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6.自動人形

 自動人形の店はメインストリートに面した大きな店舗だった。装飾も立派で金持ち向けであることは見て取れた。 


 ウィンドウには美しい顔の精巧な等身大の人形の他に、子供の背丈ほどの縫いぐるみの様なものも飾られていた。


「これは、これはルクロド様、いらっしゃいませ。今日は如何様な人形をお求めですか」

 モノクルの慇懃な店員が現れ、ルクロド達を奥に誘った。店の中には沢山の人形が並んでいる。男性型、女性型、少年、少女、初老の男女、顔立ちも様々だ。


「養女のエルヴィラだ。この娘用の自動人形を買いたい。エルヴィラ、メイド型が良いか?ガヴァネスタイプもあるが。服は後で自由に変わるから、顔で選ぶと良い」

 エルヴィラは店の中を見回した。先程ウィンドウに飾られていた縫いぐるみの様なものを見つけた。

 エルヴィラより少し小さい、銀色の縞猫の顔をした子供の様な人形だ。手には白い手袋を嵌め、紺色の丈の短いドレスに白いエプロンを付けメイドの様にも見える。


「あの子が可愛いわ」

「あれは女性に人気の猫型の自動人形です。お嬢様にはピッタリかと存じます」


 ルクロドはその人形の両手両足を動かして、動作を確かめた。

「そうだな。機能の方は召喚した魔神によるから、外見は特に問題ない。動きもスムーズだな」

「ええ、触り心地も良いので高い満足度のものとなります」

 店員が笑顔を貼り付けたまま言った。よく見るとこの店員も自動人形の様だ。


「エルヴィラ、これで良いか?」

「ええ!他に問題がないなら!」

「ではこれを貰おう」

 ルクロドは杖屋と同様に手早く代金を支払った。


「召喚はいかがいたしましょう?」

「今やりたい」

「それでは奥の部屋にどうぞ」


 その部屋には魔法陣と思しきものが床に描かれており、真ん中に椅子があった。店員が猫人形を椅子に座らせた。


「魔神は器と報酬を用意して呼び出す。報酬は酒か、菓子が一般的だ」

 そう言ってルクロドは金平糖を出した。


「エルヴィラ、これを左手に持って右手で人形の手を握れ。魔力を流せば魔法陣が発動して魔神が人形に召喚される。金平糖が手の平から消えれば契約成立だ。手を放しても良い」

 エルヴィラは言われるままに金平糖を持ち、人形の手を握った。柔らかく小さな手だった。

 慎重に魔力を流すと魔法陣が光り、手の平の金平糖が消えていった。


「!!」

「無事に召喚できたようだな」

 ルクロドは満足そうに頷いた。

 人形の眼に生気が宿り、ピョコンと耳が動く。エルヴィラが手を放して後ずさると勢い良く人形が立ち上がった。


「初めまして、ご主人様。魔神マヘスと申しますニャ!」

 可愛らしく小首を傾げて挨拶するマヘスにエルヴィラの眼はハートになった。


ーー可愛い〜!!何て愛らしいの!!


「初めまして、マヘス。私はエルヴィラよ。よろしくね」

「はいニャ!」

 マヘスが笑顔で応えるとその後ろでフリフリと尻尾が揺れた。エルヴィラはこの自動人形が大好きになった。

 

「魔神は器と契約があって初めてこの世に存在できる。契約を続けるためには毎日報酬をやる必要がある。難しい注文をした時には多めに菓子をやれ。また、あまり酷い注文は受け付けてもらえない。基本的にほっといてもお前の身を必ず守ってくれるが、怒らせると人形から去ってしまうので注意するんだ。まあ俺などはマリアに金を持たせて自分で酒を買わせている。エルヴィラもマヘスに財布を持たせても良いぞ」

 そう言うと、ルクロドはエルヴィラに巾着を渡した。

「これをマヘスに預けてお前の欲しい物もマヘスに払わせろ。中身はその時必要な分だけ出てくるようになっている。マヘス、お前の報酬は一日二フォリスまでだ。わかったな」

「はいニャ!」


 エルヴィラが巾着の中を確かめるとそこは空だった。魔力を流せばお金が出てくるのだろうか。試したかったが、今は特にお金を払う必要はない。


「マヘス、これを預けるわ。お願いね」

「かしこまりましたニャ!」

 自動人形店を出て、自動車を見に行こうとなった。自動車を扱う店は自動人形店から少し離れているという。歩き慣れないエルヴィラはそろそろ足が痛くなってきていた。ルクロドはそれを察して転移で移動してくれた。


「ご主人様、マヘスが抱っこしましょうかニャ?」

「ありがとう。でも大丈夫よ」

 エルヴィラはマヘスの気遣いに笑顔で応えた。

 思わずマヘスの頭を撫で回すとモフモフと気持ち良く、癖になりそうだった。


「エルヴィラ、すぐに座れるからもう少しだけ我慢してくれ」

 そう言って、ルクロドが杖を軽く振ると、エルヴィラの足から痛みが引いた。


「あら?痛くなくなったわ」

「これくらいなら魔法でも治せる。辛い時は遠慮せずに言っていい」

「流石、ルクロド様ニャ!気が利くニャ!」

「マヘス、エルヴィラが辛そうな時は治癒してやってくれ。報酬は足りるだろ」

「フヘヘ、マヘスは治癒は苦手ニャ!」

「……エルヴィラ、家に帰ったら他の魔神と入れ替えてやろう」

「酷いニャ!マヘスは治癒は苦手ニャけど戦闘は得意にゃ!絶対ご主人様を守り切る自信があるニャ!」

「ルクロド、私はマヘスが良いわ」

「……気に食わないことがあったらすぐに変えてやるから言うんだぞ。治癒が必要な時はマリアか俺に言え」

 ルクロドは苦虫を噛み潰した様に顔を顰めて言った。マヘスはエルヴィラが庇ってくれたことを涙を流して喜んでいる。


「ご主人様!ありがとうございますニャ!マヘスはご主人様に永遠の忠誠を誓うニャ!」

「どういたしまして。マヘス、こちらこそお願いだからずっと側に居てね」

 手を握り合って喜ぶ二人を見て、ルクロドは溜息を吐いた。


「そろそろ店に入ろう。店員が中からこちらを見ている」

 見れば、男達が数人、中からこちらを窺っていた。

 それに気付いたエルヴィラは恥ずかしくなって顔を真っ赤にした。




マヘスのモデルはシル◯ニアの猫シリーズです。

(≧∀≦)

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[一言] マヘス可愛いですにゃ! 俺も欲しいですにゃ!
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