


煙が目前に迫って鼻腔を擽る。その強烈な刺激に頭がぐらりと歪んだ。


…なんだ、これ。


「っ、大丈夫か!?」


シュウが後ずさった僕の体を支える。その様子を見て、Noseがけたけたと笑った。


「あんまガン飛ばしてんじゃねぇぞ。言いてぇことがあんならはっきり言いな」

「あんたな、ちょっとは気ぃ使えよ!」


所構わず煙草を吸い始める彼にシュウは怒鳴った。


「だ、大丈夫だよ。すみません、ちょっと息苦しくなっちゃって」

「フン。確かにお子様にゃキツいかもなァ」


再び横を向いた彼の耳元を、今度は気づかれないように視界の端に写した。

そしてシュウを振り返る。シュウは僕の意図がいまいちわからなかったのか、怪訝そうな顔をしていた。


後で話す。目だけでそう伝えて、僕はもう一度機械に貼られた『謎かけ』を読んだ。


今のこの状況…人が、死んだこと。予想できなかったわけではない。執行人の『処刑』について、僕はちゃんとこの可能性を見出せていたはずだった。にもかかわらずそれを深く追求しなかった。


それは他でもない自分の甘さのせい。


思い出さなくては行けない。彼らは…真っ先に他人を蹴落とすことを考えられる人間であること。

ここにいる時点で殺人者であること。もちろんそれは自分も例外ではない。どう言い繕ったって、ゲームマスターの言葉はすべて真実だ。


謎かけが書かれたディスプレイにそっと手を置く。


あの澱んだ空気が今もまだ肺に燻っているような気がした。

それを馴染ませるように、目を閉じてゆっくりと息を吸い込む。


いつまでも逃避してはいられない。同じ盤の上に立つなら、思考を合わせる必要がある。ここでは殺しもゲームのうち。ルールが全て。


要するに、勝ちさえすればいい。



「あたしが見つけたのは、マルチで訴えられた会社のニュース記事。スクラップされてたファイルを読んでたら時間になって、Mouthが部屋に来たの。他の部屋は調べられてない。覗いた程度よ」

「俺は見つけたっつぅより気づいたことだが、あの部屋は家族住まいだったみてぇだな。子供用の絵本やおもちゃがあったし、食器類も多かった」

「あ…えっと、Eyeさんはマンションのリビングで日記みたいなものを見つけたみたいです。俺が探索した時、彼女のメモがそのそばにありました。俺は、名前リストみたいなのが気になりました。デスクの引き出しに入っていたんですけど、名前の横に数百万単位の金額が書いてあって…かなり高額のものを取り扱っている会社なんでしょうか…」


Handが個室から戻ってきて、エレベーター前にまた全員が揃った。

そこで共有した情報を僕は簡単にメモに記した。

時間が短かったから、一人一人から得られた情報はそれほど多くない。

注視したかったのは犯人であるMouthの前にいたEarの情報だった。彼女が調べた前後で何かなくなっていたならMouthが隠したと見てまず間違いないだろうから。けど、資料を読み耽っていたなら当てにはなりそうにない。

僕たちもろくに調べられていないし、推理するためこれからもう一度あの部屋にいくことになる。


得られたヒントをもう一度見直した。見開きに書かれた情報をまとめると、このゲームの鍵になる大きな点は把握できる。


まず会社。それとMouthの関係性を見つけなくては行けない。

それからあのマンションが、彼にとってなんなのか。


『犯人』が殺されたことで、表向き敵同士の関係を持った役はいないことになった。人狼ゲームでいうところの市民側しか残っていないことが確立された状況で、あとは探偵が勝ち残るために奔走するだけ。それが自分たちの間に妙な安心感を与えているのを嫌でも感じる。証拠を押さえて執行人を告発することはできるが、みんなあんな死体を目の当たりにしたショックでその気力はなさそうだ。


