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第37話 襲撃

 「お疲れ様です。レイヤさん」


 汗をかいた好青年風のウルドはなぜか目を輝かせている。

 どうしてだろうか?


 「お疲れ様です。5時間というのは疲れますね」


 するとウルドだけではなくミナミ、サピエンス、オーランド、クリストが俺を囲んでくる。

 5人全員が何か新しいものを見つけたような子供のような顔をしている。

 リーダーのウルドが代表して口を開く。


 「すごいですね!ずっと3人のHP量を見ていましたが一度も減らないなんて!」


 「い、いや、それは俺の武器の要求筋力値が低いからパリィしやすかったからですよ」


 この程度の狩場のモンスターの攻撃をパリィし続けることができるプレイヤーは少なくはないだろう。

 だが、ウルド達の連携から推測するとずっと5人でパーティーを組んでいたのかもしれない。

 盾職はダメージを受けてナンボのスキルがあるため、ノーダメージでいるプレイヤーが珍しかったことが考えられる。

 

 「ですが僕たちよりもレベルが上になっているじゃないですか!」


 「俺たちは秘薬を使っていましたし職業的なことも関係していると思いますよ」


 「それを考えてもレイヤさん達は卓越していますよ!それでひとつ聞きたいことがあるのですが、もしかして伝説のギルド果てなき幻影のレイヤさんですか!?」


 ウルドが声を弾ませて顔を近づけてくる。

 それを聞きたかったのか、残り4人のシールダーも顔を近づけてくる。

 というより伝説のギルドって・・・。

 最強のギルドと言われていることは耳にしていたが。


 「あ、はい。そうです」


 「おお~!」

 「本当!?」

 「・・・すごい」

 「ッパネェ!」

 「驚きました」



 俺の回答でウルド達はガヤガヤと騒ぎ出す。

 てっきり俺が誰なのか知っていたと思っていたのだが。

 だが、仕方が無いのかもしれない。

 パーティーなどを組まない限り、ギルド名はおろかプレイヤーネームさえ知ることができないからだ。

 だとしてもラスコッドから聞いていなかったのだろうか?

 ラスコッドからのサプライズ・・・だろうか? 

 俺はチヤホヤされるのは好きではないのだが。

 それを見越して、俺にいやがらせでもしているのだろうか?

 

 「よければ色々とお話を聞かせて頂けませんか!?」


 「ええ、いいですよ」


 「でしたら早速行きましょう!」


 「・・・行くってどこですか?戻るではなくて?」


 「明日は経験値の泉に行くのでトルーアには戻りませんよ?」


 俺が勘違いしていることを察してあくみんが耳元で囁く。


 「・・・経験値の泉はトルーアから離れていますから、今日は野宿ですよ。」


 何だと!?

 明日に備えて装備を整えたかったのに。

 それにあくみんの手料理はどうなるのだろうか。

 一人で勝手に期待していただけだが。




 

 「天空城の最上階まで行ったというのは本当ですか?」


 「行きましたよ。景色が良いのかと思いましたが、雲しか見えませんでしたが」


 経験値の泉の前まで移動したら質問の嵐が降りかかってきた。

 質問内容は主に高難易度ダンジョンについてだ。

 それに対して俺は意気揚々と答えていく。

 なぜなら、あくみんがカレーを作っているからだ!

 あくみんは持参していた鍋でぐつぐつと具材を煮込んでおり、香辛料の匂いも漂っている。

 そしてついに―――――


 「皆さん、お待たせしました」


 盛り付けられた8人分のカレー。

 全員が手を伸ばして、ガツガツと食べ始める。

 おとぎはあくみんに対しては依然冷たい態度だが、あくみんの手料理を食べることには渋っていない。

 それを見てあくみんはホッとした表情になる。


 カレーを口にしながらシールダー5人について聞いてみたのだが、ウルド達は《Fantasy Tale》を始めて1年らしく、その前には他のVRMMOをプレイしていたらしい。

 そのVRMMOで5人は仲良くなったらしく、それからずっと一緒とのことだ。


 話している雰囲気から感じ取ったのだが、俺はこの5人は良いパーティーだなと思った。

 最初にお調子者のオーランドが寡黙なサピエンスにちょっかいをかけて模範的なお姉さんであるクリストがオーランドに説教をする。そしたらミナミとウルドが笑って場を盛り上げるのだ。


