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父と母の披露宴

神社での結婚式が終わり、源一郎と康子は用意された黒塗りの車で披露宴が開かれるホテルに向かい、このみたちも後を追った。


源一郎は市議会議員という立場なので、披露宴も市内に昔からあるホテルに拘っている。


受付は市議会や商工会関係とその他に分けられ、麗やこのみの学校の友人などは頼子と遥が担当していた。


学生たちには制服で出席する様に招待状に書いてあり、知香たちは高校の入学式前に制服姿をお披露目する形となる他、源一郎の推す三中の新しい制服を着る生徒もいるので格好のアピールになる。


『中野さん……、いや、上西さん。ご苦労さん。』


知香の祖父である白杉俊之が頼子に声を掛けた。


源一郎の秘書をしているリカルドの絡みで俊之と妻の佐知子も招待をされていて、昨晩はこのホテルに宿泊している。


『その節はお世話になりました。』


遅れて知香やその同級生たちがやって来たが、みな違う高校の制服を着ている。


『遥ちゃん、お疲れさま。』


『白杉さんの高校の制服、良いですね。』


『遥ちゃんは新しい制服にしなかったの?』


遥は制服モニターに申し込みをしなかったので今の制服であるセーラー服のままだ。


『新しいブレザーの制服も良いですけど私はこのセーラー服が気に入っているんです。』


なんとなくこのみに遠慮している様に見える。


三中の新しい制服を着た生徒がやって来た。


『確か、こうちゃんと同じクラスの?』


『田中陽祐です。』


文化祭でノーメイクなのに妙にメイド服が似合っていたと知香は記憶していた。


『これが新しい制服かぁ。それにしても田中くんスカートが似合うね。』


田中はこのみからスカートを穿く様に言われていた通りにスカートを穿いているが違和感が全くない。


『そうですか?でも僕は白杉さんや上田さんみたいに女の子になりたい訳じゃないですよ。』


なんか変わった少年である。


神社で結婚式を終えた麗とこのみが受付にやって来た。


『麗さん、お久し振りです。二人とも着物姿、素敵です。』


『知香さん、高校合格おめでとうございます。このみさんも会いたがっておりますし、たまには遊びに来て下さいませ。』


『ご無沙汰してすみません。落ち着いたら改めて伺います。』


『あら?知香さんが落ち着く時ってあるのですか?』


麗は知香にキツい一撃を放った。


『あら、萌絵さん。』


受付に萌絵と奈々が現れ、麗が声を掛けたが、このみは知香と萌絵が別れた話を聞いていたので気不味い感じだ。


『お姉さま……。』


このみは麗に二人が別れたという事を耳打ちする。


『まあ、そうでしたの?あれほど仲が良かったのに。』


『麗さん、気を遣わなくても良いですよ。学校でだって顔を合わせていたし。それにこうちゃんにお願いした件、大丈夫だよね?』


『はい。受験が終わってからだから時間がなくて大変だったみたいですけど。』


知香はこのみになにを頼んだのだろうか?


『麗さんにもお願いがあるんですけど。』


知香は麗に紙を渡した。


『これをワタクシがですか?……このくらいは簡単ですけれど。』


『お願いしますね。』


このみと麗は親族控え室に戻り、披露宴の時間となった。


出席者はみな会場に移動する。


立食なのでみんなばらばらにテーブルの回りに付くが、学生たちと市議会や商工会の関係者が偏ってしまう。


辺りが暗くなり、端の扉にスポットが当てられるとまず車イスの麗と車イスを押すこのみ、源一郎と康子、仲人の中島市長夫妻が入場する。


康子は育三郎が作った色打掛を纏っている。


テーブルには左から中島市長、源一郎、このみ、麗、康子、中島夫人の順に座り、中央は新郎新婦ではなく子どもたちが座る形となった。


商工会議所会頭の長い挨拶があり、乾杯の音頭を取る県議がまたやたらとスピーチが長い。


注がれたビールの泡がなくなった頃にようやく乾杯となり、みな暫くの間食事と歓談を楽しんだ。


麗の同級生たちはお互い学校の話や大学進学について話を先の、知香たちはそれぞれ新しい学校の制服を見せ合っている。


『みなさん楽しそうですわね。』


ひな壇にいるこのみたちの食事は時おり給仕が持ってきてくれるが、席を立てないので退屈である。


源一郎や康子の周りには市議会や商工会の人たちが酒を次ぎながらいろいろ話を聞きに来るが、和装花嫁の康子はあまり食べたり飲んだりは出来ず、辛そうな感じに見える。


『このみさん……でしたね。どうぞ。』


見知らぬ男がジュースを注いでくれた。


『ありがとうございます。』


『このみさんは性同一性障害と聞きましたがきれいで本物の女の子と変わらないですね。』


『……は、はあ……。』


なんかゲスい記者の取材みたいで気味が悪い。


『本物のとは失礼ですわね。正真正銘ワタクシの妹ですわよ。』


麗がぴしゃりと言って男は席から離れた。


『どこから入り込んできた輩でしょうか?このみさん、たまにああいう輩がいますがお気を付けなさい。』


『はい、お姉さま。』


正式に源一郎の養子となった事でこのみの周りも変化が生じるかもしれない。


このみは麗の様な強さを身に付けねばと感じた。

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