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苦し紛れな応急処置

作者: キチ右衛門

「苦し紛れな応急処置ですが。」




今日は私が体験した少し不気味な恐怖体験を語らせていただきます。


私が働く病院に中年の医者がいるのですが、その医者の口癖が「苦し紛れの応急処置ですが。」なんです。


患者さんがそんなに悪い病気にかかっているのかな?と毎回思うのですが、その中年の医者が口癖を言った患者さんは、ぱったりその日から病院に来なるのです。


しかし私は不気味に思いながらも、興味が湧いてきてしまいました。


ある日、ステージ4の癌の患者さんが中年の医者に診察を受けていたのを偶然見かけて、患者さんと中年の医者の会話を盗み聞きしてみました。


うちの病院の診察室の壁は薄くて、声がよく聞こえるから盗み聞きができます。


「苦し紛れの応急処置ですが。」


また、中年の医者の口癖が出たのを聞いてそのあとの会話を聞くのを忘れていました。


この時、そのときの会話を聞いておいたら.....と後悔するばかりです。


その日の夜、ステージ4の患者さんが亡くなりました。

この時はまだ偶然だと思っていたのですが………………。



次の日、同僚の看護師がいきなり体調不良を訴えだしました。


その時、珍しく病院が空いていたので医者に診てもらうことにしたのですが……


それがまた私の後悔の一つになってしまいます。



その日も口癖を診察の最後に言ったのを聞きました。


しかし、いつもと少し様子が違ったのです。


私が盗み聞きしているのを知っているかのように、わざわざ診察室のドアの前まで来て「苦し紛れの応急処置ですが。」と言ったのです。


ぞわっと背筋が凍りました。


その後、気分が悪くなりその日は盗み聞きをやめて、仕事に戻りました。




次の日、同僚は仕事を無断欠勤しました。


いつもならきちんと連絡してから休む子なのに、と思い同僚の家まで迎えに行くことになりました。


コン コン


「なかなかでないですね。」


「開けてみましょうか。」


上司がドアノブを捻ると、ドアが開きました。


部屋の奥からは嫌な縄の音がギシギシとなっていました。


もしや、と思い急いで部屋の奥へ行ったんです。



同僚が自殺していたんです。



プラーン プラーン


と揺れていて、泡を吹いていました。


急いで救急車と警察を呼びました、その日は取り調べもあり心も体もボロボロでした。



同僚の死から、半年ほどたって心の傷がいえてきた頃、事件は起きてきまいました。



前々から調子が悪いと言っていた母親が病院に来ると言っていたのですが、母親を診察する医者があの中年の医者だったのです。


止めようとしましたが、「いいわよ、あんた医者でもないんだから。」と突っぱねられてしまいました。



「苦し紛れの応急処置ですが。」といつもより大きな声で聞こえました。



ああ、最悪だ、とその時絶望しました。


ここ半年、盗み聞きしてきた私だったから、わかったんです。



その口癖は、死の宣告だってことを。


今日、母は死んでしまう..............そう思っていたのですが……



母が思いがけないことを言いました。












「壁に張り付いて何を言ってるんです?」












私がどうなったかって?













ぷらーん、ぷらーん。

ふふふ。





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