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オロチ綺譚

旅人綺譚

作者: かなこ

シリーズ物です。上部「オロチ綺譚」より1作目「巡礼綺譚」からお読み戴けるとよりわかりやすいかと思います。

「あれ? スイリスタルへ向かうんじゃなかったの?」

 菊池は手元のモニタから顔を上げ、キャプテンシートの南を見上げた。

「ヤマブキ星に寄ってからな」

 返答した主は正面のモニタを見つめたままうなずいた。一面の闇にいくつもの小さな光が瞬いている光景は、金を出しても惜しくないと思うほど美しい。

「イザヨイ星で手に入れたものをヤマブキ星のオークションにかけて多少運用する。でないとフェイクフィルタの購入資金にならん」

 ああそうかと呟いて、菊池は再び手元のモニタに視線を落とした。3Dの座標軸には現在地と近隣の惑星が表示されている。北斗の操行にまず間違いはないが、時々暴力的な重力を発している惑星に急に引きずり込まれる事があるので、周辺のモニタリングは欠かせない。自動解析はもちろんなされるが、データインプットの指示は手動になっている。

「オークションって、宵待は初めてだろ?」

 ちょうど背中合わせの位置にある宵待のシートへ、菊池は振り向いた。

「わけわかんない変なものとか売られてて面白いよ」

 くったくなく笑う菊池に、宵待は曖昧な笑みを返した。それをちらりと視界の端に入れて、南は小さくため息をつく。

「宵待は連れて行かんぞ、菊池」

「え? どうして?」

 きょとんとする菊池に、馬鹿だなぁと呟いたのは柊だった。

「宵待がオボロヅキ人だって忘れてんじゃねえよ、朱己。捕まってオークションにかけられたらどうするんだよ」

 あ、と呟いて、菊池はうつむいた。

「……ごめん、宵待、俺」

「いいよ」

 宵待は苦笑した。それだけ菊池が宵待の出自を気にしていないという事だろう。珍種扱いされないのは、ある意味宵待にとってはありがたい事だった。

「せやけど、オロチに宵待が乗っとんのは広く知られとる事実やろ。大丈夫なん?」

 キャプテンシートのやや後方に設置されたシートから、笹鳴が振り返る。

「あそこのオークションには海賊も来るで。1人で残すんは不安やわ」

「あ、俺が残るよ」

「あんたじゃ役に立たないでしょ」

 オートパイロットとなっていても操縦席を離れられない習性の北斗が、ぶっきらぼうに呟いた。

「何だと? 北斗!」

「そういう事は近距離の敵をやっつけられるようになってから言うんだね」

 痛いところを突かれて、菊池は悔しげに黙り込んだ。菊池の技は対戦艦のものだ。銃を持った海賊が目の前に現れたらどうしようもない。

「俺が残るよ」

 柊が副操縦シートの上で挙手した。

「接近戦なら俺も訓練受けてるからな」

「UNIONの訓練?」

 北斗に鼻で笑われて、柊はぎろりと隣のシートを睨みつけた。

「あぁ? 喧嘩売ってんのか軍人崩れが」

「俺とやり合おうなんて100年早いよ」

 がるるると見えない牙をむき出す2人に、いつものようにまた菊池が仲裁に入る。

「もう、2人ともくだらない喧嘩すんなよ。今イザヨイ星でもらった美味しいお茶を煎れて来るから、機嫌直せよ」

 菊池がシートを離れたのを見送って、南はヤマブキ星への進路を北斗に指示した。

「オロチに残る宵待や俺はいいとして、船長達こそ大丈夫か? 最近はヤマブキ星のオークションでも非合法な薬が手に入るって話だぜ」

「ああ、『惚れ薬』なんかやろ」

「惚れ薬?」

 宵待は思わず振り向いた。宇宙には宵待の知らない事が多すぎる。

「せや。何でも飲ませた相手が意のままになるそうやで」

「胡散臭すぎ」

 笹鳴はうなる北斗に苦笑した。

「まぁ、俺が見るとこせいぜい催淫剤か幻覚剤やと思うけどな。他にも脳の動きを一時的に活性化させる薬や、視力を数十倍にも高めるものもあるらしいで」

「パイロット試験で悪用できそう」

「そんな危険な場所なのか? 大丈夫か?」

 不安げに尋ねる宵待に、北斗は不遜な視線を向けた。

「俺がついていくから心配ないよ」

 生意気な自信をたたえた目に、宵待は小さく笑った。



 惑星ヤマブキに到着後、宵待と柊をオロチに残し、他のクルー達は格納庫から地上用の荷物運搬車にイザヨイ星の装飾品を積み込んでオークション会場へ出かけて行った。

 残された宵待がたまには菊池の代わりに食事の準備でもしようかと考えていると、柊が普段はあまり使っているのを見かけないスイッチを入れるのが見えた。

「柊、今のスイッチは?」

「あ? ああ、ステルス機能のスイッチだよ」

 柊は自分のシートで大きく伸びをした。

「この惑星じゃわざわざ位置を知らせる必要はねぇからな」

 何気ないように言ったが、宵待はそれが自分のせいだとわかった。

 ここには海賊も来ると言っていた。オロチ固有の証明電波を発すれば、それに乗っている自分の存在も吹聴する事になる。

「……悪いな、柊」

「何が?」

「俺のせいで、色々面倒な手間をかけさせて」

 柊は胡乱な視線を宵待に向けて立ち上がり、菊池が出かけがてらワゴンに用意していったコーヒーに手を伸ばした。

「別にお前の為だけってわけじゃねぇよ」

 砂糖を入れてカップをかき回し、茶菓子を口に放り込む。イザヨイ星のヒバリから分けてもらったドライフルーツだ。

「俺の為でもあんだよ」

 怪訝そうに顔を上げる宵待に、柊はぼりぼりと頭を掻いた。

「そうだなぁ……宵待はヤマブキ星についてどこまで知ってる?」

「全然。この間初めて名前を聞いた」

 そっか、と柊はコーヒーをすすった。

「何から話せばいいかな……。ヤマブキ星ってのは、今はもう寂れた辺境の惑星なんだ」

 飲む? と聞かれたので、宵待は小さくうなずいた。

「昔はにぎやかだったみたいだけどな。今はご覧の通り人口も激減して衰退甚だしいほぼ更地の荒涼とした星だ。産出できるものもナンもねぇからUNIONも寄り付かねぇ」

「UNIONの管轄外惑星って事?」

「ああ」

 柊はコーヒーを注いだカップを宵待に差し出した。

「なもんだから、ここにはUNION加盟の貿易船はまず来ない。UNIONに似たような総括組織に加盟している連中ですら来ない。オークションに参加するのは俺達みたいなフリートレイダーか……海賊だ」

 カップは持ったものの口をつけずにじっと自分の話を真剣に聞いている宵待に、柊は困ったように眉を寄せた。

「だからこそ掘り出し物もあったりするんだけどな。つまり、ここに来るのはUNIONが大嫌いな連中ばかりだって事さ。そんなところに元UNIONの俺がのこのこと行けねぇだろ?」

