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第33話 申し入れ

 「よく来てくれたね、レイヤ君、あくみ君、おとぎ君」


 昨日来た酒場の2階の部屋にいる。

 目の前に座っているのはラスコッドだ。

 昨日は黄色のネクタイだったが、今日は紫色でエナメル質のネクタイだ。

 眼鏡の後ろの目は微笑んでいるが、何か冷たさを感じさせる。


 おとぎはここに来ることを嫌がっており、何とか説得して連れてきたが、ラスコッドを見ると泣きそうな顔をしている。

 何かされたわけではなく、本当にこの男が苦手なのだ。


 「二人には俺から昨日のことについて話しました。では詳細の部分を教えてください」


 昨日は契約をしただけで依頼の内容を聞いていない。

 

 「本当はトルーアで警護して欲しいのだがねえ。だが、チミ達のレベルだと頼りないからとりあえずレベル75にしてきてくれ給え」


 話が違うと怒鳴り散らしては駄目だ。

 昨日は感情を爆発させたが、今日はずっと冷静でいると決めているため静かに言った。


 「それだと俺が一人でレベルを上げた後に、仲間を探して、個人でトルーアを警護したほうが良いという結論に至るのですが?」


 その条件では俺にメリットが一つもない。

 しかし、ラスコッドは何か考えているはずだ。


 「確かにそうだねえ。だが、これはチミが望んでいることを叶えるためでもあるのだよ。チミはトルーアの秩序が成り立ってほしいと思っているのではないのかね?」


 遠回しな言い方であるので何を言いたいのかわからないが、俺が望んでいることの一つにトルーアの秩序が成り立ってほしいことはある。


 「そうですが、何を言いたいのですか?」


 「くふふふ。経験値ポーションといえばわかるかね?」


 「・・・・・・!?」


 その手があったか。

 経験値ポーションというのは使用したら経験値を得られる代物だ。

 

 「何に使うのですか?」


 「私のギルドの者達に支給する」


 「・・・他のプレイヤーに配ることはできないですか?」


 「それは無理な相談だ。私は商会ギルドの者なのだよ?」


 小さな期待を膨らませたが俺の提案は現実的ではない。ラスコッドは自分の利益にならないことはしないからだ。

 ここは一度譲歩する。


 「わかりました。ですが経験値ポーションはドロップ率が低いです。その点はどう考えていますか?」

 

 ラスコッドが自分の利益にならないことをしない前に、経験値ポーションは滅多にドロップするものではない。

 俺が質問するとラスコッドは首を傾げる。


 「そうか、レイヤ君は高難易度ダンジョンにしか潜っていなかったから縁が無かったかもしれないねえ。私がチミにレベル75にしてほしいと言ったのはレベル75が適性レベルであるダンジョンに行ってほしいからなのだよ」


 レベル75が適正レベルのダンジョンはすぐに思いついたが、経験値ポーションのドロップ率は一律のはずだ。頭を抱えていると、あくみんが言った。


 「経験値の泉のことでしょうか?」


 「さすがレイヤ君のお仲間だねえ!フハハハハハ!!」


 あくみんがそう言ってもすぐにはわからなかったが、俺はログイン時に出てくるアップデート情報の事を思い出した。

 経験値の泉というのは75レベル以上100レベル未満のプレイヤーだけが入場可能なイベントマップ。

 初心者プレイヤーが楽しく遊べるように設置され、適性レベルが75レベルなのは転職できる100レベルまで一気にブーストさせるためだったはずだ。

 しかし、そこまでしか知識が無かったのであくみんの肩を指でつんつんして説明を求める。


 「経験値の泉というのは毎月1日の日だけ入場できるマップで、そこにいるモンスターを倒すと必ず経験値ポーションがドロップするんですよ」


 そうか、だから女王蜂のクイーンズスピアが多くの初心者プレイヤーに流通していたのか。

 女王蜂のクイーンズスピアはレアイテムだが、レベルが上がるとすぐに優秀な武器が手に入るからな。

 俺は一人納得する。


 ・・・1日?

 今日の日付って―――


 「あくみ君が言った通りなのだよ。そう1日にね」


 ラスコッドは俺の顔を見てニヤリと笑う。

 この男は俺が考えていることが読み取れる能力でも持っているのだろうか?

 気持ち悪い。


 「今日は10月31日なので明日ですね・・・」


 あくみんは諦めたように言った。


 「明日ですか?」


 内心は驚いたが、ポーカーフェイスでいく。


 「くふふふ。チミ達なら今日中にレベル75にするのは簡単なことではないのかね?」


 今のレベルは30。

 できないことも無いが―――


 「無理ですよ。昨日話しましたが、今の〈Fantasy Tale〉では血を流します。俺たちに死ぬ危険を冒してでもレベルを上げろと言うのですか?」


 一日で75レベルにするならば20以上レベルが上のモンスターを狩らなければ間に合わない。

 血を流さず、HPが減少するだけのレベルマージンを取って、安全に狩りをしていたら50レベルが関の山だ。

 ラスコッドはそのことをわかって言っているのだろうか?


