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お父さまといっしょ②

このみは交代時間となり控え室で制服に着替え戻ってきた。


『お父さま、お母さま、お待たせ致しました。』


『ほう。セーラー服もなかなかだな。』


源一郎がこのみのセーラー服姿を見る事はほとんどない。


『それではみなさん、宜しくお願い致します。』


このみたちが教室を出ていくとクラスメイトたちは目を丸くしていた。


『やっぱりお嬢さまになっちゃったんだね。』


『うん、俺たちと全然違う。』


このみは3人を連れて廊下を歩くが貫禄がある源一郎や背の高いリカルドがいるので注目を浴びる。


『今井さんだよね。』


『新しい奥さんもらったのかしら。』


街の名士で麗が在学していた一昨年はPTA会長でもあった源一郎を知っている父兄も多いが、一緒に歩く康子に関しては知る人はほとんどいない。


まして知香と並ぶ同一性障害の生徒として知られるこのみがなぜ源一郎を案内しているのか理解出来る訳がなかった。


『お父さまとお母さまがご一緒にお出掛けされるのは珍しいですね。』


『うむ。来年の春からは正式にこのみの父兄になるし沢田さんにも挨拶しないといけないからな。』


校長の沢田も源一郎には一目置いている様だ。


『このみ。三年C組を見てみたいが良いか?』


メイド喫茶対決の相手である三年C組に行きたいという源一郎の真意がよく分からないこのみだが、個人的には敵情視察はしたいと思っていた。


『お父さまはメイド喫茶対決の事をご存知なのですか?』


『うむ。パンフレットも見たが、康子さんからも話を聞いているからな。なんでも萌絵くんがクラス全員のメイド服を作ったそうじゃないか?』


『旦那さまは知香さんと萌絵さんの関係も麗さんから聞いて知っている様ですよ。』


情報集めは政治家の得意分野であるが、自分の娘たちの友人の情報まで得ているとは恐れ入る。


階段を上がり、4人は三年C組の教室に入った。


『いらっしゃいませ。』


声を掛けたのは三年C組の学級委員で知香の友人でもある水尾ありさだった。


ありさは黄色のメイド服を着ている。


『あら、このみちゃん。敵の様子見に来たの?』


『ありささん、それもありますがお父さまが来たいとおっしゃったのです。』


『お父さまって……。麗さんのお父さんがこのみちゃんの?』


ありさはこのみが麗の家でメイドをしていた事は知っているが、源一郎と康子の再婚話までは知らなかった。


『はい、来年の春、お父さまとお母さまが再婚されると私も正式に今井家に入りますが既に一緒に暮らしています。』


『そうか~。良かったね、このみちゃん。それにしてもともち、肝心な事言わないなぁ。』


知香の友人たちはこのみが苦労してバイトしていたのを知っているのでみんな気に掛けていたのだ。


『このみちゃん、いらっしゃい。』


紫のメイド服を着た八木萌絵と水色のメイド姿の菊池奈々もやって来た。


『ほう、こちらはカラフルだな。萌絵くんと奈々くんの二人だけでクラス全員の分を作って大変だったろう。』


二年C組の落ち着いた雰囲気と違い、ポップな雰囲気である。


『……ありがとうございます……。』


『なんで私たちが作った事を知っているんですか?』


『このみの前で言いたくないが、私の娘になる前にいろいろ調べさせてもらったのだよ。もっとも半分は知香くん絡みになってしまったがね。』


このみは源一郎には隠し事も出来ないと恐れた。


『アンケートにどちらのメイド喫茶が良いかという項目があるが、甲乙付けがたいな。』


『あら、贔屓目にこのみさんのクラスという訳ではないのですか?』


康子はイーブンなら自分の娘に入れるだろうと不思議に思う。


『身内に贔屓をするのは簡単だが私はいつもまず自分の目を信じて判断をしているのだよ。政治家をやっていると党だ派閥だと面倒だが、最後は自分が正しいと思った方向に行かなければ後悔する。』


自分を曲げる事が大嫌いな麗も源一郎に似たのだろうし、二人が知香の事を気に入っている理由がこのみには分かってきた。


(今井家じゃ私みたいなぶれぶれな性格ではいけないんだろうな。)


源一郎の娘になるのは簡単な事ではないとこのみは思った。


『私はこのみさんやクラスの子が頑張っているのを見てきたから萌絵さんたちには悪いけれど二年C組に入れるわ。』


康子は萌絵や奈々の前ではっきり言った。



三年C組の教室を出て、階段に向かうと車イス用の昇降機が目に付いた。


『麗は毎日これに乗っていたのだな。』


PTA会長だった頃は玄関から校長室や会議室に直接行き来しただけで主に生徒が使うこの階段に来る事はなかった。


『はい。知香さんが毎日これを操作していたとお話されていました。』


最初、普通の生徒は昇降機の使用を認められていなかったが、知香だけは操作が認められ、後に麗のクラスメイトも認められた。


『そうだ、明日は麗たちも来ると言っていたぞ。』


『お姉さまが来られるのですか?』


麗は中学を卒業して初めての来校である。


『このみもだが知香くんのシンデレラが観たいそうだ。』


このみのメイド姿はずっと見てきたからどちらかといえば知香の方だろう。


それでも中学では入れ違いだった麗と一緒に文化祭を楽しめると思うとこのみの胸が踊るのだった。



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