 宵待は小さく笑ってやっとカップを口に運んだ。香ばしい芳醇な香りが鼻腔にまで広がる。このコーヒーの味も宵待はオロチの乗るようになって初めて知った。オボロヅキ星の薄暗い洞窟には、そんなものは存在しなかった。

「船長達がオークションに顔を出せば知ってる奴には俺やお前がここにいる事は嫌でもバレちまうだろうけど、ステルス機能でカモフラージュしておけば、最悪、襲撃される事はねぇだろ」

 また茶菓子を口に放り込んで、柊はコーヒーをすすった。

「UNIONってそんなに嫌われてるのか?」

「そりゃあもう。税金高ぇし、規制厳しいし、偉っそうだし、やり口が汚ぇからな」

「それが嫌でUNIONを辞めたのかい?」

 柊はちらりと宵待を見、さぁねと呟いてはぐらかした。言いたくないような事があったのだろうと、宵待はそれ以上聞かなかった。

「でも、俺は柊がUNIONを辞めてくれてよかったよ。こうして一緒の船に乗れたからね」

 柊は、ちょっとだけ笑った。



「相変わらず柄の悪い場所やな」

 笹鳴は周囲を見回して眉を寄せた。無法者特有のすさみと重い年季の匂いが鼻につく。

「仕方ないだろう。エルフの商品は目立って商売する訳にいかないからな」

 南の言葉に笹鳴が小さく肩をすくめた。エルフの居住地を知られる訳にはいかない。ゆえにUNIONの息がかかった場所でおおっぴらに商売はできないのだ。

「よぉ、南」

 不意に名前を呼ばれて振り向くと、そこには短髪で人の好さそうな若い男が立っていた。しかしその無邪気な笑顔とは対照的に、荒っぽい崩れた格好をしている。

「……ユスラゴか」

「おっと、そんなに警戒すんなよ」

 ユスラゴは笑って、長いマントの下の銃をかちゃりと鳴らした。

「言っておくが、お前達が他の連中に追っかけられた時、俺は手ぇ出してないぜ」

「どうだかな」

 渋い顔をする南に、ユスラゴはにやりと笑った。

 ユスラゴは海賊だった。それもUNIONからかなり目の敵にされている巨大海賊の幹部だ。

「金欲しさに友達売るような真似はしねぇよ、安心しな。それに」

 ユスラゴは突然、菊池を引き寄せて抱き込んだ。

「うわぁ!」

「どうせなら俺はこっちの方が欲しいぜ」

「やめんか、ユスラゴ」

 ユスラゴの腕を弾いて、笹鳴は菊池を取り戻した。

「朱己がおらんようになったら、俺ら栄養失調で死んでまうやろ」

「ほんっとうらやましいぜ。俺もあの飯は是非もう1度食いてぇよ」

 ユスラゴは豪快に笑い、菊池の顔を覗き込んだ。

「うちはいつでも歓迎するぜ。オロチに飽きたらこっちに来な」

「……飽きないから」

 上目遣いで睨んで来る菊池にまた笑って、ユスラゴは南を見た。

「つか、どうして俺達にヘルプ出さなかったんだ? 俺がお前らからオボロヅキ人を奪うとでも思ったのか?」

 不満そうな表情を作るユスラゴに、南は渋い表情のまま睨み返した。

「あのな。お前が俺らをかばったら、俺らは海賊の一味だと疑われるし、お前は他の海賊どもを敵に回すし、何もいい事はないだろう」

「そんな面倒くせぇ理屈はいいよ。困ってる時に助けンのがダチだろ?」

 南は仕方ないというように笑った。ユスラゴは肩書きで友人を選ばない。気に入った相手には懐が深い人物だ。だから南は海賊であるにも関わらずユスラゴが嫌いになれなかった。

「まぁ、本当に困った時は頼むよ、ユスラゴ」

「任せとけ」

 ユスラゴは、海賊には見えない天真爛漫な笑顔を作った。


 オークション手続きを済ませ、南達オロチクルーは客席に腰掛けた。これからステージでオークションが始まる。

 UNIONが主催するような通常のオークションであれば、正面にあるのはステージではなくモニタであり、客席には競り落とす金額を入力するボードが配られるが、ここは無法者達ばかりが集まるオークションなのでそんな上品な真似はしない。実際の商品をステージに上げ、競り落とす方は声を張り上げる。大きな商品に関してはステージに上げられないので運営人が仕様を読み上げるのだが、これはモノを見ずに値段を付けるので、産地から輸送者、輸送時間、さばける市場を持っているかどうかという読みも必要になる。残念ながらその勘は北斗や菊池にはないので、もっぱら南と笹鳴が請け負っていた。

「ねぇ船長、ユスラゴがいるって事はさ……」

 菊池の隣で南は両腕を組んだ。

「そうだな。略奪して来た金品も出るって事だろうな」

 南とは菊池を挟んだ席で、北斗は帽子を目深くかぶり直した。元軍人としては、柊ほどではないにせよあまりこういうところで顔を見られたくはない。

「でもまぁ、ここは闇オークション言うほどえげつない場所ちゃうしな。人間が売られたりはせぇへんさかい、安心しぃ」

 笹鳴にそう言われて、菊池は少しだけほっとした。南は人身売買が好きじゃない。その影響を強く受けている菊池も、当然好きではなかった。

 材木に毛皮、鉱石や宝石に続いて、オロチの出品したエルフの装飾品もステージで紹介された。アクセサリーを1つ1つ売るような真似はせず全部まとめての出品になるので、あまり流通量の多くないエルフの商品はそこそこいい値段で取引され、南は胸を撫で下ろした。これで別な商品を購入して運用すれば、フェイクフィルタの一括購入は無理でも頭金くらいにはなりそうだ。

 そのうちユスラゴが出品したと思われるものも紹介され、オロチのクルー達は思わず声を飲み込んだ。

 衣類や装飾品の中に、惑星ヨナガの紋章が描かれたものがあったからだ。追放された皇院や国王達は、ユスラゴのいる海賊に襲われたのだろう。

「やっぱ天罰だね……」

 北斗が小さくそうこぼし、他のクルー達はため息を吐いた。投獄された挙げ句に殺されそうになった身としては、同情する気になれない。

 競り落とされた商品の引き渡しに立ち会い、金を受け取ってからようやく、オロチクルー達はほっとした。後ろ暗い商売をしているつもりはないが、仕入れた惑星についてとやかく聞かれるのは本気で困る。

 オークション会場もお開きになったようで、三々五々客達が吐き出されて行き、南達も駐車場へ戻ろうとしたその時、菊池はオークションサイドの従業員が地面へ何かを放り出したのを見かけた。半透明のぽよんとしたものだった。気のせいか鳴いたような気もする。

