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異性装の日

ゴールデンウィークが終わり、新しい制服のモニターをしている生徒たちが一斉にスカートとスラックスを穿き換える日を迎えた。


女子はまだしも、女装趣味でもない男子がスカートを穿いて登校するのはかなり抵抗があると思うが、モニター全員が同じ日に穿く事で多少恥ずかしさを軽減させ、この日を異性装の日として学校内外に通達している。


『おズボン、似合いますわね。』


率先して異性装の日を盛り上げなければならないこのみは、まだ麗が家を出る前にその姿を見せてみた。


『変ではありませんか?』


女の子になると言わなければこの姿で学校に行っていたのだが、改めてスラックスを穿くと緊張する。


『だいぶ髪が伸びましたからね。身体も少し丸みが出ている様です。』


頼子はそう分析した。


ホルモン治療はまだ始めていないこのみだが、思春期の身体の変化を抑える坑アンドロゲンの投与をずっと続けている影響か、若干の女性化はしている様である。


『行って参ります。』


中学生になって制服以外でもズボンを穿くのは初めてであり、新鮮な気分である。


学校に近付くと詰め襟、セーラー服の現制服の生徒に混じってブレザーの生徒が歩いているが、スラックス姿の女子が堂々としているのに対し、スカート姿の男子生徒は恥ずかしそうにしていた。


『おはよう、西田くん。』


『お……おはようございます、今井先輩……。』


一年生の西田翔は数少ない男子モニターの一人だ。


『恥ずかしいとは思うけど、堂々としていた方が目立たないよ。』


そうは言ってもスカートを穿いた事などないだろう西田にとってこの上なく恥ずかしいだろう。


モニターではない他の生徒にもからかったりスカートを捲ったりしない様に周知徹底されているため、かえって他の生徒から浮いて見られている。


『あ、田中くん、陽菜ちゃん、おはよう。』


すっかり仲良くなった二人は手をつないで歩いていた。


陽菜も普段はスラックスを穿いているので今日はスカートを穿いているが、田中の方が堂々としていて、陽菜は俯いている。


『学校休むなんて言って連れてくるの大変だったよ。』


田中はまるで保護者だ。


『田中くんは全然抵抗ない?』


『毎日スカートでも大丈夫だよ。でもそれだと誤解されるかもしれないね。』


あくまでも田中自身は女装をしたい訳ではないと言っている。


『……このみ先輩……、これじゃ公開処刑です……。』


本来なら毎日スカートを穿いて登校しなければならない陽菜の方が公開処刑などと言っている。』


『今日学校休んだら、別の日に一人でスカート穿いて来なきゃいけないんだから我慢してね。』


モニターにならなければセーラー服で毎日通わなければならないのでモニターなら今日1日我慢すれば良い事だ。


それでなければFtMとして診断書を出してもらい、男子として学校に通えば良いがまだ陽菜自身曖昧にしている。


『お父さま、おはようございます。』


『スラックスも似合うぞ、このみ。』


学校に着くと、廊下には源一郎や校長の沢田が立っていた。


知らない顔の大人もいるが教育委員会の人だろう、異性装の日に合わせて視察に来た様だ。


『スカートを穿いた男子もあまり違和感がない様だ。』


モニターになった男子はみな中性っぽいので、これが身体が発達した運動部の三年生なら印象は大きく違っただろう。


『男子のスカートの下はどうなっているのだ?』


『短パンです。くつ下は白ソックスをきちんと履く様統一しました。』


スカート捲りは禁じているが、事故はあるのでその辺りは最初から対策を講じている。



午後は生徒全員を集めて新制服と今日の異性装の日の説明を行なった。


制服向上委員会の委員長としてこのみは全校生徒の前に立った。


『来年から新しい制服を導入する予定で、この4月から在校生、新入生の何人かに新制服のモニターをしてもらっています。今日はそのモニターのみなさんに普段とは違う、女子にスラックス、男子にスカートを穿いてもらいました。これはあくまでも試験的に行なったものなので実際にこの様な行事を行なう予定はありません。ただ、生徒のみなさんの率直に意見や感想を生かしていきたいと思います。』


田中や陽菜たちも一緒に壇上に上がっているが、陽菜は他の生徒とは逆に普段からスラックスを穿いているため今日はスカート姿となっている。


『先輩、恥ずかしいよ……。』


『スカートも似合うよ。』


田中と陽菜は並んで一緒にスカートを穿いているが、恥ずかしがっているのは陽菜の方だ。


『小学校の時だってスカート穿いた事何回かはあったんでしょ?』


『……あったけど嫌だった。』


『今日みたいに特別な日は仕方ないけど、普段無理にスカートを穿く必要はないよ。もしそんな事があるなら僕が一緒に穿いて隣にいてあげるから。』


田中は陽菜の負担を和らげる役目を買って出た。


『ありがとう……。』


陽菜はこの先自分がどうしたいのかを決めかねているが、女性のまま男性の服を着ていくにしても男性になるにしても田中とずっと一緒にいたいと思った。

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