 その和気藹々とした場には見覚えがあった。

 少し前の果てなき幻影の雰囲気そのものであったからだ、

 


 夕食であるカレーを食べ終えて今日は野宿だ。

 ウルドはテントを所持していたのだが、人数的な問題もあったが性別的な配慮もあって男性陣は地面で寝ることに。

 ウルドのテントはクッション入りであるためベッドと差異はないだろう。

 羨ましい。


 「っちぇ~。俺もテントで寝たかったな~。そうだ、こっそり忍び込まねえ?」


 まるで修学旅行で女子生徒の部屋に行こうと誘うかのようにはしゃぐオーランド。


 「・・・それはいけない」


 勤勉そうなサピエンスが止める。


 「もぉ~、お固いこと言っちゃって。サピちゃんだってテントで寝たいし、なにより女の子の横で寝たいっしょ?」


 「・・・・・・」


 サピエンスは赤くなって何も答えない。


 「オーランド!聞こえていますよ!」


 クリストがオーランドの発言に対して怒鳴る。

 するとテントの中にいるミナミと俺の横にいるウルドが笑いをもらす。

 

 しかし―――――


 「ちょっと!」

 「この・・・何を!」

 

 突然、テントの方から女性陣の声が夜中の静寂の中で響いた。


 「どうした!ミナミ、クリスト!」


 テントから最初に聞こえてきたのはミナミとクリストの叫び声だった。

 それに反応してウルドが飛び起きる。


 続いて、


 「何ですか!」

 「レイヤ~!」


 大切な仲間であるあくみんとおとぎの声も響く。

 辺りは薄く月明りで照らされているだけでテントの方で何が起きているのかわからない。

 だから、暗闇でも見えるパーティーメンバーのHPを確認。

 女性陣のHPは減っていないようだが、横に何かアイコンが―――――


 キン!


 俺は微かに聞こえた音のうなりで剣を抜き、振り下ろすと何かを跳ね返した感覚があった。

 地面を見ると矢が。


 すると、他にも音のうなりが聞こえて3回バサリと音がした。

 

 「なっ、なんだ・・・」

 「おおい、んだよこれ」

 「・・・う」


 俺以外の男性陣が倒れたのだ。

 3人とも身体には矢が刺さっており、黄色のエフェクトがかかっている。

 よかった。

 血は出していない。

 

 黄色のエフェクトということは麻痺状態ということだ。

 だがなぜだ?

 ここはモンスターが出現しないと聞いた。


 何が起きているのか状況を整理していると、


 「ほほう、今のを跳ね返すか」


 矢が飛んできた方向から声がした。


 俺はその姿を見て愕然とした。

 血濡れのマント・・・「エリュシオン」の奴だ。

 それも一人ではない。10人以上はいる。


 「おっと、妙な真似はするなよ」


 俺に喋りかけているのはリーダー格らしきプレイヤーだ。

 他の「エリュシオン」のメンバーは弓を構えている。

 

 「そんなに弓で狙われていたら何もできはしないさ」


 パーティーメンバーのアイコンを確認すると、麻痺状態というデバフのアイコンだった。

 俺以外の7人は麻痺で動けない。

 

 「ならばなぜお前たちを襲ったのかはわかるだろ?」


 リーダー格の男は俺に問う。

 経験値の泉まで来たという事は俺たちと目的は同じのはず。


 「経験値ポーションのことか?それならば俺たちは退く。だから帰してくれ」


 言葉とは裏腹に俺は退くつもりはない。

 経験値ポーションが惜しいからではない。

 今日であったばかりではあるが夕食を共にして談笑したウルド達と大切な仲間を守るためだ。

 

 ラスコッドによると「エリュシオン」は1000人以上のプレイヤーを殺した。

 だから次の言葉は予測できる。


 「いいぜ、地獄の閻魔のもとへ帰してやる。・・・撃て」


 俺を弓で狙っていたプレイヤー達は一斉に矢を放つ。

 麻痺状態にさせるわけではなく、HPを削るためのスキルだ。

 もしくは血を流させて殺すためだろう。

 向こうのレベルがどれほどか知らないが、抵抗するしか方法はない。


 臨戦態勢だったため矢を全てスキルで斬り落とす。

 遅いな。

 矢の速度も、向こうの動きも。


 「ぐげっ!」


 俺はスキルを発動せずに一人の男を攻撃。

 殺すというのは俺のポリシーに反する。

 だから、HPだけが減るように加減をしている。

 

 どうやら経験値の泉まで来たという事は75レベル以上らしい。

 そう考えると遠慮しなくてもいいのではないだろうか?

