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お嬢さまの自宅訪問

『ええーっ、なにそれ?』


転校してきた遠山がこのみの家に押し掛ける事となり、ついでに友だちを紹介しろという話に安田真理が呆れて言った。


『でもまだA組で知ってる子少ないし。豊くんは野球部で無理だし。』


『他のクラスの子でも良いんじゃないの?でも遠山って自己紹介なんか聞いてもイヤな奴っぽくない?』


他の生徒からも自己紹介の評判は悪いみたいだ。


『村田くん呼ぼうか?』


正義感の強い村田がいれば遠山が女の子に変な事を言っても締め付けられるだろう。


『そうだね。』



土曜日、遠山たちがこのみの家にやって来た。


インターホンを鳴らし、遥が応対する。


『みなさま、いらっしゃいませ。どうぞこちらへ。』


『……中学生……?奴隷にしているのか?』


遠山はメイドと奴隷をはき違えているのだろうか?


『はじめまして、私はみなさまの後輩にあたります二年C組の西山遥と申します。土曜、日曜にこの家で家事のお勉強をしております。』


遥はメイドの仕事とは言えないので家事の勉強と説明した。


『みなさま、いらっしゃいませ。』


このみは着ている着物のせいか、お嬢さまとしての貫禄が付いてきた気がする。


『着物、自分で着たの?』


『はい。最初に比べてだいぶ上手く着付けられる様になりました。』


『へぇー、着付けとかやるんだ。』


『はい。今は他にお茶も習っております。』


女子たちがこのみを中心に盛り上がっているなか、遠山たちはきょとんとしている。


『お前か?馴れ馴れしい転校生は?ああ見えても今井はスゴい奴だぞ。文化祭の時はクラスをひとつにまとめたし、甘く見てるとヤバイぞ。』


なにがヤバいか分からないが、強面の村田がこのみには一目おいている様である。


『なんだよそれ?なにか魔法でも使うのか?』


『そうかもしれん。入学した時は先輩の後をくっついているだけだったのに、いつの間にお嬢だからな。』


『みなさんいらっしゃい。今日はずいぶん賑やかね。』


康子が厨房で作った菓子を持って現れた。


『こんにちは。』


(あれが今井の母親か。確かにキレイだな。)


康子の顔を見て遠山は思う。


『お母さま、新しい友だちを紹介致します。A組の野口歩実さん、秋野尚吾さん、それと東京から転校してきた遠山新太さん。


『このみの母です。みなさん、どうぞ宜しくお願いしますね。』


みんなで出来立ての菓子を食べながら会話を楽しむ。


『今井って最初さっきの二年生みたいにここで家事の勉強をしていたと言ってたな。』


『おう、メイド……ここで学んでいたのがきっかけでお母さんたちが再婚したと聞いている。』


遠山は村田にしつこく聞くが他に聞ける相手がいないのだ。


『持ってる奴なのか?』


『そうかもしれないな。でも俺は去年生徒会長だった先輩の影響が大きいと思う。』


村田は良くも悪くも知香のおかげだと言う。


『去年の生徒会長?さっき言った先輩の事か?』


転校してきた遠山は去年の生徒会長など知らないが、村田も知香には散々振り回された一人だ。


『おう、今井と同じLGBTで今井が慕っていた先輩だ。今井がこの家に入るきっかけもその先輩の仲介だったと聞いている。もっとも今井自身が持ってなきゃ振り回されて終わるだけだが。』


『ふーん。』


遠山には卒業した見ず知らずの先輩には興味はないがこのみの奥深さには関心がある。


『お菓子の味は如何ですか?男の子には甘過ぎでしょうか?』


突然康子に声を掛けられ、村田も遠山も焦る。


『ご、ごぶ、ご無沙汰しています!大丈夫です!』


『は、は、はじめまして!遠山と()()申します!自分は甘いもの大好きです!』


村田は目の前のジュースを一気飲みし、康子に質問をぶつける。


『あの……、お母さんはこのみさんのために再婚されたのですか?』


いきなりの質問だったが、康子はゆっくり丁寧に答える。


『最終的にはそれもありましたわ。でも、旦那さまの熱意と愛情、後は成り行きね。』


康子が笑って二人に言った。


『二人ともモテそうだけど、自分の好きな子が出来たら熱意が大事よ。頑張ってね。』


『はい。』


二人とも訳も分からず励まされて、返事を返すくらいしか出来なかった。


『村田くんと遠山くん、いつの間に仲良くなっていますね。楽しんでいますか?』


今度はこのみが声を掛けた。


『他に話す相手がいないだけだ。』


遠山はそう言うが、結構息が合っている。


『今井……。お前はその……着物とかが好きなのか?』


『はい。お着物は所作が大切なのです。普段は油断すると男の子の動きが出てしまいますが、お着物を着ているとひとつひとつの確認しながら動かなければなりませんから。』


『俺は男だった頃の今井を知らねえからお前が女だとしか思えない。』


『遠山くん、このみが男の子だった頃の写真見てみる?』


『なに?』


真理が会話に突っ込んできた。


『小学校の時の卒業アルバムを持ってきたの。集合写真は女の子の格好だけど髪が短い時だったし、男の子だった頃の修学旅行とか運動会の写真あるよ。』


『ちょっと真理、止めて!』


『どれどれ?見せてみろ。』


遠山だけでなく別の小学校だった村田たちもせがんだ。


『やだよ、黒歴史なんだから。』


『こほん。』


つい普段の言葉遣いが出てしまい、頼子が咳払いで指摘する。


『……お止め下さい。』


て言う前にすでに真理はアルバムを出してみんなが写真を覗きこむ。


『わぁー、男の子だけど可愛い!』


女子たちが喜んだが、思わぬ形で村田や遠山に過去の黒歴史を披露してしまった。


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