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披露宴の招待状

このみは、仕上がった結婚式の招待状を学校に持っていき、最初に担任の田口先生に渡した。


『ありがとう、必ず出席するからね。で、あと誰に渡すの?』


このみは招待状のリストを先生に見せた。


『三年生が多いわね。』


『三年生のほとんどは姉の麗と連名での招待です。』


麗とこのみを繋げた知香とその友だちを外す事は出来なかった。


『でも三年生は今受験でそれどころじゃないと思うの。デリケートな時期だから直接渡すのはどうかと思うわ。』


結婚式は受験が終わった春休みだが、受験真っ只中の今はみんなナーバスになっている。


『でも、出来るだけ直接渡したいんです。』


このみは文化祭以降知香を始め世話になった三年生とはほとんど接触がない。


当然、同じ学校にいるので顔を合わせる事もあり挨拶は交わすが込み入った話は出来ないでいた。


『うちのクラスの生徒は少なくない?』


このみのクラスメイトは生徒会長の佐藤しおり、副会長の村田義人、学級委員の古屋美奈、小学校から同じクラスの安田真理、制服向上委員会の田中陽祐の5人に絞られていた。


『中途半端に多いと呼ばれなかった人からなにか言われそうなので、最小限に絞りました。』


そもそも本人ではなく親の結婚式であるので、娘の友だちを呼ぶ理由はない。


その一方で再びPTA会長に就任する事から校長の沢田幸喜や学校関係者にも何人か招待状を送っているが、それは源一郎から郵送されている。


このみは、昼休みに三年生の教室に行き、招待状を渡す。


『ありがとう。必ず行くからね。』


三年A組は知香とその親友の志田雪菜、原田美久だ。


『知香さんがまたなにかやって戴けると源一郎が期待しています。』


『ちょっと待ってよ。今それどころじゃないし。』


知香は笑って否定した。


そういう時はなにかやってくれる合図なのである。


次にB組に行き、いずみの姉・大森のぞみ、松嶋はずみ、野村優里花に渡した。


『いずみちゃんにも是非来てほしいと麗も申しておりました。』


毎日のようにバスケ練習に来ているいずみにはすでにのぞみに招待状を渡すから一緒に来てと伝えてある。


『はずみさん、一郎さんには郵送しましたので是非来て下さいね。』


はずみは長野に住む知香の従兄弟の一郎と遠距離恋愛中である。


C組の八木萌絵、菊池奈々、水尾ありさにも渡す。


『……知香も来るんでしょ?』


『知香さんとなにかあったのですか?』


萌絵の一言にすかさずこのみは反応した。


『萌絵ね、知香と別れたの。』


萌絵と知香はずっと恋愛関係だったが、その二人が別れてしまったという話は初めて聞いた。


『そうなんですか……。でも、萌絵さんと奈々さんには私から是非お願いしたい事があるので、式にも是非出席してほしいのです。』


『なによ、お願いって?』


『私の祖父母が群馬の織物工場をやっていたのですが、もう歳なので廃業したのです。その建物は古く文化財になるほどなので、壊さないで若い服飾デザイナーさんたちに貸し出すという計画があります。』


『それを私たちに貸してくれるの?』


『奈々、やぎっち、凄いじゃない!』


ありさも隣で興奮気味に叫んだ。


『……考えておく……。』


まだ受験中の身でもあるので、返事はもらえなかった。


『祖父母も出るので結婚式は是非出席して下さい。』


知香と萌絵が別れたのは想定外であったが、祖父母の工場の件には是非参画してほしいので、そのためにも式には出て育三郎に会ってもらいたいと思う。


自分の教室に戻る前に、二年A組の清水豊のところに行く。


豊はもともと親友だったが、このみが女子になり親密な間柄になっていた。


『春休みは野球部忙しいんだよ。ごめんな。』


豊は野球部のキャプテンとなり、だいぶ逞しさを増している。


『うん、分かった。』


豊はこのみがお嬢さまになった事で以前より近寄りがたくなり、最近は話をする機会がなくなっている。


自分の教室に戻るともう休み時間の残りが少なくなっていたのでクラスメイトには放課後渡す事にした。


『ありがとう。是非行くよ。』


しおりは快く応じた。


『平服でお越し下さいと書いてあるがどういう事だ?』


結婚式とはいえ、お互い再婚で学生も多いので平服と記されているが、村田がそこを指摘する。


『普通、なにも書いていない場合礼服って言って男性は黒いスーツに白いネクタイをするとか決まっているんだけど、それに拘らなくて良いっていう事みたい。平服だからって普段着では来ないでね。制服とかなら良いみたいだよ。』


このみは田中にも渡した。


『田中くんはどんな服で来てくれるかな?』


このみは田中に女装してほしくてたまらない。


『新しい制服で行くよ。それでも良いんだろ?』


『うん、お父さまも喜ぶと思う。』


新しい制服の発案者は源一郎だから、良いアピールになるだろう。


『スカートの方で来てね。』


このみはその一言を忘れていなかった。

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