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突撃いずみちゃん

遥に連れられ、リビングに入ってきたいずみは緊張で顔が強張っていた。


『ここここんにちは…。』


『ごきげんよう、いずみさん。初めてじゃないですし、楽にして下さい。』


初めてではないと言っても知香やのぞみに連れられて来た時とは訳が違う。


『ここここのみさん、お着物すす素敵です……。』


以前は天真爛漫ないずみだったが、最上級生になりいろいろな面で大人になりつつある。


『凄いお荷物ですね。これは全部本ですか?』


いずみはスーツケースを転がして放課後自宅からやって来たのだ。


『本と着替えも持って来ました。』


昨日、いずみは麗からバスケットボールを教えてもらう代わりにライトノベルの本を貸す約束をした。


『昨日の今日で凄い行動力ね。』


『実は本は姉と一緒に所有しているので、昨日姉が帰ってきた時に話したらスーツケースを貸してくれたんです。今日も私が学校に行っている間にお貸しする本を選んで入れてくれまして、最初の予定よりだいぶ荷物が増えました。』


姉ののぞみも麗の頼みならばと快く協力してくれたらしい。


『本は重いからお疲れでしょう。お茶を飲んでゆっくりして下さい。』


康子に促され、ソファーに腰掛けた。


『あ、百人一首をしていたんですか?』


ようやくいずみも解れてきた様だ。


『いずみさんは百人一首をやった事はありますか?』


『いえ、ありませんがまんがを見て興味が出て、百人一首に関する本は読んだ事があります。』


映画にもなったあの作品だとこのみは思った。


『いずみさんもやってみますか?』


『はい。』


いずみは初めてとは思えない強さをこのみたちに見せ付けた。


『本である程度短歌は覚えていましたから。』


それだけでも全然違うのである。


夕方になり、麗が帰って来た。


『まあいずみさん、もう来て戴いたのですね。嬉しいですわ。それにこんなにたくさん本をお持ち戴いて。大変だったでしょう?』


『麗さんに読んで戴く事を考えたら全然平気です。姉も宜しくと言ってました。』


つい1・2年前くらいまでは自分の事を[いずみは…]と言っていたのに最上級生の自覚からか、たくさんの本を読んだ影響からか、小学生らしからぬ受け答えをするいずみである。


『麗お嬢さま、私はこれにて失礼致します。』


遥は帰宅時間となり、挨拶をして下がった。


外はだいぶ陽が暮れるのが早くなったので、照明灯に明かりを入れた。


麗といずみは練習着に着替えてコートに出た。


『明るいですね。』


照明灯は一基だが、麗が車イスバスケを始めるにあたり、従来庭にあったゴールの回りを3オン3が出来るくらいのコートに造り変え、そのコートを照らすには充分な明るさがある。


『麗お嬢さまは夢中になると時には深夜まで練習をしてしまうので困りますが……。』


麗は他人に努力している部分を見せないが、自宅での練習量は半端ではない。


『いずみさんはあまりお嬢さまに合わせてはいけませんよ。時間になったらご自宅までお送り致しますから。』


そう頼子が言ったが上西の仕事がまた増えた。


『ありがとうございます。』


『練習前の準備運動はしっかりやらないと怪我のもとですわ。バスケットボールは急に反転したり身体を伸ばしたりしますから。』


麗に言われ、入念に準備運動をする。


『いずみさんは身体は軟らかいですか?』


『それほどではないと思います。』


『でしたら柔軟体操をやって軟らかい身体をお作りなさいませ。どのようなスポーツでも身体が軟らかい方が怪我にも強く有利ですわ。』


麗の代わりに上西がいずみの柔軟体操を手伝う。


『痛い、痛い!』


『最初は痛いですが、身体が軟らかくなれば楽になりますわ。』


ようやく準備運動から開放され、パスの練習をする。


『チェストパスは全てにおいて基本になりますわ。ボールを持ってみて下さいな。』


いずみは両手でボールを持つ。


『それではいけませんわ。手のひらは空けてお持ち下さい。そのままスナップを効かせて。』


いずみから麗へボールが渡る。


『そうですわ。その感じでもう一度。』


麗は軽くドリブルをしたあといずみにボールを返したが、車イスからでもいずみより力強い。


基本のチェストパスだけでもコツが必要なのだ。


『今日はこれだけ覚えて下さいませ。』


野球で言えばキャッチボールだけの単純な練習であるが投げる毎にいずみの球は力強くなってきた。


自室で自習勉強をしていたこのみも夕食のために1階に降りてきた。


『ずっとパスの練習をされているのですか?』


『いずみちゃんはなかなか根性があるよ。ずっと黙って必死にパスを出している。少しでもダレたら麗さんは返すのを止めてしまうはずだからね。』


初心者のいずみに対してセンスがあるかよりどれだけ本気なのかを麗は知りたい様だ。


『いずみさん、今日はこれくらいにしましょう。基本から徹底して練習すればきっと良い選手になりますわよ。』


麗が人を誉めるのはめったにない。


『ありがとうございました。』


いずみは麗の本気に火を着けた様である。



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