「ったく、タバコ代くらいにはなるかと思って引き取ったが、誰も買いやしねぇ」

「……きゅう……っ!」

 菊池の全身に雷が落ちたかのような衝撃が走った。

 小さな青っぽい半透明の身体に、ふにゃふにゃと柔らかそうな触手がいくつも生えて、よたよたと動く様子がたまらないほど可愛らしい。そして何よりあのつぶらな瞳。

 一目惚れだった。

「あ、あの、すみません!」

 菊池はとことことその従業員に近づき、半透明の物体を拾い上げた。

「俺、タバコ代出します。だから、この子ください」

 従業員の目に途端に狡猾そうな光が宿った。

「冗談だよ。こいつを捨てようなんて本気で思った訳じゃない」

 従業員は菊池から半透明の生物を奪い取った。

「じゃあいくらなら、その子くれます?」

 金づるだと確信した従業員が値段をつり上げようとしたその時、菊池の服の端を北斗が掴んだ。

「何やってんの。行くよ」

「え、でも、ちょっと待って」

「待たない。くだらないもの仕入れてんじゃないよ。船長に怒られるでしょ」

 北斗の力にかなうはずもなく、菊池は抵抗もむなしくずるずると引きずられ、従業員はここで逃がすとタバコ代にもならないと慌てて菊池を追いかけた。

「ま、まぁ、いいよ、安く譲るよ」

 従業員が示したタバコ2つ分の金額を、菊池はポケットから取り出して渡した。


「あんた、貿易船の乗組員だって自覚がないんじゃない? あんな馬鹿正直に交渉したら値段をつり上げられるに決まってるでしょ」

 大事そうに半透明の生物を抱きかかえる菊池に、北斗は冷ややかな視線を向けた。

「え? じゃあ北斗は、本当にこの子を買うのが反対だった訳じゃないんだ?」

「駆け引きだよ駆け引き。馬鹿じゃないの」

 馬鹿と言われて菊池はしょんぼりとしたが、すぐに顔を上げた。

「ありがとうな、北斗。助けてくれて」

「……船長の説得は自分でやってよね」

 ぶっきらぼうにそう言って先にさっさと歩いて行く北斗の背中に、菊池は心の中でもう1度礼を告げた。

「……朱己、なんやねん、それ」

「可愛いだろ?」

 満面の笑みを浮かべる菊池に、笹鳴は脱力したように額をおさえた。

「まぁ……可愛い言えへん事もないけど、どないすんねん」

「俺が飼う。船長には俺の食料を半分こにするからって言うよ」

 ああそう、と笹鳴はため息を吐いた。こうなったらもうダメだ。菊池のこの笑顔には、何を言っても通じない。

「船長ー!」

 南の背中を追いかける菊池を見やって、笹鳴は北斗を見下ろした。

「自分、なんで止めへんかったんや」

「あんただったら止めた?」

 笹鳴は視線をそらせた。多分、止められなかっただろう。

「まぁええわ。朱己の事やから面倒は見るやろ。見たとこそう凶暴そうな生き物でもなさそうやしな。せやけどアレ、ほんまになんやねん? 地球のクラゲっちゅー生物に似とるようやけど」

「クラゲは陸上で生息できないっスよ」

 前方で「ちゃんと面倒見るんだぞ」と言う南に勢いよくうなずく菊池を見て、笹鳴と北斗は同時にため息を吐いた。

 今更ペットの1匹くらい増えたところで問題はないが、この調子で気の毒なペットを引き取っていては破産する。

 その時、ふと北斗が視線を鋭くして歩を早めた。

「……どないしてん、北斗」

 北斗は答えず、南と菊池に並んだ。笹鳴も黙ってそれに倣う。

「……船長。さっきオークションで買った植物の絞り汁、何?」

「北斗……お前は香水という言葉を知らんのか?」

 呆れて北斗に視線を向けた南は、硬質化した北斗の雰囲気に表情を緊張させた。

「……何人だ?」

「3人」

 北斗はポケットから手を出した。いつでも銃が抜けるようホルスター近くでぶらつかせる。笹鳴もさりげなくふところ近くに手を伸ばす。菊池は緊張して腕の中の生物を抱きしめた。周囲には弾避けにできそうな遮蔽物はろくにない。

「北斗」

「合図したら右にある岩まで走って」

 南は小さくうなずいた。こういう修羅場は北斗に任せる事にしている。

「走って!」

 南が菊池を庇って走り出し、北斗は振り向きざまレーザーガンの引き金を引いた。笹鳴も銃を構えたまま岩まで走る。

 決着は数発でついた。

「お見事」

 口笛を吹く笹鳴を北斗は睨んだ。これくらいで褒められるのは北斗の矜持が許さないからだ。

「何者……?」

 菊池は5メートルの距離を置いて恐る恐る倒れた男達を観察した。ゴーグルに仕込まれた照準機はかなり値の張るものに見て取れる。

「わからんが……貿易屋じゃないな。見てみろ」

 南があごでしゃくった先を見ると、北斗の撃ったレーザーで穴の空いた非合法の改造銃が転がっていた。高圧液体弾丸を使用したもので、被弾しなくとも半径3メートル以内で炸裂すれば呼吸器や皮膚を通して毒が体内に取り込まれ死亡し、かすっただけでも即死する。

「ちょっと前の戦争で使われてた大量生産された旧式の銃みたいだけど……海賊?」

 菊池は息を呑んだ。

「違う」

 きっぱりと答えたのは北斗だった。視線に鋭さが増す。

「船長、香水はもう車に積んであるんだよね?」

「ああ。急いでオロチに戻ろう」

 南達は自分達の車まで走った。


 記憶を頼りに高性能のステルス機能で完全に目隠しされたオロチまでたどり着くと、南はすぐに柊と宵待を呼び出して香水の積み込みにかかった。全部で100トンあるので最低でも30分はかかる。宵待は機内からすぐにコンベアを稼働させた。

