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お屋敷への招待

今井家のメイド服を借りるため、このみのクラスの学級委員である村田義人、古谷美奈、それに生徒会書記の佐藤しおりが今井家に行く事になった。


『頼子さん。』


『このみお嬢さま、お呼びでしょうか?』


頼子はこのみがメイドだった頃は上司でありこのみを厳しく指導する鬼教官であった。


しかし、立場が逆転し、お嬢さまと使用人という関係になっても感情を出したりはしない。


それは全て大元の雇用主である源一郎の命令だからであり、頼子自身、このみを認めているからである。


『今度文化祭で私のクラスがメイド喫茶をやる事になりましたの。そこで家にあるメイド服をお貸ししたいのです。』


中学の文化祭といえば2年前に麗が自宅にある複数の車イスを貸し出した事もあった。


うちはイベントレンタルの業者ではないと思いながら、お嬢さまのお願いを却下する事は出来ない。


『かしこまりました。』


頼子は真面目で立場が変わっても以前と同じ様に慕ってくれるこのみの事は大好きだが、姉の麗やこのみが慕う知香の影響で突然突拍子もない事を言う様になってきたこのみを不安に思う。


『このみさんもメイド服を着られるのですか?』


二人の話を聞いていた康子が尋ねる。


『はい。クラスの生徒全員が着なくてはならないのです。』


仕方なく着ると言うこのみに康子と頼子が笑う。


このみがメイド服を着て仕事をしたいというオーラが出ずっぱりだったからだ。


『私もこのみさんのメイド姿、見てみたいわ。』


康子はこのみのメイド姿を写真でしか見た事がなかった。


『私はいつまでもこのみお嬢さまが以前のご自身に未練がましくするのは良いとは思えません。ですが……。』


頼子の目はふたりを鋭く捉える。


『このみお嬢さまのメイド姿はとても可愛く、奥さまにもお見せしたく存じます。お嬢さまには自覚を持って戴けなければならないので文化祭が最後の機会になると思います。奥さまの目にも焼き付けて戴ければ幸いです。』



クラスメイトたちが今井家に来るのは日曜日となった。


村田ら3人が今井家にやって来ると先ずは1年下の遥の応対に驚いた。


メイド姿の遥が村田たちを出迎えた。


『このみお嬢さまのお友だちでいらっしゃいますね。お待たせ致しました。どうぞこちらへ。』


『あれ、一年の西山だよな?』


『あれが上田さんの言っていたメイド服みたいね。』


遥のメイド服は、安物のコスプレ衣装とは明らかに違うしっかりした生地と作りであった。


3人はリビングに案内され、ソファーに座ってこのみを待った。


『みなさん、お待たせ致しました。』


『おーっ!』


このみは、今はこの家で着る事が禁止されているメイド服を着て3人の前に現れた。


『これが上田のメイド……。』


メイド時代に培ったおもてなしの姿勢にお嬢さまの要素が加わったこのみは気品に溢れていた。


『ごきげんよう、いらっしゃいませ。』


ごきげんようという挨拶は初めて聞いた。


このみが3人にお茶を淹れ、それを後ろで遥が見ている。


(お嬢さまのメイドのお姿、なんて美しいの?)


遥には真似が出来ない気品のある動きである。


『こちらがこの家で使用しているメイド服のひとつなのですが、実はこちらは特別なお客さまをお迎えした時のものなのです。普段用はそこにおります遥が着ているものになります。』


確かに見ると遥のスカート丈はミディであり、このみは足まで隠れたロングだ。


素材も全く違う特別仕様のメイド服を狭い教室で着たら直ぐに汚れてしまいそうだ。


『遥さんの着ているもので宜しければご用意致します。如何でしょうか?』


『如何もなにも、西山さんが着ている服でもド◯キで売っている様なのとは比べものにならないわ。』


『どうせならメイド喫茶自体も高級志向にしてみませんか?』


このみが提案した。


『遥さん、お願い。』


遥がワゴンを転がしてきた。


『なにこれ?』


ワゴンには高そうなカップやグラスが並んでいる。


『これは以前に家で使っていた食器なのですが、割れてセットでお出し出来なくなったものの残った方です。2日間大切に扱ってくれればお出し致しますが。』


『ハードル高いな。』


村田が考えこんだ。


『でもどうせやるなら徹底的に凝った方が良いんじゃない?』


しおりは生徒会の執行部で学校全体を見て審査をする立場でもあるので、ただのメイド喫茶より付加価値のある方が有利だと思っていた。


『分かりました。せっかくだし、高級メイド喫茶で売り出しましょう。上田さんに動作を見てもらえるし。』


『うん、みんなを指導するメイド長としてね。上田さんはその特別仕様のメイド服を着て端っこで目を光らせてくれるだけで良いから。』


『えー、私お給仕させてもらえないんですかぁ?』


このみが急に普段の言葉に戻った。


『お嬢さまを働かせるなんてそんな事出来ないわよ。』


せっかく最後のメイド服を着られると思ったのに、ここでもお嬢さま扱いされると言われてこのみは落ち込んでしまった。




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