今のところは、というべきだろうけど。


「君たちはまた上のフロアに行くんですか?」

「そのつもりです」

「…そっか。だったら俺も行きます。何かしてないといけないみたいだし、協力します」

「いいんですか。あんたが執行人の素振りを見せたら、告発されるかもしれないですよ」

「構いません。その場合その人が脱落するだけですし。別々に動いたところで結局行けるところは限られてるので」


シュウとHandのやりとりに僕はそっと目を向けた。


「だったら、全員でいた方がいいんじゃないの…?目は多い方が執行人もこれ以上動きにくいだろうし…」


おずおずと、以前の為人がすっかり隠れたEarがつぶやいた。一人でいるのも怖いのだろう。かといって部屋にこもっていてはルール違反になる可能性もある。


「だろうな。どうせあとは探偵が謎かけを解くだけだろ?さっさと終わらせようぜ」


煙を纏ったままでNoseは意外にも協力体制を見せた。異論はもちろんなかったが、誰も彼もがらしくない行動を見せるせいで疑わしく見える。すでに誰のことも信用できなくなっている今、腹の中を探ろうとしている自分の意識をため息で吐き出した。


*マンション:寝室にて


結局全員で再び3階に向かった。

マンションの寝室を僕とシュウ、他の部屋をHandとEar、アイさんが手分けして、Noseはオフィスを調べることになった。


Mouthの遺体はベッドに寝かされ、顔の部分にはタオルがかけられていたおかげでなんとか目視はできた。千切れた舌があるはずの床にはいちごの形に赤く染まったハンカチが落ちていた。


「なあ…家族で住んでたってのはもしかしたら違うんじゃねーか?」


ベッド脇の引き出しを調べていたシュウがそう言った。向かいの本棚を調べていた手を止めて振り返る。


「どうして?」

「ここ、男物の服しかねーし。1LDKじゃ、家族にはちょっと狭いよな?」

「うーん。でもさっきリビングをざっと見た感じでは確かに食器は4人分はあったし、子供用のおもちゃとかもあったけど…家主は単身赴任中だとか?」


僕とシュウが話していると、隣のリビングを調べていたHandが例の日記を持って入ってきた。


「いや、その線はないです。むしろこの部屋、独身男性のものだとしか」


言いながら日記を差し出す。      >手がかり1:日記

渡されたそれに目を通すと、確かに家族に関する記載が全くない。どうやらこの日記の主は新入社員で、単身赴任ということもなさそうだ。憧れていた大学の先輩と同じ会社に入れたと、綺麗な達筆で書かれていた。


「じゃあ…マンションの一部と見せかけてまた別の部屋なのかな」

「それもあり得なくはないか…」

「いいえ。日記の最初の方にある引越しに関しての記載が、ここの間取りと一致してるんです」


Handに言われてページを最初の方に持ってくると、確かに新生活の始まりといったふうに高揚した様子で部屋のことが細かく書かれていた。1LDKを借りたこと。カーテンやその他家具の配置も、ここに再現されてる部屋とぴったり一致している。

そうなると家族を思わせるものたちが、部屋とはまた別のヒントということか。


それにしても、登場人物が限られた日記だ。大学の先輩と会社の同期。この二人ばかり出てくる。恋人や家族の記載がないから、やっぱりこの部屋はHandとシュウの見立て通り独身の男の部屋だろう。


「ここ、最後の引き出しに鍵がかかってるみたいで開かねーな」

「…Mouthが隠したのかな?」

「かもな。けど…あとそっちのクローゼットを調べてもなかったら、確認する」


日記をめくっていた僕の横を過ぎて、シュウは後ろのクローゼットを開けた。


「うわっ!?」


突然の声に顔をあげて振り返ると、倒れ込んできた物体からシュウが飛び退いたところだった。


「これ…マネキン…だよな?」


プラスチックのツルツルした表面。デッサン用の関節人形をそのまま大きくしたもののようで、肢体がおかしな方向に曲がっている。座っている状態だからわかりづらいが…ちょうどMouthくらいの身長だろうか。

シュウがそれを起こして壁にもたれさせた。表情のないのっぺらぼうがくたりと首を傾ける。


その時シュウが僕を視線で呼んだ。そばによって体を屈めてみると、そのマネキンの首筋に策条痕が残っていた。

縄で吊られていた…?       >手がかり2:マネキン

それから視線を動かし、マネキンの右手がゆるく握られているのに気づく。左手は開かれたままなので、右の方に何か持っているのかと思って開こうとした。

けれど右手は固定されているようで、力をこめてもびくともしない。


僕はハッとしてMouthの遺体に駆け寄った。

ベッド脇に膝をついて彼の乱れた襟元をそっと開くと、こっちには首筋の策条痕に加え喉元を爪で引っ掻いたような傷が細かくあった。そして死臭に混じって鼻をつく、さっき間近で嗅いだあの独特な匂い。


