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このみの祖父母

このみたちが2日目の研修を終え、帰ろうとした時に受付に40歳前後の夫婦とその娘と思われる中学生くらいの女の子がやって来た。


(仁村さんの家族かな?)


女の子は仁村が言った通り、どことなくこのみに似た小柄な感じだった。


このみがその子を見ていると一瞬このみの方を向いて目が合い、このみは慌てて会釈した。


親子の間になにがあったかは分からないが、孫の立場からすると祖父が亡くなった事をどう感じているのだろうか?


祖父母に会った事がないこのみには理解が出来なかった。



『ただいま帰りました。』


『お帰りなさいませ。お嬢さま、少しお疲れでしょうか?』


頼子はこのみが落ち込んでいるのを見て、直ぐに反応した。


『頼子さん、少しお話したいのですが、宜しいでしょうか?』


頼子は直ぐに母の康子には言えない話だと理解した。


『畏まりました。先ずはその体操着をお着替え下さい。』


このみは自分の部屋に戻り、私服に着替えた。


『失礼致します。』


頼子がお茶を持ってこのみの部屋に入る。


『奥さまはご夕食の仕度をされていますからなんなりとお話下さい。』


このみは仁村が亡くなった事、自分が生まれてから祖父母に会っていない事を頼子に話した。


『奥さま、お嬢さまを今井家に迎えるにあたり、ご親族の事は全て調べてあります。お嬢さまが気になさっている部分ですが、奥さまのご両親は健在です。』


それだけの情報を掴んでいるならこのみのもう一方の祖父母、父・遼太の父母の事も知っているだろうが、そこまでは聞けなかった。


『実は旦那さまも再婚する前にご挨拶に伺うべきとお考えの様ですが、奥さまの手前なかなか言えないのです。』


康子が遼太と駆け落ちをした事で蟠りがある親子関係をさらに悪化させる可能性もあるので手出しが出来ない状態の様なのだ。


『住所とか分かりますか?』


このみのそのひと言で頼子はこのみがなにをしようとするのか分かった。


『分かりますが、お嬢さまお一人で行かれるつもりですか?』


『お姉さまにお願いして一緒に行きます。』


このみ一人では心許ないが、大人が一緒に行けば利用されていると思われるかもしれない。


高校生の麗が一緒ならそこまで不審がられる事はないだろう。


『どちらにお住まいになられているのですか?』


『群馬県のK市です。』


K市は群馬県と栃木県の境で、直線距離ならF市から25キロくらいの距離だが、交通の便は悪く電車だと1時間半くらい掛かる。


『このみお嬢さまに麗お嬢さまの世話をさせる訳には参りませんので遥さんもお供させましょう。』



3人は日曜日、康子には内緒でK市に向かった。


『電車で移動なんて久し振りですわね。』


『たまにはこういうのも良いですね。』


乗り換えは一度だけなので苦にならない。


電車は渡良瀬川の鉄橋を渡り、右に大きくカーブしてスピードを緩めK駅に到着した。


『これからどうされるのですか?』


『頼子さんが調べてくれた住所と電話番号があるので電話してみます。』


普通に歩くと駅から20分くらいの場所に祖父母の住まいはある様だが、車イスだし、タクシーは使えない。


スマホを出して番号を入力し、祖父母を呼び出す。


『もしもし……私、上田このみと申します……はい、康子の子です……今、Kの駅におります……同行している者が車イスなので……いえ、母ではなく、再婚する相手の子で姉になる人です……ファミレスですか?……5分くらい……分かりました……宜しくお願いします。』


通話の内容は麗にも遥にも分かった。


『信号を右に曲がって商店街のアーケードを真っ直ぐ行くとファミレスがあるのでそこで待ち合わせする事になりました。』


商店街といってもほとんどがシャッターを降ろして廃業している店ばかりだが、2つ目の信号の左側にファミレスはあった。


『こちらですね。』


『入りましょう。』


3人はドリンクを注文し、祖父母を待った。


『どんな方なんですか?』


遥が尋ねる。


『私もお会いした事がないの。』


このみの緊張で胸がどきどきしてくる。


『いらっしゃいませ。』


やって来た老夫婦は直ぐにこのみたちを見付けた。


このみは立ち上り、深々と頭を下げた。


『はじめまして。康子の娘、このみと申します。』


『失礼だが、うちの孫は男の子と聞いていたが……?』


このみが生まれた時の情報は知っている様だった。


『はい。私、男の子……[康太]として生まれましたが、今は女の子になるために治療を受けています。』


『もしかして、LGなんとかってやつなのか?』


『はい。中学を入学した時から女の子として生活しています。』


祖父母は二人とも目を大きく開けて驚いていた。


『座ったままのご挨拶で申し訳ございません。お爺さま、おばあさまもお座りになりませんか?』


麗は後ろで店員が待っているのに気付き、二人を席に着く様促した。


『取り乱して申し訳ない。私は上田育三郎、妻は幸代と申します。長年この地で織り物工場を営んでおります。』


育三郎はゆっくり自己紹介をした。

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