「柊、すぐに飛び立てるよう準備しろ。笹鳴、液体運搬用の圧縮機の用意。菊池は機内で荷の整理。俺が積み込んでいる間、北斗は周囲を警戒してくれ」

「了解」

 クルー達はすぐさま南の指示に従った。キロ単位でコンテナに入れられた香水を流れるような連携で次々と積み込んで行く。

 半分ほど積み込んだあたりで、北斗はうなじが焦げ付くような感覚に教われ、レーザーガンを構えた。

「両手を上げて出といで」

 北斗の冷たい声音に、コンテナにかかっていた南の手が硬直した。もう追っ手がやって来たのか。

「……そんなおっそろしいモノ向けないでくれないかなぁ」

 のんびりとした口調とひきつった笑顔で物陰から姿を現したのは、大きなナップザックを背負った男だった。

「……ホタル……か?」

 南はあっけに取られて男を見返した。旅慣れた服装とどこか育ちの良さを思わせる風貌には、確かに見覚えがある。

「お前どうして……里帰りか?」

「まぁ、そんなところ」

 ホタルは両手を上げたままハハハと乾いた笑い声を上げた後、上目遣いに北斗を見返した。

「ねぇ北斗君、俺の事覚えてるよね?」

「知らないけど」

「うそうそ! この間会った時にいいモノあげたじゃない!」

「いいモノなんかもらった覚えないよ」

 南はほっとして両肩を落とした。間違いなくホタルだ。

「北斗もういい。話は積み荷を手伝わせながらだ」

「ちょっと南! 手伝うの前提なの?」

「時間がないんだ、急げ」

 南は積み込みを再開した。



「エンジン全開! 上昇と同時にステルスオフ!」

「オートリフレクターセット」

「船体浮上秒読み入ります。10、9、8……」

 オロチはまるで逃げるように惑星ヤマブキを後にした。

 軍用機並みの出力であっという間に宇宙空間へ飛び出したので、通信波に気付いたとしてもとても追いつけないだろう。

 コースに乗ってオートパイロットをセットした後、柊は後頭部で両手を組んだ。

「船長、色々説明してくれると助かるんだけど」

 南は返事のようなうなり声を上げて顔を上げた。

「わからん。この香水を買ったら襲撃された。北斗が言うには海賊ではないみたいだが、ステルスで目くらましをかけてなきゃ船まで突き止められるところだった」

「香水? 襲撃?」

 柊はシートから振り返って南を見上げた。

「どこの香水を買ったんスか」

「レンカ星のだ。クラウンリベンザという名前の花からとったものだそうだ」

「クラウンリベンザぁ?」

 声を上げた方へ、クルー全員が一斉に視線を向けた。

「船長……どうしてこいつが乗ってんの?」

「まぁ、成り行きというか……」

 南が視線を空中へ飛ばしたのを見て、ホタルはまたハハハと乾いた声を上げた。

「まぁそんな怖い顔しないで。久しぶりだね、柊君」

「別に見たい顔じゃねぇっスよ」

 柊に睨まれて、ホタルはまた笑った。

「そう邪険にしないでよ。乗車賃は払うからさ。……おや」

 ホタルに無遠慮に見つめられ、宵待は思わず上半身を引いた。瞳には好奇心が満々とたたえられている。

 やがてホタルはため息を吐いた。

「ったく、お前は顔でクルーを選んでるんじゃないの? 南くーん」

「そんな事より」

 背後から笹鳴が片手でホタルの頭を掴んだ。

「乗車賃払ってもらおうやないか。クラウンリベンザがどないしてん」

「うわー……笹鳴君、相変わらず容赦ないねぇ……」

 頭蓋骨に食い込むようにみしみしと手に力を入れられて、ホタルは緩んだ表情を引き締めて咳払いをした。

「クラウンリベンザってのは希少種でね。1年に3日ばかりしか咲かない小さな花なんだけど、別に希少だからって狙われた訳じゃないと思うよ」

 笹鳴の手が離れたのにほっとして、ホタルは髪を整えながら続けた。

「その花から抽出されるエキスを蒸留すると、純度の高い幻覚剤ができるんだよ」

 オロチクルーに衝撃が走った。この船の最大のタブーは、麻薬と人身売買だ。

「麻薬のような常習性はないんだって。だから上流社会では重宝されてるらしいよ。聞いた事ないかな?『惚れ薬』って」

 以前その話をした時にその場にいなかった菊池以外の全員が、あっという顔で視線を合わせた。

「何でも、好意を司る部分に視覚を通して影響を与えるんだって」

「それって本物の惚れ薬って事じゃないの?」

 驚く菊池に、ホタルはちっちと人差し指を振った。

「効果は一時的なものなんだよ。せいぜい1週間ってトコかな。それに、本当に憧れの異性に使う事は少ないんじゃないかな」

「じゃあ、どういう時に使うんだ?」

「そうだねぇ。まぁ一例だけど、俺だったら大統領にでも立候補して、投票3日前に電波ジャックして演説するかな。惑星中の雨に惚れ薬を混入して降らせてからね」

 かなりタイミングが必要だけどねぇ、とホタルは笑った。

「100トンもあればそりゃあ利用方法もたくさんあるでしょ」

「そういう事か……」

 南は神妙な顔でうなずいた。

「どうりで狙われるわけだ。だが北斗、お前は確か連中は海賊じゃないと言ったな。どういう事だ?」

 北斗は面白くなさそうに南に視線を向けた。

「何か気付いたんだろう?」

 北斗は南から視線をそらし、帽子のつばで表情を隠した。

「……正規の訓練を受けてた」

「どういう事や?」

「撃ち合った時にわかった。連中、軍人だ」

「ええっ!?」

 驚いた菊池が大声を上げた。

「なんで? どうして軍が惚れ薬を欲しがるんだよ!」

「別に珍しい事じゃないでしょ」

 ホタルはにやにやと笑って肘をついた。

「どこかの大金持ちが欲しがったんじゃないの? そういう遊びに付き合う軍人さんもいるからね。ねぇ? 元軍人の北斗君?」

 北斗は返答しなかったが、否定しない事が消極的な肯定だった。

 軍には確かに汚職を働く者が存在する。彼らはUNIONや各惑星の権力者と結びつき、利権をあさる事に夢中になっていた。

「ねぇ、船長」

 菊池は不安そうに南を見上げた。

「オロチでは麻薬を扱わないのがきまりだよ。それに、銀河海軍を敵に回すなんて……」

 南は両腕を組んで厳しい表情を作った。

「俺が仕入れたのは香水だ。麻薬じゃない」

「でも、船長」

「俺も船長に賛成だ」

 そう言って立ち上がったのは柊だった。

「悪い事に使われるってわかってるもんを、悪い事考えている連中に渡せねぇよ」

 菊池はきゅっと細い眉を寄せた。

「じゃあどうする? 宇宙にでもバラまいてみる?」

「金をバラまくんは心情的にいややなあぁ」

 考え込むメンバーに、宵待はふと疑問を感じて口を開いた。

「ねぇみんな、オークションで買ったんだろう? 船長と競り合った相手が犯人なんじゃないのか?」

 菊池が渋い顔で振り返った。

「それが、結構あちこちから声がかかってたんだ。最後まで特定の誰かと競り合った訳じゃないし」

「きっとわかっとる人間同士が腹の探り合いで値をつり上げてたんやろ。そこへ何も知らへん南が落としたさかい、力技で奪おう思ったんやろな」

「悪党が考えそうな事だね」

 オロチクルーのやりとりを眺めていたホタルは、彼らにわからないように苦笑した。今時こんなまっとうな気持ちで貿易船に乗っている連中は少ない。だからホタルは彼らが嫌いではなかった。