 俺のレベルは88だが、武器の攻撃力は低いからだ。


 「ゲヘヘへへ」

 「雑魚は失せやがれェ」


 弓を装備していたが、本職はアーチャーではない奴がほとんどで、マチェーテやイカツイ短剣などの悪党らしい武器に切り替えている。


 「・・・に、逃げてください。レイヤさん。僕たちなら大丈夫です。テントの方へ」


 傍らに倒れ込んでいるウルドが女性陣を助けるように促す。

 シールダーであるため防御力が高く、血を流すことはないだろうがHP面については不安だ。

 レベル75以上と思われる敵が10人以上もいるのだ。

 だとしたらその攻撃が一人に集中しては耐えられるわけがない。


 「もちろんテントの中にいる皆も守る。だけど君を危険にさらすわけにはいかない。だって俺たちはもう友達だろ?俺を信じてくれ」


 ウルド、ミナミ、サピエンス、オーランド、クリストはもう大切な友達なのだ。

 だから、一人も死にさせはしない。


 「で、でも・・・」


 ウルドは迷いの色を見せる。


 「・・・俺は伝説のギルド果てなき幻影のレイヤなんだろ?だから信じてくれ」


 俺はウルドの目をじっと見つめる。

 ウルドは迷いの色を失くして、ぐっと息を呑む。


 「ありがとう、レイヤ」


 「まだお礼を言うには早いぞ」


 俺は命を何とも思っていない連中に意識を傾ける。


 「何言ってんだテメェ!」

 「聞こえねえんだよ!」


 マチェーテを手に持つ2人の男が俺の身体を叩こうとする。

 だが―――


 「遅いんだよ。鈍間が」


 二人の攻撃速度はレベルに見合ったものだったが、高難易度ダンジョンばかり潜っていた俺の目にはその攻撃は遅すぎた。

 

 「おげっ!」

 「げぶぅ!」


 俺の無駄のない動きの通常攻撃は二人の頭をまとめて斬った。

 切断されたわけではなく、赤色のエフェクトだけ。

 

 「ぬ・・・一斉にかかれ!」


 リーダー格の男が指示すると、残り8人の敵が俺を半円状に取り囲む。

 8人の武器には青や赤などのエフェクトが眩く光り、スキルが発動される。


 「それでもPK専門ギルドなのか?」


 他職のスキルは詳しくなかったが、初期職程度ならば知っている。

 だから、同じ動きしかしないスキルを発動するとは愚かなことだと思った。


 俺はこの8人とは違い、通常攻撃。

 それも敵のスキルのスピードを上回って、武器の柄に命中した。


 「なんだこいつ、バケモンか?」

 「やべえよ」

 「粉々だ・・・」


 レベル差などによって敵を殺すことを考えずに済む方法がある。

 それは武器破壊というプレイヤースキル。

 武器の構造上で脆そうな部分に強烈な一撃を与えると武器が粉々に砕け散るのだ。

 これならば簡単に無力化・・・できるというわけではない。

 武器破壊は確率的には相当低いし狙ってできるものではない。

 今の攻撃で破壊できたのは2本のマチェーテのみ。

 