 「フハハハハハ!!レイヤ君にそんなことをさせるわけがないだろう!ほら見給え。これだ」


 ラスコッドは机の下に置いていたものを取り出す。

 それは緑色と黄色の液体で満たされた2本のビンだった。

 それも3セット。

 ポーションによく似たアイテムではあるが、ビンは奇麗に飾り付けられてある。

 一見していかにも普通のアイテムではないという雰囲気を醸し出している。


 「・・・秘薬アイテムですか。どこでそれを?」


 2つのアイテムを見て俺は思わず生唾を呑み込んでしまった。

 緑色の液体のアイテムは経験値増加の秘薬というアイテムだ、3時間経験値取得量を3倍にする超レアアイテムだ。だが、その隣の黄色の液体のアイテムのレア度はそれ以上だ。

 全ステータス上昇の秘薬というアイテムで、あらゆるステータスが5時間の間2倍になる。

 このアイテムはラスボスを倒すときに使おうと思っていたアイテムだ。

 

 「それは企業秘密だよ」


 全ステータス上昇を手に入れるにはモンスタードロップしか方法が無かったはずだ。

 それもダンジョンボスだけで、ドロップ率は数十万回に一度のはずだ。

 やはりこの男は侮れない。

 

 「そのアイテムがあれば今日だけでレベル75にすることはできるでしょう。ですが、それを使ってもいいんですか?」


 超レアアイテムであるので俺たちではなく「EWSNカンファレンス」で使えばいいはずだ。


 「くふふふ。これは投資でもあるのだよ。部下が殺されたことは聊か腹の虫がおさまらなくてねえ。私が直々に潰したいところだがそれは専門外なのだよ」


 ラスコッドはブルーカラーではなく椅子に座っているホワイトカラーだ。

 この男に商業的な部分で勝る者はいないだろう。だが、「EWSNカンファレンス」を襲っているのは「エリュシオン」という猟奇的なPKギルドなのだ。


 自画自賛するわけではないが、「エリュシオン」を一度潰したのは「果てなき幻影」の力があったからだ。ラスコッドはもう一度俺たちに潰させようとでも言うのだろうか?


 「いいんですね?それならばありがたく使わせていただきますよ?」


 ラスコッドは「潰す」と言っているがその言葉をそのままの意味で取ってはいけないだろう。

 俺はこの男が言う「潰す」という意味ではなく、そのままの意味での「潰す」を行うつもりだが、レベルを上げなければ先には進めない。

  この男の掌で踊っているような気がするため気が進まないが、仲間と全てのプレイヤーのためだ。


 俺は2つのアイテムを取ろうとしたが、ラスコッドは手のひらを前に出す。


 「待ち給え。チミ達3人分の秘薬しかないが、チミ達は私の部下と一緒にレベルを上げてもらう」


 「どうしてですか?」


 「パーティーを組んだ方がモンスター一匹当たりの経験値量が増えるからなのだよ」


 ギルドメンバーといつもパーティーを組んでダンジョンに潜っていたので常識的なことだったが、それを聞いたのは、この男にやり返そうという気持ちが芽生えたからだ。

 

 幽閉される前はこの男とこのように酒場の2階でよく話をしていた。

 俺が劣勢ではあったものの、戦闘面の話では俺が優位になることがあった。

 だから、いつもならここでラスコッドにダメージを与えるようなことを言ってやり返すのだが、今はそうすることはなかった。

 

 なぜなら、この男が今最大限の誠意をもって頭を下げているからだ。

 本当に頭を下げているのではないが、俺たちに超レアアイテムを提供しようとしていることから窺える。


 ラスコッドは他人が利益を得るようなことを提案することはない。

 それなのに、俺たちに超レアアイテムを差し出そうとしている。

 俺と同じように大切な仲間を守ろうとしているのだ。

 全てが憎たらしい奴ではあるが、心の底から憎めるような奴ではないのだ。


 少し返事が遅れてしまったが、俺は申し入れを受け入れる。


 「・・・わかりました。あなたの仲間と一緒に行動します。俺たちは今すぐ準備を整えてきますので、あなたの仲間にも早く来るように言っておいてください」


 「わかった。東の架け橋に集合するように言っておこう。持っていくといい」


 俺はテーブルの上のアイテムを全てアイテムストレージに入れる。


 「あくみん、おとぎ行くぞ」


 あくみんは普通に立ち上がって扉を開いたが、おとぎは固まったままだったので昨日と同じように背負って外に出て2階の部屋の扉を閉める。

 閉めた後には、小さい声ではあったが、ラスコッドの声が確かに聞こえた。

 

 「・・・感謝するよ、レイヤ君」







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レイヤ 職業ソードマン Lv.30

【HP】166/166(+20)

【MP】118/118(+10)


【筋力値】152(+25)

【敏捷値】247(+145)

【幸運値】88(+10)

【魔力値】54(+10)


【攻撃力】77

【防御力】88

【回避率】10

【命中率】15


【装備追加効果】無し

【装備追加セット効果】無し

【装備追加スキル】無し


【称号】無し


【装備武器】バスターツーハンドソード

【装備防具】初心者のシャツ 初心者のズボン スズガントレット スズブーツ 獣のリング+2 ライトイヤリング+2 ライトペンダント+2 シルバーウォッチ 

【装備ペット】無し


【習得スキル】スラッシュLv.23 バーティカルLv.24 スクエアLv.20 ホリゾンタルLv.17 ペネトレイトLv.16 ストライクLv.12 パワーウェーブLv.7 鍛冶Lv.8 錬金術Lv.5 細工術Lv.1 エンチャントLv.1 研磨Lv.2 料理Lv.3


【所持アイテム】薄い布の寝袋 銅色ハンマー ハニビー印の高級はちみつ 青色の小さなポーション×15 赤色の小さなポーション×3 鉄の仮面 経験値増加の秘薬×3 全ステータス上昇の秘薬×3 回帰の結晶 

【所持金】37792MIL 




 


 



 


 

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