「俺が妥協案を授けようか?」

 視線がホタルに集中した時、北斗の声がそれを乱した。

「アラート!」

 全員が一斉にモニタを見た。追跡機がいくつもの光となって追いかけて来ている。

「敵か? 北斗」

「みたいだね。クラスは戦闘艦ってなってるから」

「全員戦闘体勢!」

 ブリッジが一瞬で緊張した。南が戦闘用のスイッチを入れると、あらゆるモニタにランプが灯る。

「パネルチェンジ完了! 敵数50!」

 菊池の声に、ホタルはぎょっとした。

「ご、ごじゅう!? それってちょっとした海賊艦隊クラスだよ!?」

「ちょうどいい腕鳴らしってとこっスよ。船長、発射許可を」

「ダメだ」

「なんで!?」

 柊が吠えた。

「相手を見極めてからだ。軍か海賊か、どっちだ宵待?」

「照合中です」

 北斗は舌打ちし、柊も面白くなさそうにメーターを睨みつけた。

「敵船のプレ・ロデア砲の軸線に乗ります!」

「振り切れ北斗!」

「了解!」

 北斗が操縦桿を倒した瞬間、プレ・ロデア砲がオロチをかすめた。

「オートリロードシステムオン! 自動照準システムオーバー!」

「プレ・ロデア砲チャージ70%!」

 菊池と笹鳴が叫ぶ。ホタルはおろおろとブリッジを見回すだけで何もできなかった。そもそもこんな戦闘になど普通はそうそう陥るものではない。

 宵待が叫んだ。

「タイプ判明! 合致パターンなし! 海賊です!」

「柊、撃て!」

 待ってましたとばかりに、柊はミサイルのボタンを押した。北斗のジグザグな操縦をものともせず、百発百中で敵艦を撃墜する。

「プレ・ロデア砲ディスチャージ!」

 言い終わらないうちに柊はオロチの主力であるプレ・ロデア砲の引き金を引いた。操縦が北斗、攻撃が柊、これがオロチのスタンダードだった。

「宵待、笹鳴、フォロー! 菊池、スタンバイ!」

 南の指示に宵待と笹鳴は新たにサブモニタを立ち上げ、それと同時に菊池の身体が白熱化する。

「遠方の敵艦は菊池に任せて、接近して来たものを撃ち落とせ!」

「了解!」

 プレ・ロデア砲の軸線上に上がって来た戦闘艦だけを、柊は神業の領域で撃ち落した。荷物を積んで重くなった貨物船からこれだけの命中率をはじき出す狙撃手など、軍にだっていないだろう。

 次の瞬間、遠方の戦艦がムチで撃たれたように弾け飛び、次々と爆発し始めた。ミサイルやプレ・ロデア砲の射程内に入る前に菊池に弾き飛ばされるので、海賊にはほとんどなす術はない。あっと言う間に30隻近い海賊船を消し去り、いつもよりペースが早いような気がして南が菊池を見ると、白熱化が解けていてぎょっとした。いつもなら南の指示があるまでは能力を解かないし、通常の状態に戻るには最低でも3分はかかるはずだ。

「菊池?」

「……船長」

 菊池はあろう事か口をきいた。集中している時は言葉はおろか目さえ閉じている事が多いのに。

「お前……あの遠方の海賊船をやったのはお前じゃないのか?」

「俺だけど……見て」

 菊池はシートをわずかにずらして自分のひざの上を視線で指した。そこには、さっき菊池が引き取った半透明の寒天生物がしがみついている。しかしさっきまで確かに真っ黒なつぶらな瞳だったはずなのに、サファイアのような青い光を放っていた。

「なんかこいつ、俺のブースター兼補佐能力があるみたいで……それほど集中しなくても当たるし、いつもより全然加減もできるんだ」

 菊池の目もクラゲのように青くなっていたが、菊池自身はそれに気付いていないようだった。

「そら拾いもんやったな。朱己、あのボス艦狙えるか?」

「うん」

 菊池と寒天動物の瞳が一瞬青く光った後、首領格だと思われるひと際大きい戦艦が一瞬で高熱化し、爆発した。

「うわー、らくちん。嘘みたい」

「こら朱己!」

 むくれて狙撃用のゴーグルを外したのは柊だった。

「今のお前の攻撃のせいで、他の連中が逃げちまっただろ!」

「あ、ごめん、責任取るよ」

 再び菊池と寒天動物の瞳が青く輝いた後、まるで巨大な鉄球でも落とされたかのように、すべての敵船がひしゃげて爆発した。

「うわー、うわー、すごい簡単」

「すごいな菊池。身体は大丈夫なのか?」

「うん。どこも痛くも疲れてもいないし、宵待も熱くなかっただろ?」

「ああ。いつもはこっちまで熱が伝わるのにね」

 菊池は嬉しそうに寒天動物を抱き上げた。

「すごいぞお前!」

「きゅう!」

「今日からずっと一緒な! お前の名前はクラゲに決定だ!」

 まんまだろ、と誰もが思ったが、喜ぶ菊池とはしゃぐクラゲを見ると何も言えなくなった。南も小さく息を吐いてキャプテンシートに寄りかかる。

「北斗、損害は?」

「ないっス」

「通常操行に切り替えろ。……ホタル? 大丈夫か?」

 腰を抜かしたように呆然としているホタルへ、南は思い出したように声をかけた。



「ホタルさんはね、元々ヤマブキ星の大地主だったんだよ」

 菊池は夕食を用意するためキッチンをせわしなく動き回りながら宵待に説明を始めた。キッチンの隅からはクラゲがそれを珍しそうに眺めている。

「旅をするのが好きみたいで、ご両親が亡くなって相続した遺産を全部処分してお金に換えて、今はあちこちを放浪してるみたい」

 宵待は菊池を手伝いながらそれを黙って聞いていた。1人と1匹分が増えたので自主的に手伝いを申し出たのだ。

「船長とは古馴染みみたい。時々、今回みたいに表には上がってない情報をくれたりするんだ」

「じゃあ……肩書きは何なのかな?」

「さぁ。本人は『愛の狩人』って言ってたけど」

 宵待は無言で鍋をかき混ぜた。愛の狩人ってなんだそれ。

「さっきのホタルさんの妥協案……船長、乗るのかな」

 宵待はそれに答えず、鍋を揺すった。

 ホタルの妥協案は、軍に流れる可能性があるくらいならUNIONに売るというものだった。自由貿易業者がUNIONに商品を卸す場合、UNIONには販売先と価格を公開する義務が発生する。UNIONを通す分儲けは減るが、危険からは回避できるだろう。

「菊池、船長はどうして麻薬が嫌いなんだ? もちろん第一級禁制品目に登録されているってのはわかってるんだけど、ものすごい儲けになるんだろう?」

 菊池は宵待のかき混ぜている鍋に調味料を放り込んだ。目見当で入れているみたいだが、これが絶妙なのを宵待は知っている。

「俺もよく知らない。何かあったのかもしれないけど、そういうもの絡みの過去ってあんまり言いたい事じゃなさそうじゃない?」

 菊池はなんでもないことのようにさらりと流してサラダに取りかかった。宇宙船のクルーにとってビタミンは非常に大事な栄養源で、そちらの方が大事だとでもいうように。

「……そうだね」

 コトコトと煮込まれる鍋の中身を眺めながら、宵待はしみじみと呟いた。オロチのクルー達にはそれぞれ過去がある。それはきっと自分から言い出さない限り聞かないのがルールなのだろう。自分だってまだ言っていない辛い過去がたくさんあるが、今は思い出したくもない。