点と点が繋がる。


眉を寄せたままその視線を手の方にやると、マネキンと同じように右手が緩く握られていた。

一瞬ためらった後で、指先だけで手に触れる。死後硬直がはじまりかけた手は粘土をいじるみたいな抵抗感があった。その手を解いて中に握られていた紙を取り出し、広げる。     >手がかり3:新聞記事


>・月・日 ×内某所にて××した男性(×代)の遺体を発見

同じマンションの×人から異臭がす××の×報があった

男性は×日前から連絡が×かず___…

××が記してい×と思われ××記のページが一部破ら×ており_


それは新聞紙の小さな切り取りだった。Mouthの血で汚れている上に、破かれて断片的にしかわからなかった。

そしてもうひとつ。


:彼の名前は____。哀れなピノキオ 操り人形の末路は_


するりと滑り落ちてきた、くしゃくしゃになった新聞紙とは違う材質の紙。ここにきてから何度も目にしてきたワープロの文字。

これも謎かけ…?いや、答えを導くための指標か…


「松浦賢一」


シュウが隣で、僕の手元を覗き込みながらそう言った。


「…ここで自殺した人の名前?」

「ああ、たぶん。クローゼットのスーツに社員証がついてた。その日記の持ち主もか…?」

「…みたいだね。背表紙の裏に名前が書いてある」


“ここ”で自殺した日記の持ち主、松浦賢一。

操り人形…だから、このマネキンなのか…


「なるほどな。ゲームマスターからヒントは出されるってことか」

「そうだね。おかげで、松浦賢一って人がこのゲーム…事件の被害者だってことはわかった」

「一応こっちサイドも調べたけど、鍵は持ってなさそうだ」


シュウに頷いて、早々に遺体から離れた。むせ返るような血の匂いがあっという間に鼻を支配して胸が悪い。


Mouthが彼の死に関わっていることは間違いない。ここに連れてこられた以上、そして『犯人』であることからもこれは決定事項。

あとはどうに関わっているかを調べていけば、答えを導けるはずだ。


*マンション:リビング・キッチン・ダイニングルームにて


次に僕らが調べることにしたのは、HandとEarがいるリビング。キッチンとダイニングも繋がっているので、実質ここは一部屋だ。アイさんはオフィスの方にいったとHandが教えてくれた。


「こっちに鍵ありませんでしたか?寝室の引き出しが一つ開かなくて」

「鍵…?手の届くところは粗方探したつもりですが、見つけられなかったです」


リビングは特に調べるところもなさそうで、目についたのは日記が置かれていたと言う引き出しくらいだ。

けれど探索のときに調べたとおり、手がかりになりそうなものはない。


キッチンの方にはEarがいたが、こちらも特に事件の手がかりになるようなものは見つかってないらしい。鍵もなかったと首を振られた。


「Mouthをやった執行人、あんだけ傷つけた刃物をどこに捨てたんだか。このへんから調達はできるけどさぁ、あんなにしちゃったら処理の方が大変じゃんね」


血とかいろいろ、床にも溢れてなかったし。


フォークやナイフの入った引き出しを漁りながらEarはぶつぶつ言っていた。

殺し方の大体の想像はついているが、彼女にそれを教えるつもりはなかった。下手に告発されて“処刑”されても困るし…


リビングから出て、バスルームやトイレに続く扉がある廊下にアイさんが立っていた。この部屋とオフィスを繋ぐ扉の前にいる。Noseを単独にしないために半開きになったドアの横で、僕たちを見やって一度瞬きをした。


聞かなければいけないことがあったのを思い出す。だけどそれは今ではない。この第一のゲームにケリをつけてからだ。アイさんの視線に薄く微笑みを返しただけで、僕はなにも言わなかった。


*オフィスにて


オフィスに戻ってくると、Noseが煙草を吸いながら机に資料を乱雑に開いて読み耽っていた。 どことなくまとわりついていた煙たさが一気に濃くなる。窓のない密室で、彼の吐き出す煙から逃れる方法はなかった。


