ラノベと男の娘
まんが研究部は生徒会と文化祭実行委員会の依頼で文化祭のパンフレットの表紙イラストを担当したが、目玉のメイド喫茶対決を表紙にするためのモデルとしてこのみと萌絵が使われたのだ。
それとは別にシンデレラの劇の宣伝用に別刷りするため知香の似顔イラストも描かれている。
部員一人一人の個性ある似顔イラストが何枚も貼り出されている中で、表紙に使われた一年生の赤坂直樹のイラストは秀逸だった。
『これ、上手いですね。』
このみはイラストをまじまじと見て言った。
『ごめん、こうちゃんに言うの忘れてたけど、赤坂くん、私たちを主人公にしたまんが書いたの。』
知香は文化祭で発表する前にこのみがモデルになっている事を伝えると赤坂に言ったが、すっかり忘れていた。
『これですか?本当に知香さんと私ですね。』
原稿が1枚1枚掲示板に貼られて作品として読める様になっている。
『死んだ後に別の世界に違う身体で生まれ変わるというのは実際にあるのですか?』
ライトノベルなどは読んだ事がない麗が聞いた。
『あくまでも空想ですが、こういうのが流行っている様です。』
『私、最近よく読んでいますよ。』
姉ののぞみの影響で本を読むのが好きないずみは最近ラノベにハマっているらしい。
『いずみさんはこの様なお話がお好きなのですか?一度読ませて戴けますでしょうか?』
『麗さんが読むんですか?』
いずみは麗が世界中の名作文学を読むイメージしかなかったのでラノベに興味があるのに驚いた。
『ではバスケを教えて戴くお礼に何冊か持って行きます。』
名作文学どころか、ラノベすら読んだ事がないこのみはいずみが麗の心を掴んでしまった事に少し嫉妬した。
『いずみちゃんは人に懐くの得意だからね。』
このみの心中を察した知香がこのみを慰める。
『私、一度生徒会室に帰るけどいずみちゃんはどうする?』
『麗さんやこうちゃんたちと一緒に回って良い?』
『じゃあ昇降機の鍵はこうちゃんに預けるから。職員室にも言ってあるから使う時は回りの人に気を付けてね。』
知香はこのみに鍵を預け、生徒会室に戻っていった。
『お姉さま、遥さんの教室に行かれますか?』
『宜しいですわ。』
3人は遥のクラスである一年B組の教室に向かった。
一年B組の出し物では似顔絵を描いてもらえる様だが、描き手により上手い下手の差がある。
『いらっしゃい……麗お嬢さま?!』
遥も似顔絵を描いていた様だ。
『ごきげんよう、遥さん。ワタクシも描いて戴けるかしら?』
『滅相もございません!隣にプロみたいな絵師がおりますから!』
遥の隣にいたのは赤坂直樹だった。
『あなたが赤坂さんですね。先ほど知香さんの案内でまんが研究部の作品を見せて戴きました。』
このみに言われ、赤坂は焦った。
『写真の通りだ。上田さんの方から来てもらえるなんて!僕、二次元の男の娘とか好きでよく描いています。』
『私はまん研で見たから今日は遥さんに描いてもらいます。赤坂さんはお姉さまを描いて戴けますか?』
赤坂は麗を見た。
『これは……素晴らしい!気品あふれるお嬢さまだ!』
赤坂は直ぐに筆を取り、麗を描き始めた。
『遥さんはもともと絵心ありました?』
隣では遥がこのみの似顔絵を描いている。
『見守り隊ではよく描きましたよ。こう……このみお嬢さまの絵を。』
当時はこのみではなく康太だったが、大好きな康太をよく題材にしていた様である。
『このみお嬢さまになってからは初めて描きます。』
隣の赤坂ほどではないが、なかなか筆の運びがスムーズだ。
『お待たせ致しました。』
遥の描いたこのみの似顔絵は、上手いとはいえないが表情が豊かで好感が持てる仕上がりだった。
一方の赤坂が描いた麗はまん研で描いたイラストとは違う凛とした誇らしげなお嬢さまの特徴の出た絵である。
『この二つの絵は額に入れて家のリビングに飾ろうかしら?』
『はい、お姉さま。』
二人とも似顔絵を気に入った様だ。
『麗お嬢さまの絵はともかく、私が描いたこのみお嬢さまの絵はご勘弁下さい。』
遥が懇願する一方で、赤坂はもう筆を握り、今度はいずみの似顔を描いている。
いずみの絵は麗とは違いメガネを強調した可愛いまんがイラストの似顔であった。
『なんか可愛い~!』
これはこれで、いずみも気に入っている。
『いろいろなパターンがあるのですね。』
写真の様な模写からギャグまんがに登場する2頭身のキャラクターまでなんでも描ける。
『得意なのは男の娘なんですけど美少女も好きです。』
『おとこのこ……ですか?』
『お姉さま、[おとこのむすめ]と書いて[おとこのこ]と読むのです。……私や知香さんの様な人の事をそう呼ぶのです。』
麗はこのみの解説でようやく理解出来た。
『いずみさん。いずみさんのお持ちになっているライトノベルに男の娘が出ている作品はございますでしょうか?』
『たくさんありますよ。私もチカねぇやこうちゃんを見てきているからついそういうの買って読んじゃうの。』
『でしたら最初は男の娘が主人公のライトノベルをお持ち戴けますでしょうか?』
麗は男の娘とラノベに興味津々だった。