「それにしても南船長は顔が広いな。スイリスタル太陽系の国王達に辺境のエルフ、挙げ句は『愛の狩人』だなんて」

 菊池は声を上げて笑った。

「俺もそう思う。UNIONや軍にも知り合いがいるみたいだし、友達には海賊もいるよ」

 宵待の手が硬直したのを見て、菊池は慌てて手を振った。

「も、もちろん俺達を傷つけるような事はしない海賊だよ! 今日会ったのも、お金より友情って言ってたし!」

 海賊と聞くと宵待の身体は未だに硬直した。この年まで追いつめられ続けた相手なのだから、その恐怖を払拭できるようになるまではまだまだ時間がかかるだろう。

 宵待はもちろん南を信じている。いまさら宵待を売り払おうなどとは考えていないだろう。それでもやはり恐ろしいものは恐ろしいのだ。

 黙り込んだ宵待に、菊池は焦って舌を回転させた。

「ちょっと変わった海賊なんだ。宵待は知らないかな、『コウモリ』って海賊団」

 宵待は努力して笑顔を作り、菊池を見た。

「名前くらいなら……」

 引きつった宵待の表情に、菊池はしばし切なそうな目をしたが、再びボウルの中を混ぜた始めた。

「何て言うか、どっちかって言うと義賊っぽい仕事をするというか……食いっぱぐれている不良少年達を集めて面倒見てるって感じ。ボスは根っからの海賊みたいだけどね。幹部もまだ若いよ。柊と同じくらいの年齢なんじゃないかな。ユスラゴっていうのとカイドウっていうのがいる。カイドウってのがボスの子供で、今日会ったのはユスラゴの方」

 宵待はうなずきながら黙って聞いていた。

「……宵待」

 菊池の心配そうな視線に、宵待はやっと小さいながらも作りものではない笑みを浮かべた。

「わかってる。船長の友人ならきっと信用できる人なんだろう?」

「……うん。少なくとも宵待を商品扱いはしないと思うよ」

 宵待は「うん」とうなずいた。



「いやー、菊池君の料理は最高だね。そうは思わない? クラゲ君」

「きゅう!」

 クラゲは器用にスプーンを使いながら料理を頬張っていた。

 オロチにはきちんとした食堂もあるのだが、染み付いた貧乏性で食事はブリッジの隅のスペースでとる事が多かった。小さなテーブルと人数分の椅子を設置し、そこで全員で一緒に食べるのが普通だ。

「朱己、大丈夫なのか? こいつ。俺達と同じモン食って」

 不可思議なものを見るような柊に、菊池は笑顔でうなずいた。

「うん。ドクターに健康診断してもらったら、俺達と同じ分解機能を持っているって教えてもらったから」

 へぇ、と呆れ半分に呟いて柊はクラゲを眺めた。小さい口に一生懸命食べ物を運ぶ様は、確かに可愛い。

「そんなに急いで食べなくても大丈夫だよ、クラゲ。お代わりもあるからね」

「っきゅう!」

 クラゲは嬉しそうに笑った。おそらく今までろくな環境にいなかったのだろう。嬉しさの表れなのか、触手の先が時々ぴょこぴょこと動いている。

「ところで船長、さっきの海賊はやっぱりクラウンリベンザの香水を狙って?」

 南は煮物を飲み込んでから小さくうなずいた。

「さっきユスラゴから情報が入った。連中、クモだそうだ」

 ホタルが吹いた。

「ク、クモ? それって、5大海賊に数えられてる連中じゃん!」

 そうなの? と尋ねる宵待に、北斗はうなずいてみせた。

「クモは最もえげつない海賊だって言っていいね。軍やUNIONとの癒着度はNo.1、別名『八つ手』」

「八つ手……?」

 北斗は肉じゃがを口に運びながらうなずいた。和食メニューなので今日は機嫌がよく、会話が続く。クラゲを買い上げた時に助けてくれた菊池の礼だという事が北斗はわかったが、あえてわざわざ確認はしなかった。

「海賊と言うより企業みたいに機能してる。色んなところから依頼を受けて、金品を強奪するんだ。相手が誰であろうとおかまいなし。それで破滅した惑星や貿易企業も多いって聞くよ。海賊も狙うし手段も何もあったもんじゃない。八面六臂の悪役ぶりってトコ」

「それで『八つ手』……」

 宵待は眉をひそめた。

「『コウモリ』も、連中には何度も煮え湯を飲まされているからな。50隻くらいなら『八つ手』にとってはごく一部だろうが、多少は溜飲が下がったんだろう。それで俺達に連絡をくれたらしい」

 コウモリって言うのは、と南が言いにくそうに説明しようとしたので、さっき菊池から聞いたと宵待は苦笑した。ここのクルーが自分に気を使ってくれているのが、宵待は心苦しくも少し嬉しい。

「クラウンリベンザの香水強奪を、誰かが『八つ手』に依頼したんやろな」

 笹鳴が話を戻したので、南はうなずいた。

「これはあまり長い間持っているべき荷じゃないな。この際、ホタルの案に乗るか」

「そうした方がいいよ。俺がUNIONに口きいてあげようか? こう見えても知り合いは多いんだ」

 遠慮なく食事を頬張るホタルを半眼で睨み、南はため息を吐いた。

「UNIONならお前に頼まなくても問題ない。柊、頼めるか?」

 柊は視線だけで南を見て、また視線だけでうなずいた。元UNIONの柊なら、間違いない方法を選択するだろう。

「任せとけよ、船長。何せUNIONは信用第一だから、麻薬みたいな危ないものを売ったなんて事にはならないよう努力するさ。ただ、儲けはホント覚悟してくれよ」

「いいさ。いざとなったら、スイリスタルの貿易フリーパスっていう奥の手を使う」

 何気ないように言った南の言葉に、ホタルはまた吹いた。

「えぇ!? あのスイリスタルの貿易フリーパスチケット持ってんの!?」

 ああ、と笹鳴はごぼう巻きを頬張りながらうなずいた。

「だ、だってあの惑星の商品って、そりゃあレベルが高くて値段も高くて、めちゃめちゃ高級ブランドじゃないか! どうして南みたいなしがない地味貿易船長がそんなん持っての!?」

 クルー全員の冷たい視線がホタルに刺さった。

「……地味で悪かったな」

 半ば諦観気味にそう南が呟き、宵待は不思議そうにホタルを見た。

「スイリスタルって、そんなに有名なのかい?」

 ホタルは驚いたように瞬きしたが、何故かすぐに納得顔になった。

「そりゃあもう。何せモノがいいからね。銀河海軍だってスイリスタル製の船なんか持ってないし、せいぜい中央管理局でVIP御用達飛行船の1〜2隻くらいしかないよ。万能薬やレアメタルも、あのUNIONの市場ですらそうそうお目にかかれない」

 へぇ、と宵待は目を丸くした。

「宵待君は行った事ないの? スイリスタル」

 宵待はうなずいた。軍事司令官達には会った事があるものの、惑星そのものには行った事がない。

「スイリスタルは銀河一の技術先進太陽系だよ。職人はこぞって留学したがるし、薬剤の研究もものすごく進んでる。スイリスタルの計算機1個か万能薬5錠かレアメタル10gのどれかを持っていれば、半年は食べるに困らないって言われてる」

