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【電子書籍化】このまま破滅したくない悪役令嬢は乙女ゲーを降りることにしました  作者: 冬野月子
一幕目

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本日2回目の投稿です。

「うーん」

兄は私の姿を見て唸った。


「似合っているが…あからさまだな」

「…やはりそういう意図なのでしょうか」

「それしかないだろう」

ですよね…。


今夜は学園のパーティーで、授業は休み。

各自自宅で準備をして夕方学園内のホールに集まる。

学校行事といってもそこは貴族、ドレスコードは本格的だ。


私は殿下から贈られたドレスを着ていた。

鮮やかな青いイブニングドレスは裾が大きく膨らみ、そのボリューム感とのバランスを取るように、上半身はタイトでシンプルなVネックのデザインとなっているのだけれど…。

何というか、ただでさえ大きな胸が強調されるのだ。

元々夜用のドレスは胸元や背中の露出が多いものだけれど、それにしてもだ。


…まあ、それはとりあえず置いておいて。


気になるのはドレスに施された金糸の刺繍だ。

スカート部分に全面的に描かれているのは、王太子の紋章である一重の蔓バラ。

ちなみにアップにした髪にもクリーム色のバラの髪飾りが付けられている。

殿下の瞳の色のドレスに、髪色の糸で施された殿下の紋章。

アクセサリーは金とダイヤモンドの組み合わせ。


「全身で殿下のものだと主張しているな」

ホントにね!

「学園のパーティでこれはやりすぎなのではないかしら…」

「ニコラスと話をしていただけで嫉妬するくらいだからな。他の男に誘わせたくないのだろう」

「だったらこんな胸元の開いたドレスはおかしいのではなくて?」

こんな谷間を強調したドレス…嫌でも視線を集めてしまう。


「……そこはまあ、男心だ」

むっつりか!殿下はむっつりなのか!

王家御用達の店が作ったのでデザイン自体は上品なものなのだけれど…。


そういえばゲーム内のゾーイもそのスタイルの良さを活かすようなドレスを着ていた。

ゲームの時の今回のパーティで着ていた真っ赤なドレス姿は恰好良かった。




婚約者などパートナーがいる場合は男性が女性の家に迎えに行き、共に会場に向かうのがこの国でのしきたりなのだが、王族の場合は自ら迎えに行くような事はしない。

殿下は迎えに来たがったのだが、しきたりを変える訳にもいかないので兄のエスコートで馬車に乗り、学園へと向かう。


向かいの席に長い脚を組んで座る、黒のテールコートを着用した兄は、妹でも惚れ惚れしてしまうくらい格好いい。

さすが攻略対象だ。


兄はよくモテる。

文武両道で家柄、見た目、全てに優れている。

性格は若干腹黒い部分がなくもないが、それもまた魅力になるのだろう。

そんな兄なのだが…。


「どうした」

じっと兄を見つめていると首を傾げられた。

「いえ…どうしてお兄様は婚約者がいないのだろうと思いましたの」

こんな優良物件、直ぐに売れるだろうに。


ちなみに兄エイデンルートに入った時の悪役令嬢も私ゾーイで、やはり修道院に送られてしまう。

二人分の悪役とか解せない。



「ああ…」

兄は視線を窓へと外らせた。

「婚約者は、いないこともない」

「え?初耳ですわ?!」

そんな事聞いていないのだけれど!


「私も会った事がないからな」

「会った事がない…?」

それって…

「他国の方ですの?」

公爵家ともなれば、政略結婚で異国の姫君が嫁ぐこともある。

現に曽祖母は他国の王女だった。



「決まった訳ではない。そんな話もあるという事だ」

窓を見つめたまま兄は答えると、こちらを見た。


「ゾーイ、お前は殿下の事をどう思っている?」

「え?」

「殿下はゾーイに惚れているようだが」

「…そうですね…」

それは自覚している。

けれど。

私は…殿下の事を。


「…好ましくは思っていますけれど」

「けれど?」

「———これが〝恋心〟なのかは…正直よく分かりませんの」

好きなのは確かだ。

けれどこの〝好き〟は…恋というよりも、友人や家族への愛情に近いと思う。



私は殿下に恋をしていないし、この先も恋する事はないだろう。

そんな事、誰にも言えないけれど。

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[一言] なるほどなぁ。
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