第25話 三日目の朝
「・・・・・・マスターよ。・・・マスター。起きるのだ」
・・・誰だ?
人が気持ちよく眠っているのに起こさないでほしい。
「マスター!」
俺を呼んでいる奴は、しびれを切らして叫びだす。
耳元で叫ばれたため思わず飛び起きてしまう。
「いたっ!」
「ぷげっ!」
ゴッツーンという音を響かせて俺の頭が落ちていき、ドタンという音がした。
ぶつかった奴が床に倒れたのだろうか?
衝撃が強かったため目が回る。
「レ、レイヤ。痛い・・・・・・」
俺とぶつかった奴がか弱く鳴いている。
お前が耳元で鼓膜が破れそうなほど叫んだせいだろ!と言いたかったが、起床時の喉の渇きにより叶わない。
本当に誰だろうか?
目をこすって視界を正常にする。
「・・・あ、おとぎか。大丈夫か?」
地面に倒れているのは金色の髪をしたおとぎだった。
おでこを手で押さえており、嗚咽をこぼしている。
前髪が長いため顔は見えないが、おそらく苦痛の表情を浮かべているだろう。
余りにも痛がっているのでおでこを撫でてあげようと思ったのだが、寝袋の中に腕が収まっていたため動かない。
お金を節約するために3人で一部屋を借りたのだが、ベッドが2つしかなく、寝袋を着てソファーの上で寝たのだった。
ふかふかのベッドで疲れを取りたかったが、床ではなくソファーにランクアップしたのでまだマシではあるが。
俺は寝袋から手を出しておとぎのおでこを撫でる。
「あ・・・・・う・・・・ぅ・・・・・・」
おとぎはうわずったような声を出すと。頭に乗せた手を下ろして正座状態に。
気持ちいいのだろうか?
絹糸のように柔らかな髪であるので俺も気持ちいい。
ずっと撫でていたいが、やりすぎは嫌かもしれないのでこのくらいにしておく。
「あ、ありがとう・・・」
おとぎはボソリと呟く。
「いや、俺が悪かったよ。俺を起こしてくれたんだろ?」
「うん・・・」
「ありがとな。というよりおとぎ、何か忘れていないか?」
そう言ったがすぐには気づかない。
だが、自分の言動を振り返ったのか目を泳がせてそーっと頭を横にずらしていく。
「ふふふ・・・。何も忘れてはおらぬぞ。もう朝の9時なのだ。早く世界都市へ行くのだ」
中二病キャラを思い出したようだ。
まだしっかりと定着はしていないらしい。
「ああ。身支度を終えたらすぐに出発しよう」
「ならば我は外に出ている。マスターはゆっくり準備するとよい」
おとぎは立ち上がり外に出るため扉を開くが、立ち止まって言った。
「・・・昨日言いそびれたが、商会ギルドの旦那がマスターを呼んでいたぞ。いつもの場所で、だそうだ」
そう言い残すと外に出て行った。
・・・商会ギルドの旦那か。
いつもの場所という事はトルーアだな。
そういえばあくみんはどこだろうか?
頭をキョロキョロと動かすとベッドで眠るあくみんがいた。
表情がこわばっており、熟睡しているようには見えない。
おとぎに拒絶されたのが余程ショックだったのだろう。
・・・あれだけ仲が良かったのにな。
あくみんが起きるまでの間、俺も外に出てポーション類でも補充しておこう。
昨日の夜、浮遊城イグニスは手が届きそうなほどの高さだったが、今は粒のように小さくなってしまっている。
ネネ花畑で見かけたプレイヤーは城の中で精霊石クエに励んでいることだろう。
宿へと歩いていくと、表に2人の目鼻立ちが整った女の子が立っている。
知り合いなのか他人であるのか微妙な距離を保っているようだ。
「おとぎー!あくみん!待たせて悪い!」
俺の呼びかけに反応して2人とも振り向く。
「ふふふ・・・。特に問題はない」
おとぎは余裕ぶって答えてくる。
「・・・あくみん、おはよう」
「お、おはようございます」
あくみんはやはりどことなく元気がない。
ちらちらとおとぎを伺っておりどう考えても昨日の一件を気にしているのだろう。
「マスター、何をしている。早く行くのだ」
一番早く起きていたおとぎが急かしてくる。
何時に起きていたのかは知らないが、早起きしていたため待ちきれなくなったのだろう。
今の時刻は午前10時。
トルーアからイグニスまで行くのに15時間ほどかかったため、これでは日をまたいでしまう。
時間がわかったのは腕時計を購入したからだ。
ステータスが上昇するアイテムのため少し奮発した。
[戦闘装備:特殊] シルバーウォッチ 制限レベル:25 レア度:☆☆
装備効果:全基本ステータス+10
筋力、敏捷、幸運、魔力値が全て10上がる優秀なアイテムだ。
シルバーウォッチの分を宿代に回せばいいと思ったが、どうやら俺は自己強化できるアイテムに目が無いらしい。
長くMMOをプレイしていた弊害だろう。
「すまないが、少し待ってほしい。ひとつ試しておきたいことがある。街では目を引くからマップには出るけどな」
「何をするのだ?」
「マップに出てから話すよ。・・・その前におとぎ、ほらこれ」
おとぎの前髪が目の下まで伸びており、戦闘の邪魔になると思ったのでヘアピンを付けてやる。
このヘアピンは鍛冶スキルで作ったものだ。
「ふぇ・・・・・・」
おとぎはビクッとして驚く。
「これでよく見えるだろ?」
サラサラの髪の毛をヘアピンで留めるとパッチリとした深い黒の両目が光を浴びる。
「わ、我は闇に愛された黒魔道士!光は闇の天敵であるがマスターの命令ならば仕方がない!」
おとぎの中の設定では光は天敵らしい。
目を出した方が可愛らしいのにもったいないと思っていたが、こうも簡単だったとは。
久しぶりにおとぎの目を見た。
「それじゃあ行くぞ」
そう言ったらおとぎは速足で門へと歩いていく。
あくみんを見ると今のやり取りを見て疎外感を感じたのか俯いている。
いつかあくみんにも何かプレゼントしてやるか。
「ほら、あくみんも早く」
「はい」
あくみんは愛想笑いかもしれないが、ニコリと微笑んでくれた。
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レイヤ 職業ソードマン Lv.29
【HP】156/156(+20)
【MP】108/108(+10)
【筋力値】137(+25)
【敏捷値】232(+145)
【幸運値】78(+10)
【魔力値】46(+10)
【攻撃力】77
【防御力】88
【回避率】10
【命中率】15
【装備追加効果】無し
【装備追加セット効果】無し
【装備追加スキル】無し
【称号】無し
【装備武器】バスターツーハンドソード
【装備防具】初心者のシャツ 初心者のズボン スズガントレット スズブーツ 獣のリング+2 ライトイヤリング+2 ライトペンダント+2 シルバーウォッチ
【装備ペット】無し
【習得スキル】スラッシュLv.23 バーティカルLv.23 スクエアLv.20 ホリゾンタルLv.17 ペネトレイトLv.16 ストライクLv.12 パワーウェーブLv.6 鍛冶Lv.8 錬金術Lv.5 細工術Lv.1 エンチャントLv.1 研磨Lv.2 料理Lv.3
【所持アイテム】薄い布の寝袋 銅色ハンマー 回帰の結晶
【所持金】25891MIL