「うわっ、ここすごいな。あんたどんだけ吸ってんだよ」


シュウが部屋に入るなり鼻を摘んだ。僕も黙ってハンカチを取り出して口と鼻を覆う。薄く白けた視界。煙いのに咽せることはなく、頭の方がぐらつく妙な酔いを感じさせる。


「あ…この換気扇つけますね」


天井についたそれを見つけて、壁のスイッチを押した。数分もすると多少マシになったけど、肺に溜まった不浄な空気は取り除くのが難しい。


「チッ。この煙に満たされてるのがいいのに。おめぇらにゃわかんねぇかなー」

「わかりたくねー…。せめて自分の部屋にいるとき吸ってくれよ」


シュウが顔を顰めて突っかかった。Noseはわざとらしく両手を上げて肩をすくめ、立ち上がる。


「んじゃまあそうさせてもらうわ。手がかりになりそうな資料はそこのテーブルに出しといてやったぜ。Mouthのやつ、相当やべぇことやってたみたいだな」


口元をニヤと浮かべ、そう残してNoseは部屋を出た。

単独行動は避けたかったが、他全員がここにいるならお互いある意味安全とも言える。引き止めることはせず見送った。


彼が出しておいたファイルを手にソファに座る。会社やマルチに関するものばかりだった。どこの部分を読んでもMouthが関わっている確証なんてないのに、『犯人』と周知されているとはいえ、彼は確信を持って言っていた。


探索の時にシュウが言っていたように、資料はところどころ破かれていた。とはいえ、Mouthが破いたにせよ全ての手がかりを隠せるわけもなく。

この第一のゲームのある程度の舞台設定はわかった。

                      >手がかり4:会社の資料


ある会社の名前があって、そこは違法マルチで訴えられていたらしい。

そしてHandが気になると言っていた名前リスト。名前の横に、数百から数千万の金額が記入されている。おそらく各人の業績だろう。

保障事業を行なっていた会社だったようだし、詐欺と気づかずに掛金をかなり支払った被害者も相当いたみたいだ。中には借金に追われ自殺したらしい人もいる。


さっきMouthに握られていた記事の続きもあった。

マンションで縊死した男性は、訴えられていた会社の営業所属で、内部告発されたことと、詐欺の証拠となる書類が自殺後の捜査で部屋から発見されたことが書かれている。

マルチの首謀者『松浦賢一』。


彼が操り人形だと言うのなら、それを操っていた存在がいるはずだ。


「あ。またこれ…」


シュウが資料の束の中から紙切れを一枚取り出した。それは二つ目の推理の指標だった。


:『それを使って簡単にお金儲けができる、うんと上手い話があるんだ』

キツネと猫はにんまり笑って 舌なめずりをしました


それはこの事件の始まりを示唆する一文。操り人形の松浦と、それを唆したキツネと猫。おそらく一方はMouthだ。


「これ、ピノキオの原作の一部だな。お前本読んだ?」

「うん。主人公は最後に木に吊られて死ぬ。それになぞらえてるのは間違いないね。だとすると松浦を騙した人がもうひとりいるのかも」


シュウに頷きながら、紙をテーブルに並べた。

この指標からわかるのは、松浦がそうして詐欺の片棒を担がされたこと。


日記を開いて、最後の方に日付を進めた。

新聞記事にもあったように、日記の最後が破かれている。自殺の直前に書いたのか…だとしたら遺書として決定的な証拠になったかもしれない。


「事件の概要は大方わかった。多分お前が考えてることと同じだろうけど…足りねーよな?」

「なんで松浦が自殺したのか。彼の死とMouthの関係がまだわからない」


直接的なことなのか、それとも…


同じ会社…

大学の先輩…同期…この日記の登場人物二人が、キツネと猫の可能性が高い。松浦は『タカ』と『コウさん』と呼んでいたらしい。


人間だけに許された叡智の象徴。


詐欺がこの事件のキーであること。彼のコードネームがMouthであること。それを踏まえて総合的に考えれば、見えてきそうな答え。


彼の罪は…




手がかりは大事なところだけ抜粋してます

ゲームでは詳細まで読めるようにしたい…

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