 宵待は絶句した。それは確かにいち自由貿易業者がフリーパスチケットを持てるような相手ではない。

「おっどろいたぁ。地味な顔してホントすごいね、南は」

「だから地味は余計だ」

 南はホタルを睨んだ。

「どうりでこの船も立派な訳だ。スイリスタルからレンタルでもしてるのか? まさか買ったなんて事は」

「もらったんスよ」

 柊が野菜を噛み砕きながらどうでもいい事のように言った。

「もらったって」

「船が壊れて、その理由がスイリスタルにもあったんで、造ってくれたんス」

 今度はホタルが絶句した。オーダメイドで造れば間違いなく40億以上はする。

「……なに? スイリスタルの皇帝の弱みでも握ってんの?」

「そんな訳ないだろう。ちょっと手助けしたら、恩を感じてくれたってだけだ」

 南はみそ汁の中身を全部口の流し込んだあと、ごちそうさまと手を合わせた。

「食い終わったらホタルは食器の片付けを手伝えよ。さっきの情報だけで乗車賃に足りると思ったら大間違いだ」

「人使い荒いなぁ、もう」

 ホタルは漬け物をぽりぽりとかじった。



「おっつかれさーん」

 ブリッジに入って来たホタルに、南は視線で空いたシートに座るよう告げた。

「あれ? 南だけ?」

「もう就寝時間だからな。他の連中は全員部屋だ。今日の当番は俺でな」

「就寝時間って。まるで寮だな」

 キャプテンシートの近くにはワゴンにコーヒーセットが用意されていた。菊池が眠る前に準備していたのを知っていたので、ホタルは勝手に2人分をカップに注ぎ、1つを南に手渡した。

「船長のお前まで当番に入ってるんだ?」

「徹夜が翌日に響くほど、まだ年はくってないからな」

 カップを受け取って、南はモニタに視線を移した。船は順調にUNIONの交易管理局へ向かっている。今のところ襲撃はなかった。

「ホタル、次はスイリスタルでよかったのか? それとも交易管理局で降りるか?」

 シートに腰掛けたホタルは片目で南を見て笑った。

「どこでもいいんだよ。墓参りも済んだしな」

 南はホタルの横顔を見つめた。学生の頃の面影を残してはいるが、人生をなめているような甘さは消えている。様々な惑星を渡り、たくさんのものを見、色んな思いをしたのだろう。

「……お前達の噂は聞いてたよ」

 ホタルはだらしなくシートに寄りかかった。

「箝口令が敷かれたみたいだから詳しくは知らないけど、スイリスタルの戦争に関わってたんだって? それでこの船をもらったのか?」

「……まぁな」

 ホタルの目の前の最新鋭3D映像には、半径1光年内の公役所や惑星がすべて記されている。出力曲線、速度、冷却ポンプの回転数、どれも美しいほど整然かつ規則正しく動いており、ヤマブキ星では燃料補給をしなかったにも関わらずエネルギータンクはほぼ満タンで、燃費がいい事も想像できた。

「すごい船だねぇ。UNINON加盟船だって一生かかっても買えないシロモノだよ。ヨナガ星の革命にも関わったって聞いた。それからアホみたいに海賊に狙われた事も」

 南は静かにコーヒーを口に運んでいた手を止めた。

「……気付いてたか」

「まぁ、これでも星々を渡り歩いてるからねぇ」

 宵待を見てすぐ、ホタルにはわかった。この男が例のオボロヅキ人なのだろうと。極端に白い肌と、スイリスタルほどの有名な太陽系を知らない事実は、おそらく海賊から逃れる為に地下にでも隠れていた事が推測される。

「まったくお前らしいよ、南。クルーにしちゃうなんてさ」

「……まだ、探してるのか?」

 ホタルは笑い飛ばそうとして失敗し、大きくため息をついた。

「探してますよ。我が不肖の双子の兄貴をね」

「前に言ってた手がかりはどうだったんだ?」

「空振り」

 ホタルは虫でも払うように片手を振った。

「せめて両親が亡くなった事を教えてあげたいんだけどね」

「実家は取り壊さず残してあるんだろう? そこには何も?」

 ホタルは力なく首を振った。

「ダメだった。連絡を寄越した形跡もない」

 しばらくの間、2人は無言でコーヒーをすすっていた。この時間帯はいつもゆっくりと操行するので、周囲の景色はほとんど変わらない。

「学生の頃はこんな事になるなんて思ってなかった。兄貴が消える事も、お前がこんな船の船長をやるなんて事も」

「こんな船とはずいぶんだな。スイリスタルの最新鋭だぞ」

「こんな船だよ」

 ホタルは空になったカップを置いた。

「黙っていれば宇宙の半分は手に入れられたって言うのにさ」

 南はカップの中に視線を落とした。

「満足してるよ、俺は」

「昔っから、お前は無欲だったもんねぇ」

 ホタルはキャプテンシートの南を見上げて笑った。

「俺はお前がいつもうらやましかったよ、南。物欲は並以下だってのに、気が付けば欲しいものはだいたい手に入れているお前がさ」

「お前だって何でも手に入れてただろう。『僥倖のホタル』の二つ名は伊達じゃなかったと記憶してるが?」

 ホタルは声を上げて笑い、しかし最後に「はぁ」とため息をついた。

「俺が手に入れたものは、お前と比べると何だか浅いもののようにいつも思ってたよ。お前はいつも、簡単には手に入らない絆とか信用とか、そういうものを常に持っていた。俺にはそんなものはなかったよ」

「……となりの芝生が青く見えていただけだ」

 ホタルは声を出さずに笑い、黙ってブリッジを出て行った。



「交易管理局まであと20分」

「圧縮コンプレッサー正常稼働、レンジ波安定」

「システムポジション3に移行」

「交易管理局、応答願います。こちら自由貿易船オロチ。着艦許可を願います。船体コードOROCHI54881326」

 慣れた仕草で船を動かすクルー達を、ホタルはぼんやりと眺めていた。船の操縦などできはしないし、基本的に自分は乗客だ。

 やがてオロチは交易管理局に着艦許可を出され、小さな衛星に着陸した。

 いつもの事だが、ドッグではオロチに人が群がった。軍の巡洋艦などに比べると遥かに小さいが、スイリスタルの技術の結晶である外観はとにかく美しい。

「じゃ、俺と柊は香水をUNIONに引き渡して来る。お前達は好きにしてろ」

「うん。気を付けていってらっしゃい」

 菊池はクラゲと一緒に手を振って2人を見送った。

「みんな、どうするの?」

 ホタルに尋ねられて、クルー達は首を傾げた。

「交易所じゃ観光も食料の仕入れもできないし……洗濯でもしようかな」

「俺は医療機材のチェックでもしとるわ。宵待はどないする?」

「ニュースを見るよ。勉強しなきゃいけない事が多いから。北斗は?」

「寝る」

 それぞれが勝手にオロチ内にちらばるのを見て、ホタルは何となくオロチを降りた。船内にいてもやる事はない。

 観光するものなど何もないので何となくバンカーを見回って、人を気にせずオロチが見える場所に立った。オロチの近くには何人もの見物人がいるのが見えるが、ここまで離れると周囲には誰もいないので存分に見渡せる。

 オロチは美しかった。純白の流線型で左右に突き出た小さな翼に、やや大きめの垂直尾翼と計算された排出口。その上内部は最新鋭ときてる。船体の横には船名が芸術的に記されていた。

