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雅な修学旅行

1学期の中間テストが終わり、三年生は修学旅行の季節となった。


行程は2泊3日で初日に奈良を回り、2日目は京都に移動し班毎に行動する。


このみは加藤桃華、沢口実花、安田真理と一緒の班である。


その4人が職員室に呼び出された。


『あなたたちの班の計画表なんだけど、この舞妓体験の料金8000円というのは修学旅行としてはどうかと思うの。』


田口先生がこのみたちの班の計画にダメ出しをする。


『いろいろ探したんですが。本格的なのはもっと高くて。』


価格が安いと全かつらだったりするのが不満で多少足が出ても本格的に近い体験をしたいのだ。


『仕方ないわね。特例ですけど他の子たちには言わないで。後、修学旅行は遊びではない事を忘れないでね。』


田口先生はため息を付きながら折れた。


『それから今井さん、お部屋の事なんだけど、去年は今井さんは一人部屋だったけど今年はどうする?』


二年生の東京への校外学習ではこのみはシングルルームだったが、一年先輩の知香は他の女子生徒と同じ部屋に寝泊まりした実績がある。


『私は……どっちでも良いです。』


この問題はこのみ自身より一緒の部屋になる他の生徒の方が大事だ。


『私、中学に入ってからこのみの事は一度も男子だって思った事はないし、一緒の部屋で構いません。』


小学校の頃から同じクラスになる事が多かった真理が口火を切った。


『私も大丈夫です。逆にこのみちゃんが一人部屋だったら襲いに行っちゃう!』


実花の口が滑る。


『沢口さん。冗談でもそんな事は言わない様に。』


『私、まだ今井さんの事はよく分からないけど一緒の部屋でお話聞けたら良いなって思います。』


桃華はおとなしい感じであまり会話をした事はないが、一緒の班になって良かったとこのみは思った。


『分かりました。今井さんも一緒の部屋にしますがもし1泊目の奈良で問題があれば京都では部屋を変える事もあります。』


このみは初めて同級生の女子と同じ部屋で寝る事になった。



『お爺さま、修学旅行で舞妓さんの体験をする事になったのですが、舞妓さんのお着物の事教えて戴けますか?』


西陣と並ぶ織物の産地で長年織物工場を営んでいた祖父の育三郎は孫のこのみが着物に興味を持ち普段も着付けを学ぶ姿が嬉しい。


『さすがに舞妓の着物はうちで織った事はないが、お引きずりと言って裾が長いのが特徴だ。』


このみも舞妓が褄を掴んで花街を歩く姿を写真などで見て知っている。


育三郎にいろいろ教えてもらい、ノートにメモをしていく。


『ありがとうございます、お爺さま。』


『写真撮ったら見せておくれ。』


修学旅行の楽しみが増えた。



修学旅行は6月1日からとなり、同時に今日は衣替えでもある。


セーラー服の生徒に混じり、このみたち新制服のモニターの生徒たちは青みがかったグレーのポロシャツ姿で集合場所のF谷駅に向かった。


『へぇー、夏服はポロシャツなんだ?良いなぁ。』


白いセーラー服は厚手の冬服に比べると涼しげだが、それでも夏休み前後は暑く、新制服のポロシャツは涼しそうだ。


『あ、こうちゃん!』


懐かしい声がした。


『知香さん!』


この春から高校に通う知香も今日から夏服で、緑色に近いベストとチェックのスカート姿だ。


『いつもこんな早い時間に学校に行ってるんですか?』


『うん。あまり遅くなると電車が混むからね。』


『あ、このみちゃんだ。』


知香と同じ高校に通う高野紀子と看護師養成に特化した高校に通う原田美久もやって来た。


『美久さん、紀子さん、ご無沙汰しています。』


『そうかぁ、今日から修学旅行なんだね。』


そう言いながら美久は自分たちの一年前の修学旅行を思い出していた。


『はい。私たち、舞妓体験やるんです。』


『良いなぁ。私たちもやりたかったけど予算と時間がね。』


知香たちも舞妓体験はやりたかったが、断念していたのだ。


『内緒だけど先生に無理やり認めてもらいました。』


『麗さんに似てきたかな?……ごめんね、もうホームに行かないと座れなくなるから行くね。帰ったら写真見せて。』


知香たちが改札の中に入るとほぼ同時に先生が集合の号令を掛けた。


『A組から順にホームに入ります。2つ先のK谷で降りて新幹線に乗り換えますが停車時間が短いので気を付けて下さい。』


3クラスを合わせて生徒だけで100人強なので在来線から新幹線に乗り換える最初が一番大変だ。


修学旅行に向かう生徒たちは知香たちと同じF谷駅始発の電車に分散して乗り込み、K谷で新幹線に乗り換えたが新幹線も結構混んでいて全員は座れないし、他の乗客は東京都内の会社に向かうサラリーマンばかりなので騒いだりは出来ない。


多少窮屈さを感じながら都内に入った新幹線は地下に潜り、再び地上に上がると東京駅に到着した。


東京駅からの新幹線は修学旅行生のみが乗る臨時列車なので騒いでも大丈夫だ。


ホームは他の中学の修学旅行生もいて賑やかである。


指定された座席を確認すると、座席を回転して後ろの席の生徒たちと向かい合わせになる。


『トランプしよう。』


新幹線はまだ発車していないのに中学生たちは大いに盛り上がった。


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