 しかし、柄を狙ったのは衝撃によって武器を地面に落とさせるためだ。

 これにより8人全員が武器を手にしていない。


 「フェニックスアロー!」


 テントの方で火が燃え盛り、ゆらゆらと影を揺らした。

 その炎により地面に落ちている武器が黒くボロボロになった。

 あくみんのスキルだ。

 麻痺状態は動きが遅くなるだけなので、スキルを発動することはできる。

 だが、狙ったところに当てるのは至難の業だ。

 それなのに全ての武器を焼失させるとは。

 さすがあくみんだ。


 「くっ・・・。フン、いいだろう。俺が相手になってやる」


 うしろで眺めていたリーダー格の男が鼻をならして剣を抜く。

 俺と同じソードマンではあるが、武器カテゴリは片手剣だ。

 それと、武器の格が違うこともわかる。

 〈レッドドラゴンソード〉というレアドロップ品だ。


 「へぇ。いい物持ってるな。だったらそれは―――」


 俺はレベル88まで鍛え上げられた敏捷値と、スキルよりも速い通常攻撃でリーダー格の男が持つ〈レッドドラゴンソード〉を地面に落とさせ、切っ先を首元の直前で止める。


 「―――俺の物だ」


 リーダー格の男は口をわなわなと震わせ、


 「ヒっ、ヒイイイイイイィィィィ!!!やっ、やめ!」


 顎を引きながら手をすりすりと合わせて命乞いをする。

 俺はゴミを見るように見下すと後ろを向く。

 すると、青色の閃光が光る。


 「馬鹿が!死ねやああああああァァアアア!」


 リーダー格の男の懐からは短剣が覗いていた。

 もし、このまま何もしなければ俺のささやかな優しさにより〈レッドドラゴンソード〉は盗らないでおこうと思っていたのに。

 

 「見え透いてんだよ、クズが」


 リーダー格の短剣を剣で弾いて、迷わずに身体にダメージを与える。

 殺しはしない。

 だが、恐怖は植え付ける。


 「ああああああ!すっ、すみません!!だから!やめてくだ・・・ヒイイイイイイィ!!!」


 俺は全身くまなくリーダー格の男を斬る。

 それも掠る程度に。

 リーダー格の男にしてみれば、この手数は恐怖そのものだろう。

 

 「―――イイイイイイィィ・・・・・・・」


 50回ほど斬ったことでリーダー格の男のHPが残り数ドットとなったとき、プツンと叫びが途絶えた。

 それと同時に俺も斬撃を止める。

 武器を失った敵はそれを見て後ずさる。

 

 「・・・死にたい奴がいるなら、相手をしてやる。・・・いないのか?だったらこのゴミと一緒に失せろ!!」 


 武器を失ったことにより素手で攻撃するしかないのだ。

 例え武器を隠し持っていたとしても、リーダー格の男が一番腕が立つと思われ無駄なあがきのはず。


 「わ、わかった。この通りだ。お前ら!運べ!」


 サブリーダーらしき男が頭を深々と下げる。

 まともそうな奴だと見えて、どうして殺しをするのか?と思ったら、


 「今度会ったら殺してやるぜェ」


 目玉が飛び出しそうなほど目を開き、充血させながら吐き捨てた。


 「殺すだと?お前と俺とじゃ実力が違いすぎるんだよ」


 「エリュシオン」の奴らは俺の言葉を最後にリーダー格の男を連れてそそくさと闇に消えていった。







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レイヤ 職業ソードマン Lv.88

【HP】574/574(+20)

【MP】458/458(+10)


【筋力値】523(+25)

【敏捷値】596(+145)

【幸運値】387(+10)

【魔力値】292(+10)


【攻撃力】77

【防御力】88

【回避率】10

【命中率】15


【装備追加効果】無し

【装備追加セット効果】無し

【装備追加スキル】無し


【称号】無し


【装備武器】バスターツーハンドソード

【装備防具】初心者のシャツ 初心者のズボン スズガントレット スズブーツ 獣のリング+2 ライトイヤリング+2 ライトペンダント+2 シルバーウォッチ 

【装備ペット】無し


【習得スキル】スラッシュLv.43 バーティカルLv.43 スクエアLv.39 ホリゾンタルLv.36 ペネトレイトLv.35 ストライクLv.31 パワーウェーブLv.26 ダブルスラッシュLv.20 メテオスイングLv.20 スピードスターLv.17 ソードバーストLv.16 ビハインドエアLv.16 ダストストリームLv.13 シノハユLv.5 鍛冶Lv.8 錬金術Lv.5 細工術Lv.1 エンチャントLv.1 研磨Lv.2 料理Lv.3


【所持アイテム】薄い布の寝袋 銅色ハンマー ハニビー印の高級はちみつ 赤色の小さなポーション×3 鉄の仮面 シャークプラントの垢が残った歯×79 トレントの枝×122 ハリガネスネークの針金×69 レッドドラゴンソード 回帰の結晶 


【所持金】340105MIL 

   


 

 

 


 



 


 

 

 


 

 


 


 

 

 

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