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やっぱりメイドが好き!

『改めておはようございます。提出物を出す前に、上田さんから報告があるので聞いて下さい。』


始業式が終わり、このみは田口先生から指名された。


(別にわざわざ発表しなくても良いんだけどなぁ。)


このみはそう思いながら教壇に上がる。


『おはようございます。』


このみが挨拶すると、教室がざわざわし始めた。


『報告って性転換の手術したのか?』


『ずいぶん雰囲気変わってきれいになったよね。』


『やっぱり男に戻りますってか?』


そんな声が聞こえてきた。


『実は私の母が再婚をする事になり、夏休みに引っ越しをしました。』


このみの身体の事かと期待した生徒たちから残念がる声が聞こえてきた。


『上田さんじゃなくなるの?』


『はい。もう新しい父と一緒に生活をしていますが、入籍はまだ先なので今のところは上田のままです。三年生になったら今井姓に変わる予定です。』


このみが今井と言ったところで、気付いた生徒もいた。


『今井って上田さんがメイドさんやっているお家?』


『そこの子になるって上田さんお嬢さまになるの?』


麗はこのみたちの学年とは入れ違いで卒業したが、麗のお嬢さま伝説はよく知られている。


『二年生のうちは上田このみとして通いますので引き続きお願い致します。』


(改まって言うと恥ずかしいな。)


そう思いながらこのみは席に着いた。


宿題などを提出し終わり、田口先生から進行を学級委員の村田義人と古谷美奈にバトンタッチされた。


『今年の体育祭の種目と文化祭の出し物に付いて決めていきたいと思います。』


体育祭の二年生の団体種目はムカデ競争で、個人種目ではこのみは100メートル走と決まった。


『次に文化祭の出し物ですけど、是非これをやりたいと思う人はいますか?』


村田が言ってもなかなか手が挙がらない。


『はい。』


痺れを切らしたこのみが手を挙げた。


『上田さん、どうぞ。』


『ありきたりですけど、メイド喫茶をやりたいと思います。』


このみの発言にクラス中がざわめいた。


何しろ、このみは1学期まで本物のメイドとして働いていたのである。


『他にどなたか提案はありますか?』


結局、このみ以外に誰も手を挙げる者はいなかった。


『それではメイド喫茶に決定します。衣装の調達に付いてですが、メイド服が家にあるという方、いますか?』


最近は雑貨店でコスプレ用に安く売っているので持っている生徒もいるはずだが、なければ別の手段でかき集めなければならない。


『はい。』


さすがに男子生徒の手は挙がらなかったがこのみ以外に5人の女子生徒の手が挙がった。


『服飾部の沢口さん、服飾部で作ったりしていませんか?』


服飾部ならメイド服を作る部員も多いかもしれない。


『先輩が夏休みから作っているみたいなんですけどちょっと……。』


沢口実花の返事はなぜか歯切れが悪かった。


ローテーションを組んで交代で着替えるにしてもクラスの3分の1くらいの数はほしいが、服飾部に頼めないと調達は難しい。


『すみません。』


再びこのみが手を挙げた。


『上田さん、どうぞ。』


『うちにサイズ違いで10着はありますけど。』


このみの自分の分以外に今西夫妻の結婚式の時に三年生たちが着たメイド服が自宅に保管されている。


これで最低枚数は確保出来た。


『では男子女子全員が一度はメイド服を着る事。女装が病み付きになった男子は上田か白杉さんに相談!』


一方的に村田が決を取る。


『村田がハマるんじゃねぇの?』


『バカやろ!俺は男・村田だ!』


これで文化祭の出し物は決まった。



『ねぇ上田さん。上田さんはずっとメイドやってたんでしょ?今さらって思わなかったの?』


小学校の頃からこのみをよく知る安田真理が聞いた。


毎日ではなかったがこのみは1年以上ずっとメイドの仕事をしていた。


『私、仕事前にメイド服を着ると凄くやる気が出てね、今日もお仕事頑張るぞっていつも思っていたんだけど、突然お母さんの再婚話が決まっちゃって家では2度と着れなくなっちゃったの。』


このみにとってメイド服は戦闘服でもあったのだ。


『それだけだったら隠れて着ちゃっても良いんじゃないの?』


お嬢さまだろうがなんだろうが着たい服を着たい時に着れば良いというのが真理の意見だ。


『ううん。けじめは大事だからね。遊びじゃなくて学校行事ならぎりぎり許せるかなって思ったの。みんなには押し付けみたいになっちゃうけど私的にはメイド服のお別れの儀式かな?』


メイド服が戦闘服である以上、中途半端なコスプレ感覚で着たくないというのがこのみのポリシーだった。


『ふ~ん。上田さん、本当にメイドのお仕事好きだったんだね。』


真理は飽きれながらも納得してくれた。


『うん。お仕事もメイド服も大好き。』


『これからはお嬢さまだからメイド服を着れないんでしょ?じゃあお嬢さま代わってあげよっか?』


『それは無理~。』


このみにとって文化祭が最後のメイド姿になる。



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