 ホタルは苦笑気味に笑った。本当にすごい船だ。

 これだけの船に信頼できる仲間を持った南と、たった1人の兄弟すら見つけられない自分。

 人それぞれだとわかってはいても、やはりホタルはうらやましかった。周囲からは自分の方が一歩先にいるようなイメージを持たれていたが、本当は南の方が先にいた。ホタルだけが、それをわかっていた。

「あんた」

 突然、背後から声をかけられ、ホタルは無言で首だけを巡らせた。

「オロチから出て来たな。クルーか?」

 ホタルは2秒ほどその男の顔を眺めた後、小さく首を横に振った。

「いや。だたの乗客」

「本当か?」

 猜疑心の強い視線に、ホタルは身体ごと振り向いた。

「俺に何か用?」

「クラウンリベンザをどうするつもりだ?」

「教えて欲しい?」

 相手の気配がじりじりと殺気を帯び、ホタルはゆっくりと腰を落とした。荷物の大部分はオロチに置いたままだが、入管ゲートをくぐる気はなかったので最低限の武器は身に付けている。

 男が床を蹴ったのとホタルがナイフを抜いたのは同時だった。

 相手のナイフを弾き返し、蹴りを避けた勢いで相手の軸足を払う。倒れた男に馬乗りになって、ホタルは相手ののど元にナイフを突きつけた。

「おイタをする子には教えてあげません」

 ナイフの柄を握ったままこめかみに振り下ろすと、男はあっさり気絶した。

 一応相手の身分を証明できそうなバッジを襟から引きちぎると、ホタルはすぐに立ち上がりながらナイフを戻して足早にオロチへ戻ろうとした。入管した南と柊が心配だ。もしかしたら管理局の受付にたどり着く前に襲われるかもしれない。

 数歩行きかけて、ホタルは足を止めた。目の前に生意気な視線が立ちはだかったからだ。

「北斗君……?」

 北斗は帽子の下からホタルを見つめ、寄りかかっていた壁から身を起こした。

「助け、いらなかったね」

「寝るって言ってなかったっけ?」

「船長に言われてた。あんたが出歩くようならついて行けって」

 ホタルは苦笑した。南はこうなる事などとっくにお見通しだったのだろう。

「俺より南についていった方がよかったんじゃない?」

「柊が付いてる」

 ホタルは歩を進め、北斗はその後に続いた。

「柊君、強いの?」

「俺ほどじゃないけどね」

 生意気な口調で、北斗は呟いた。



「お帰り船長! しぐれ! 無事でよかった!」

「……あんま無事でもねぇけどな」

 帰還するなり柊はブリッジの自分のシートに崩れ落ちた。

「大丈夫か? 襲われたのか?」

 飲み物を差し出す宵待に、南は半笑いになった。

「まぁ、襲われる事は襲われたが、それは全部柊が何とかしてくれた」

「やっぱり襲われたのか……!」

 青ざめる菊池に、柊はひらひらと手を振った。

「いま船長が言っただろ? それは大丈夫だったんだよ。問題はそのあと」

 柊は宵待から受け取ったグラスを一気に空けると、勢い良くワゴンに戻した。

「UNIONの連中がもう全っ然安く買い叩こうとしやがって、その攻防に神経すり減らした」

「お前、一貫してけんか腰だったからな……」

 南は遠い目をした。

「でもまぁ、お陰で何とか仕入れ値以上で引き取ってもらえたよ。後はもう知らん」

 南も飲み物に口を付け、そしてふと顔を上げた。

「こっちは大丈夫だったか?」

「うん、オロチは大丈夫」

 うなずく菊池を視界の端に入れ、北斗はちらりとホタルを見た。自分で言えというその視線に、ホタルは肩をすくめた。

「実は、俺がちょっと襲われました」

 全員がぎょっとしてホタルを見た。

「どうして教えてくれなかったんだ?」

「いやいや、菊池君を心配させるのも申し訳ないと思って」

 ホタルは変な声を上げて笑った。

「それに、北斗君が助けに来てくれたしね。あんまりお近づきになりたい人でもなかったし」

 本当か北斗、と尋ねる南に、北斗は人差し指で帽子のつばを押し上げた。

「俺は何もしてないよ。この人が1人で片付けてた」

 自分を見つめてくる南に、ホタルは小さくため息をついて後頭部の髪をかき混ぜた。

「うーん……まぁ、これでも一人旅は長いから、ちょっとくらいなら身を守れるかな」

 南は無言でホタルを睨み、やがて視線をそらせた。

「香水でいくらかの儲けは出たが、とても目的の商品を買えるほどじゃない。予定通りスイリスタルへ向かい、そこで何か商品を仕入れてもう1度どこかで売りさばいてから、スイリスタルへ制作を頼む事にする」

 クルー達はうなずいた。

 南達の求める商品が何なのかホタルにはわからなかったが、南がわざと具体的な名前を出さなかったという事は、あまりホタルに知らせたい商品ではないのだろうとあえて訊かなかった。

「すぐに飛び立つ。北斗、離陸準備を」

「あー、ちょっと待った」

 ホタルは片手を上げた。

「俺、ここで降ろしてもらうわ」

 南が眉間にしわを寄せた。

「お前、スイリスタルへ行くと言ったじゃないか」

「気が変わったんだ」

「賛成しかねる。さっき襲われたんだろう?」

「もう大丈夫だよ。香水はUINONに引き渡しちゃったんだろう? 狙われる理由がない」

「しかし」

 ホタルは笑った。

「降ろしてくれよ、南。お前と一緒にいると、どうにも劣等感を刺激されてダメなんだ」

 南は口を開きかけたが、何も言わずに閉じた。

 ホタルは笑う。

「隣の芝生と同じくらいうちの芝生も青いなぁと思えたら、また会いに来るよ」

 ホタルは南にバッジを放った。

「あの情報だけじゃ運賃に足りないだろ? それあげる」

「何だ? このバッジは」

「俺を襲って来た男のもの」

 南はバッジの表面を眺め、表情を曇らせた。

「ハスター……」

 宵待以外のクルーがぎょっとしたように南の手元を覗き込んだ。

「まさか……」

「残党がいたようだな」

 南はバッジを握りしめた。

「菊池、ハスターって?」

「スイリスタルを襲った海賊の名前」

 宵待に尋ねられ、菊池は険しい表情でうめいた。

「南もみんなも気を付けて。海賊ってのは執念深いからね」

 ホタルはナップザックを担いだ。

「これからどないしはるんや? ホタル」

「さぁね。まずは宿でも探すよ」

 デッキまで見送られて、ホタルは振り向いた。

「みんな、南をよろしく頼むよ。数少ない、生きてる友達だからさ」

 くるりときびすを返し、ホタルは振り返らずにそのまま入管ゲートへ消えた。

「……相変わらず、ふらりとやって来ては急に去るっスね」

「気ままな奴だからな」

 南はホタルが消えた先をしばし眺めていたが、やがてクルー達を見回した。

「出港する。総員配置に付け」

「了解」

 全員がブリッジに向かう中、南は1度だけゲートへ振り向いてから、静かにハッチを閉じた。

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