第26話 試み
イグニス側のネネ花畑入口を少し出て、人気が無い所へ移動。
だが、他のプレイヤーはどこにもいないようだ。
おとぎが新たにパーティーメンバーに加わり、レベルやHPが表示されている。
おとぎのレベルは33で俺よりも若干高い。
精霊石クエで多くの経験値を得られたからだろう。
今パーティーメンバーが表示されているのだが、上から順に俺、あくみん、おとぎとなっている。
おとぎは俺の下に表示されていないのが気に食わないらしくムスッとしている。
ギルドを創設するときはおとぎを最初に入れてやるか。
ならば、またトルーアのギルドホールに行かなければならない。
・・・いや、またではない。
ギルドを創設したのは夢であったのだ。
だから違う。
「このような場所で何をするのだマスター」
おとぎが不貞腐れて聞いてくる。
「それじゃあ話すが、おとぎ、召喚魔法は使えるか?」
「召喚魔法か?勿論だ」
「そうかよかった。なら召喚してくれるか?」
「何を考えているのかはわからないが、マスターが望むなら」
おとぎは黒のローブをバッと振り払い、ドンと地面に杖をつく。
その杖は木質で、先端には藍色でクリスタルのようなものが浮いている。
闇の石英という精霊石だ。
闇の石英は闇属性スキルの攻撃力を2倍にするため、自称黒魔道士のおとぎにピッタリのアイテムだ。
「ふふふ・・・。君も我が黒魔道を求めるか?だが、心するのだ。君が深淵を覗くとき、深淵もまた君を等しく覗いているのだ!さあ!終わりない輪廻の淵から出でよ!ダークウルフ!」
中二臭い召喚術の詠唱を終えるとフィールドボスモンスターが出てきたように魔法陣が地面に描かれてのっそりと召喚されたモンスターが出てくる。
俺の眼前で、四足歩行の黒い影が頭を上げて、グルルルル、と唸る。
四本の足は隆々しい筋肉、全身は針のように硬そうな黒毛、鋭利な牙が口から飛び出しており、その凶暴さが窺える。
しかし、召喚した主人に服従しているため、突然襲い掛かってくるようなことはない。
おとぎはダークウルフを召喚するときに長い詠唱をしていたが、そのような必要はない。
召喚魔法を使う時は「出でよ!ダークウルフ!」の部分で十分だからだ。
他にも「ダークウルフ召喚!」など大まかに言っておけばいい。
ダークウルフか。
ウィザードが習得できる召喚魔法の中では最も攻撃力が高いモンスターだ。
運がいい。
「この魔獣をどうしたらいいのだ?」
おとぎが何をすべきか聞いてくる。
ダークウルフを召喚させた理由はずっと疑問であったことを確認するためだ。
今でなくともトルーアに戻ってからもできることだが、機会があるうちにやっておきたい。
「ええとだな、ダークウルフに命令して俺に噛みついてほしい」
「ええ!?」
素っ頓狂な声をあげたのはおとぎではなく、ここに来るまでずっと黙りこくっていたあくみんだった。
「そ、そんなこと駄目ですよ!レイヤさんだって知っているでしょう!モンスターに攻撃されたらどうなるか!」
俺の身を心から案じていることがひしひしと伝わってくる。
それでも俺は自分のしたいことを主張する。
「もちろん知っているさ。だけど死ぬつもりは全くないから安心して欲しい」
「嘘ですよ!ギルドホール前の出来事があったのに・・・もう誰かが私の目の前からいなくなるなんて耐えられないです!」
「・・・落ち着け。もう一度言うが、俺は死ぬつもりはない。だからいなくなるなんてことにはならない」
あくみんは切迫した目つきでそのようなことはするな、と訴えてくる。
その目はひどく乾いており艶が無い。
何かに追いすがるようにも見える。
「でも・・・でも!・・・・・・」
「心配す―――――」
「心配するな」と言いたかったが。俺の言葉を遮っておとぎが大きな声で言う。
「ぎゃあぎゃあと五月蠅い。貴様は黙るのだ。マスターが何を企んでいるのかはわからないが、我は命令に従うのみだ」
「お・・・・・・わかりました。レイヤさんはそんなことをする人じゃないですもんね。ですが、私が危ないと判断したら弓を引きますから」
一度息を詰まらせ、納得したわけではないだろうが諦めたように言った。
「・・・ああ、構わないさ」
おとぎの機嫌を損ねたくないんだろうな・・・。
「それじゃあおとぎ。ダークウルフに攻撃を指示してくれ」
「了解したのだ。・・・闇の眷属であるダークウルフよ!我がマスターに向かい猛り狂え!」
ダークウルフは主人であるおとぎの命を受けると全力で地を蹴る。
透明な涎を垂らして走って来る様は現実の狼が獲物を狩りをする光景にしか見えない。
だが、俺は初日のウルフの戦闘でずっと疑問だったことがある。
俺の推測が正しいのなら、このことが証明されれば全てのプレイヤーにとって朗報となる。
失敗したら多少の痛覚は伴うだろうが、それでも俺は試す価値があると踏んでいる。
ダークウルフのレベルは12か。
おとぎの《ダークウルフ召喚》というスキルのレベルは12ということだ。
闇の石英により攻撃力は20レベル代並みとなっているはず。
不安は残るが装備により俺のステータスは30レベル後半ほどあるだろう。
一応、万が一を考えて剣を握っておく。
「グルルルルアアアアア!!!」
ダークウルフは高く吠えて大きく口を開ける。
口の中の大量の涎により糸をひいている。
ダークウルフは本能で知っているのか臓器が多い腹に向かって飛びついてくる。
狂暴な形相だ。
その姿を見て俺の心臓がドクンドクンと鼓動を早くし、緊張と共に恐怖がよぎる。
血に飢えた狼に襲われるというのはどうしても原始的な恐怖を思い出してしまうからだ。
―――――そして、ダークウルフは血と肉を求めて噛みつき貪った。
「うあああああああああああああああああああ!!!」
俺は絶叫する。
なぜなら、ダークウルフが腹部に噛みつくと痺れるような感覚に襲われたからだ。
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レイヤ 職業ソードマン Lv.29
【HP】106/156(+20)
【MP】108/108(+10)
【筋力値】137(+25)
【敏捷値】232(+145)
【幸運値】78(+10)
【魔力値】46(+10)
【攻撃力】77
【防御力】88
【回避率】10
【命中率】15
【装備追加効果】無し
【装備追加セット効果】無し
【装備追加スキル】無し
【称号】無し
【装備武器】バスターツーハンドソード
【装備防具】初心者のシャツ 初心者のズボン スズガントレット スズブーツ 獣のリング+2 ライトイヤリング+2 ライトペンダント+2 シルバーウォッチ
【装備ペット】無し
【習得スキル】スラッシュLv.23 バーティカルLv.23 スクエアLv.20 ホリゾンタルLv.17 ペネトレイトLv.16 ストライクLv.12 パワーウェーブLv.6 鍛冶Lv.8 錬金術Lv.5 細工術Lv.1 エンチャントLv.1 研磨Lv.2 料理Lv.3
【所持アイテム】薄い布の寝袋 銅色ハンマー 回帰の結晶
【所持金】25891MIL




