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第12話 フィールドボスモンスター

 光り輝いてモンスターのシルエットが浮かび始める。その数は3つ。

 完全にその形が浮かぶと茶色のふさふさとした毛、つりあがった鋭い目、ピンと立った獣耳が映し出される。これが<Fantasy Tale>におけるモンスターのポップだ。



 【Normal Monster】ブラウンウルフ Lv.6 アクティブ

 


 【Normal Monster】ブラウンウルフ Lv.7 アクティブ

 


 【Normal Monster】ブラウンウルフ Lv.6 アクティブ



 わずか3m離れた所でポップしたブラウンウルフ3匹。

 だが、シルエットが浮かんでから動作可能になるまでに10秒ほどかかる。

 その間に俺は剣を構えてあくみんは後ろへ。


 「「「ぐるるるるるるるるるるるうううぅぅ!」」」


 10秒経ったことで姿を現し、動き出すブラウンウルフ。

 鋭い眼光を射すくめて、近くにいた俺に襲い掛かって来る。

 

 「ファイアーアロー!」


 すぐに飛んでくる炎の矢。弱点である目に命中して1匹のブラウンウルフが消えていく。

 他のブラウンウルフが怯んだので俺は《スラッシュ》を発動。

 1匹は倒した!

 だが、レベル7のブラウンウルフが残っており、再び襲い掛かって来る。

 スキル発動で硬直する俺。

 けれどあくみんが通常攻撃で矢を放ち、ブラウンウルフは「きゃいん!」とその風貌に似つかわしくない悲鳴を上げる。

 この攻撃により俺は追撃が可能となり、楽々と戦闘が終了。



 【両手剣専用スキル スラッシュLv.3のスキルレベルがLv.4に上昇しました!】

 【Lv.7に到達しました。おめでとうございます! HP+3 MP+3 筋力値+3 敏捷値+2 幸運値+2 魔力値+1 】



 あくみんもレベルアップしたようだな。

 今の戦闘で気になったことだが、あくみんは《ファイアーアロー》の後の通常攻撃で《矢生成》を使っていた。都合が悪そうだな。


 「なぁ、矢を入れておく矢筒が必要じゃないか?一々矢を作るのは面倒だろ」


 「そうですね、《矢生成》を使っていては次の攻撃に間に合わないかもしれないですしあったほうが嬉しいですね」


 《矢生成》で創り出された矢は一定の時間を過ぎると消えてしまうのだが、専用の矢筒に入れておけば消えることはない。よって、アーチャーにとっては必須の装備だ。

 トルーアで買っておけばよかったのだが、防具を優先したためお金が足りなかった。

 

 「それなら今日の狩りでお金が貯まったことだし、戻ったら―――――――」


 俺の言葉を遮って途轍もない轟音が鳴り響く。それも俺のすぐ背後で。

 雷鳴の如く轟くその轟音。

 周囲にいたモンスターたちはその音を聞いて逃げ去っていく。

 振り向くと地面に光り輝く円形の魔法陣が流れるように描き出されていく。

 これは―――――


 「フィールドボスだ!」


 フィールドボス。それは通常マップでいつポップするかわからない中ボス的な位置づけのモンスターのことだ。通常モンスターがポップするときと違い、出現を示す大地を揺るがすほどの大音量を響かせる。

 倒すとそこそこのお金とレアアイテムが手に入るため、その音と同時にプレイヤー達は集まってくるのだが―――――

 

 「フィールドボスが出てきたんぞ!退散!退散!」

 「死にたくなけりゃ逃げろ!」

 「うわあああああ!!!」


 そう叫び、近くにいたランカーや大手ギルドに所属していたプレイヤー達は脱兎のごとく一目散にその場から速やかに離れていく。

 通常モンスターと違いフィールドボスは強敵だ。今は逃げるのが吉だろう。

 逃げていくプレイヤー達の中、一人の男が地面に倒れた。


 「いてっ!・・・・・・おっ、おい!待ってくれよおおおお!!置いていかないでくれえええ!!」


 小太りで身長の低い男が仲間に助けを求める。

 左足に包帯が巻かれており血が滲んでいる。怪我をしているようだな。

 男と逃げていく男の仲間の顔は見たことがない。

 ランカーや大手ギルドだった奴らではないな。

 知らない者同士で組んだ野良パーティーか、ランカーや大手ギルドだった奴らよりは戦闘において劣る中堅ギルドだった奴らだろうか?

