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第30話 腹黒メガネ

 その言葉を受けて二人の大男は俺の肩から手を放し、元の位置へ戻って警備を再開する。

 二人の大男を制した高身長の男はスタイリッシュな黒縁眼鏡をかけており、短い髪は整髪料でガチガチに固めたように後ろに流れている。胸には黄色のネクタイが垂れて、スーツを着ている。

 どこぞの営業マンのようないで立ちだ。

 パッと見は清潔感が漂っており第一印象は良いかもしれないが、眼鏡の後ろのややにやついた三白眼は良い人であるとは語っていない。


 部下を鎮めた営業マン風の男は人差し指をくいくいさせる。

 ついてこいという意味らしい。

 促されるまま薄暗い酒場に入ると20人以上もの柄の悪そうな男たちが腕を組んで俺をジロジロと見つめてくる。


 この男たちはプレイヤーではなくNPCだ。

 もしかするとプレイヤーの一人二人はいるかもしれないが、ここの酒場はNPCが経営しておりNPCが客としてくることがあるのだ。それもスラム街に住んでいるいかにも悪そうな奴らが。


 胸元を掴み取るようなことはされず1階の酒場ではなく、底が抜けそうな階段を昇り2階へ。

 2階には物置のような小さな部屋があり、部屋の中は小さなテーブルとソファーのみという簡素なインテリアだった。


 「掛けてくれ給え」


 男がそう言い、これまでに何度か座ったツギハギだらけの固いソファーに腰かける。


 「やあ、久しぶり・・・なのかね?一位君」


 一位という部分を強調してくるが嫌味ったらしくはなくむしろ爽やかだ。


 「その呼び方はやめてくださいよ。腹黒メガネさん」


 それでも癪に障ったので言い返す。


 「おおっと、そういうチミもじゃないかい。レイヤ君」


 「すみません黒メガネと言おうとしただけだったのですが、口が滑りました。ラスコッドさん」


 「それはレイヤ君が常日頃私に対して思っていることだと思うのだがね。まあいい、その鉄仮面を外してはどうかね?」


 黒縁眼鏡をかけた営業マン風の男―――ラスコッドには俺の顔を何十回も見せているので視界を狭めていた装備を外す。そうしたら頭から汗が伝り、頬が痒くなる。

 熱く感じていなかったのは冷や汗が流れていたからだろう。

 というより汗を流すようになったのか。


 「よく来てくれたねレイヤ君。先ほどの無礼は謝っておこう」


 「私の招待客だ」と言ったほどなので、話は通しておけ!と言いたいが、既にこの男の巧みな話術は始まっている。話術に嵌らないためにできるだけ無感情で答える。


 「いえ、大したことはないので。ところでどうやっておとぎに俺を呼ばせたんですか」


 おとぎは今日の朝「商会ギルドの旦那」が俺を呼んでいると言っていた。

 それがこのラスコッドだ。


 「おとぎ君とは偶然出会ってね。話しかけたら泣きそうな顔をしていたものだから嫌われたのかと思ったよ。フハハハハハ!!」


 ラスコッドは高く笑う。

 「嫌われたと思った」ではなくおとぎは既にこの男を嫌っているし、苦手としている。

 俺も苦手だがここに来たのはこの男の力を借りなければ物事が良い方向に進まないからだ。


 「客人にはお茶を出したいところなのだがね、所持物を全てロストしたものだから我慢してくれ。いっそ階下の野蛮人共を殺して酒でも奪ってくるかね?」


 NPCを殺すことはできないはずなので冗談のはずだ。

 しかし、この男の場合冗談のようなことでも事実の場合があるので恐ろしい。


 「冗談はやめてください。それよりも早く用件を話してください」


 「くふふふ、つれないねえ。だが、事態は一刻を争うものであるため本題へ入ろう」


 ラスコッドは不敵に笑う。

 今の状況を軽視していたわけではないが、この男が「一刻を争う」と言った。

 それほどまでに今の状況は悪いと思われる。


 「実はまたレイヤ君の力・・・いや、果てなき幻影の力を借りたい」


 ラスコッドはにやついていたが、相手を射抜くような鋭い目つきに変わり、爽やかではなく重々しく強く言った。


 「それはなぜ」とは言えずにラスコッドはすぐに言葉を続ける。


 「レイヤ君もわかっていると思うが、今の〈Fantasy Tale〉は遊びではなく我々にとってもう一つの現実となってしまった。それはつまりログインした時に届いていたメッセージに書かれていた通り、〈Fantasy Tale〉に酷似した異世界に来てしまったということだ。初めは何ら変わらぬ光景であったから何かの冗談だと思ったのだがね、どうやら本当らしい」


 ラスコッドは俺に視線を向けてそのまま黙る。

 異世界であることが事実である理由を述べないのがまたいやらしい。

 この男は自分の口から重要なことは言わないのだ。


 「・・・というと?」


 俺から情報を聞き出そうとしていることはわかっているので、無駄なことを言わない。


 「トルーアにいるプレイヤーは既に知っていることだが、二人のプレイヤーが実際に死んだ。HPがゼロになったからでもあるが、そうではない。血を流してね」


 俺がそのことを知っているという前提でラスコッドは言った。

 二人のプレイヤーとはおそらくギルドホール前で死んだ男と女性プレイヤーのことだ。


 「それは俺も知っていますよ」


 「だろうね。それなのにどうしてイグニスに行ったのかね?」


 鋭い目つきであるのに、にやついたように目は笑い、ラスコッドは挑発気味に言った。


 俺の行動をなぜ知っているのか問い詰めたいが、この男は俺を揺さぶっているのだ。

 このまま冷静を保とう。

 

 俺の行動を知っていることに思い当たることとしたら、男と女性プレイヤーが死んだら、その後50人以上の集団が割り込んできて血まみれの現場を封鎖した。

 ラスコッドの部下だったのかもしれない。


 「おとぎを探しに行ったんですよ。それよりもどうして力を借りたいのか教えて欲しいのですが?」


 このまま話が長引いては俺が不利になっていくだろう。

 ここに来ることが自体が憂鬱なのだ。


 「そう急かさないでくれ給え。だが、その要望にはお答えして。君はここ2日イグニスに行っていたから知らないだろうが、今トルーアではPKが蔓延している。ざっと昨日だけで1000人以上が殺された」

 






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レイヤ 職業ソードマン Lv.30

【HP】166/166(+20)

【MP】118/118(+10)


【筋力値】152(+25)

【敏捷値】247(+145)

【幸運値】88(+10)

【魔力値】54(+10)


【攻撃力】77

【防御力】88

【回避率】10

【命中率】15


【装備追加効果】無し

【装備追加セット効果】無し

【装備追加スキル】無し


【称号】無し


【装備武器】バスターツーハンドソード

【装備防具】初心者のシャツ 初心者のズボン スズガントレット スズブーツ 獣のリング+2 ライトイヤリング+2 ライトペンダント+2 シルバーウォッチ 

【装備ペット】無し


【習得スキル】スラッシュLv.23 バーティカルLv.24 スクエアLv.20 ホリゾンタルLv.17 ペネトレイトLv.16 ストライクLv.12 パワーウェーブLv.7 鍛冶Lv.8 錬金術Lv.5 細工術Lv.1 エンチャントLv.1 研磨Lv.2 料理Lv.3


【所持アイテム】薄い布の寝袋 銅色ハンマー ハニビー印の高級はちみつ 女王蜂のクイーンズスピア 青色の小さなポーション×15 赤色の小さなポーション×3 鉄の仮面 回帰の結晶 


【所持金】37792MIL 

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