 それにしても―――――


 「仲間を裏切ってんじゃねえよ」


 歯をギリリと軋めた後に怒りに震えた放った俺の一言。感情が昂って胸が熱くなってくる。

 動悸が早くなるのを感じ、全身の血管が広がったのか頭に血が上り顔も熱くなってくる。

 俺には全く関係のない怒りだったかもしれない。

 それでも憤りを感じずにはいられなかった。

 

 「そんな資格俺にあるわけがないのにな」


 そう、俺にそんな資格があるわけないのだ。

 あんなことがあったくせに。


 「ああああああああああ!!待ってくれよおおおおぉぉ・・・」

 

 仲間が一度も振り返ることのない姿を見て、助ける気が無いことを悟ったのかうちひしがれて涙する小太りの男。辛いだろうな・・・。

 いや、これにおいても俺にそう思う資格は無いのだ。


 「レイヤさん!どうしますか!?」


 あくみんの言葉を聞いてはっと我に返る。

 怒りで動かされては駄目だ。冷静に、だ。

 冷静さを取り戻すために2度深呼吸。

 少しは落ち着きを取り戻したかな。


 冷静に分析すると今の状況は想像以上に危うい状況だ。なぜなら、フィールドボスモンスターはパーティー単位で倒すこと前提のモンスターだからだ。パーティーは最大で8人組める。

 今残っているのは3人だけ。1人は負傷しており戦える状態ではない。


 合理的に考えると小太りの男を置いて俺たちも逃げたらいいだろう。

 小太りの男の仲間もそう考えて見捨てたのなら称賛してやってもいい。そのクズさ加減にな。

 

 でも、俺が小太りの男を置いて逃げても無駄なのだが。

 フィールドボスモンスターが出現する魔法陣が描かれたとき、ファーストターゲットはその魔法陣から最も近いプレイヤーが取ることになる。つまり、俺だ。

 フィールドボスモンスターは最初に俺を攻撃してくる。

 一定時間経つと次は他のプレイヤーにターゲットが移る。

 そこまで戦い、小太りの男にターゲットを渡せば俺たちは安全に逃げられるだろう。

 だが―――――

 

 「ここで逃げるわけには行かねえんだよ」


 それは罪滅ぼしなのかもしれない。

 小太りの男にとっては迷惑な話だ。

 いや、助けてあげるのだから運がいいのかもな。

 わざと傲慢さを含んだ冗談を自分の中で飛ばして緊張をほぐし、空気を大きく吸い込む。


 「あくみん!あの男の隣で待機していろ!守るだけでいい!俺ができるだけ攻撃が飛んでおかないようにする!もし飛んできた場合はスキルで跳ね返せ!」


 「わかりました!」


 あくみんは小太りの男のもとへ駆け寄り、《矢生成》を使用して矢を弓につがえる。


 「見捨てたりなんかしませんからね!絶対に助けます!」


 小太りの男はそのたった一つの慰めの言葉を聞いてさらに涙を流す。

 裏切られたときに差し出される救いの手はどれだけありがたいものか。

 小太りの男は歪ませていた口を綻ばせて涙ながらに言った。


 「すっ、すま、ねえ・・・。助けて・・・ぐれて・・・」


 「それはあなたを本当に助けてから言ってください!」


 小太りの男の方はあくみんに任せておけば命は守れるはずだ。

 なんたって最強のギルド「果てなき幻影」のメンバーだったのだからな。

 いや、今もだ。昨日ギルドホールで創設したのだ。

 だが、まだ新生「果てなき幻影」は俺とあくみんだけ。

 他のやつらも見つけて全員が揃うまで死ぬわけにはいかない。

 ・・・絶対に生き残ってみせる!


 魔法陣から離れプレイヤーウィンドウを開きパネルを操作して青色の小さなポーションを6個、バタークッキーを1個具現化。

 戦闘の邪魔にならないように3個俺の右腰に下げビンが触れ合ってカンカンと鳴る。

 残り3個はあくみんの足元へ投げる。


 「持ってなかったろ!MPが切れたとき使えよ!」


 「はい!ありがとうございます!」


 バタークッキーは俺だけ使っておけばいい。あくみんはフィールドボスモンスターの攻撃を防ぐだけ。

 俺は攻撃をするだけ。レベル的に俺が攻撃をして幸運値を積んでいた方が効率がいい。それに、時間もかかる。パーティーにおいて役割分担は大事な要素だ。



 【バタークッキーの使用効果により5分間幸運値+30】



 バタークッキーを食べて幸運値が上昇。残りは1個。2個合わせて10分間だけのバフだ。

 背中の剣の柄をつかんで取り出し、斜めに構えて、左右どちらでもいつでも動けるように体勢を低く保つ。


 魔法陣が完全に描き出され、まばゆく光を放つ。

 剣の刃で目を隠し、薄目でまもなく出現してくるモンスターを見据える。

 光が消えると魔法陣内で鮮紫色がぐるぐると蠢いていく。

 それは星や光さえも飲み込む暗然たるブラックホールを思わせる。

 

 蠢きが止まると今度は霧のような闇が立ち込めてくる。

 漆黒だ。

 黒すぎて微かに目視できるだけ。


 すると、魔法陣からジャララ、と金属音をたててボロボロの鎌が出てくる。

 その鎌を握る黒色の右手の拳が魔法陣の外へドン、と打ち付けられる。

 今度は拳から肘まで出てきてこちらも魔法陣の外へ。

 土煙が舞い上がりさらに視界を悪くする。

 同様に左腕も出てきて、そちらも鎌を握っている。

 ジャララという金属音の音源は鎖でつながれている鎖鎌だ。


 魔法陣からは後ろ向きに反り返った白黄色のツノが飛び出している。

 両腕はもがき、外へ外へと這って来る。

 そして、頭部と広い肩幅の体躯が露わになったとき、高く飛び出した。


 ドスンと両足で地に着き、振動が伝わってくる。

 体長は3mほどの大きなモンスター。

 通常モンスターとは明らかに雰囲気が異なる異質なそれ。



 【Field Boss Monster】草刈羊男爵 Lv.15 アクティブ



 初心者の頃何度もエンカウントして俺のHPゲージをゼロにしたそいつ。

 当時の腹立たしさを思い出させてくる。


 「よう・・・久しぶりだな・・・」







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レイヤ 職業ソードマン Lv.7

【所属ギルド】果てなき幻影


【HP】52/52(+20)

【MP】37/37(+10)


【筋力値】25(+5)

【敏捷値】23(+5)

【幸運値】13(+0)

【魔力値】6(+0)


【攻撃力】23

【防御力】43

【回避率】0

【命中率】7


【装備追加効果】無し

【装備追加セット効果】無し

【装備追加スキル】無し


【称号】無し


【装備武器】イルダブルソード

【装備防具】初心者のシャツ 初心者のズボン メタルガントレット メタルブーツ 獣のリング 

【装備ペット】無し


【習得スキル】スラッシュLv.4


【所持アイテム】青色の小さなポーション×3 バタークッキー 薄い布の寝袋 ウルフの牙 回帰の結晶


【所持金】2882MIL

 



 

 


  

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