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空木コダマの奇妙録 ~百怪対策室におまかせを~  作者: 中邑わくぞ
だいじっかい ふたくちおんな
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だいじっかい そのさん

 コダマさんに連れられて、わたしは百怪対策室に来ています。


 応接室らしい場所に通されて、一応は素直にソファに座っているのですが、なんとも油断できません。


 なんと言っても、外見は普通のアパートの一室なのに中はとっても広いことです。


 せいぜい1DKぐらいと思って入ってみたら、広い廊下にいくつものドアが並んでいました。


 なんでしょうかここは? わたし、不思議の国に迷い込んじゃいました?


 白ウサギを追っていたつもりはないので、ハートの女王の前に引きずり出される前に逃亡を図りました。


 コダマさんに襟を掴まれて戻されてしまいましたけど。


 ちょっとはレディの扱い方をわきまえてほしいと思います。


 閑話休題。


 とにかく、わたしは今、コダマさんの隣に座って室長さんとやらを待っています。


 インターホンでは返事をしていたみたいですけど、何か用事があってちょっと手が離せないらしく、まだわたしの前には姿を現していません。


 用事って何でしょうか? 


 もしかして、わたしが来ることを予見していて、すでに解決策を用意している最中とかなのでしょうか?


 だとしたら、室長さんとやらはすごい人と言うことになります。


 きっとハットの似合う紳士だと思います。


 間違っても、中二病を(こじ)らせたような女子ではないでしょう。


 うんうん。


 「待たせたなコダマ。急に統魔から電話が来たから対応していてな。で、そっちは誰だ? 依頼人か?」


 ドアを開けて入ってきたのは中二病を拗らせた系の女子でした。


 世の中は無情です。


 いえ、わたしにだけ厳しいのかもしれません。


 気分はシンデレラです。それとも白雪姫でしょうか?


 金髪碧眼まではいいんですけど、ジャージに白衣はないと思います。


 一級品の懐石料理にバーベキューソースをかけてある感じです。


 ずかずかと歩いて、拗らせ系女子はわたしとコダマさんの対面のソファに座ります。


 座り方も堂々としたものです。


 もしかしたら、本当にこの人が室長さんなのかもしれません。


 むむむ。世の中わからないものです。


 「さて、初めましてお嬢さん。私が百怪対策室室長、ヴィクトリア・L・ラングナーだ。よろしく」


 とても気さくな感じで拗らせ系女子、もとい、ヴィクトリアさんはそんな風に自己紹介しました。


 「あ、ええと……浦原花帆です。解決してほしいことがあって、来ました」


 「だろうね。そうじゃなければここには来られない。コダマが見当違いをかましている可能性もあるが、それは無視しよう」


 偉そうです。


 こういう関係の人には初めて会うんですけど、もしかしてこういう怪しい職業の人はみんなこうなんでしょうか?


 営業スマイルがとってもうさんくさいです、


 「言いたいことはわかるんだけどさ、一応この人は専門家だから話してくれないかな。君の親友に起こった出来事を」


 横からコダマさんがそんなことを言ってきます。


 ふむ。確かにこのままこうやって座っているだけでは心優ちゃんを助けることはできません。


 損して得とれ、です。


 わたしはヴィクトリアさんに、わたしが見た心優ちゃんの異常な行動と、そして大きな口のことを話しました。


 コダマさんに話した内容と一緒なのですが、仕方がありません。


 コダマさんがさっきとっていたメモは一体何なんでしょうか? 仕事してるアピールですか?


 聞き終わってからしばらく、ヴィクトリアさんはなにかを考えるような仕草をしていましたが、


 「そうだな。多分それは二口女(ふたくちおんな)だな」


 突然、そんなことをヴィクトリアさんは言いました。


 なんですかそれ? っていうかネーミングがストレート過ぎませんか?


 「二口女ってなんですか? 妖怪ですか? どうやって解決するんですか? そもそも心優ちゃんは人間だから、二口女なんていう種族じゃないと思うんですけど。それとも二口女っていうのは病気みたいなものなんですか?」


 「……うん。まあ、私の話を聞きなさい」


 思いついた疑問をすぐに質問するのはいいことだと思うのですが、ヴィクトリアさんはなんだかちょっと反応が鈍いみたいです。


 こんなことで世の中渡っていけると思っているのでしょうか?


 仮にも室長だなんて偉そうな肩書きがついているのなら、もう少しばかり役に立ってくれないと困ります。


 思わず身を乗り出していたわたしの肩にコダマさんが手を置きました。


 「さすがの室長も、それだけの質問にはいっぺんに答えられない。とりあえずは話を聞いてみてくれないかな?」


 そんなことを言ってきます。


 そんなのは、はっきり言ってプロ失格だとは思うのですが、心優ちゃんを救うためです。ここはわたしが大人の態度を示しましょう。


 「仕方ありません。お話を聞くことにします」


 「そんな性格でいままでよく生きてこられたね。君は」


 なんだかコダマさんにけなされているような気がするのはわたしの考えすぎでしょうか?


 とりあえず、ソファに座り直します。


 「あー……いや。えーと、浦原クンだったかな? キミはもう今日は帰っていい。明日コダマがキミの親友に取り憑いた二口女を解決するから」


 詳細は明日、キミの学校に侵入したコダマが教えてくれる、などとヴィクトリアさんは責任放棄のようなことを言い出しました。


 「なんですかそれ! コダマさんがきちんと心優ちゃんを救ってくれるっていう保証はあるんですか? もし一パーセントでも失敗する可能性があるなら責任はヴィクトリアさんが取るんですか? それともコダマさんが鞭打ちの刑に処されるんですか?」


 ちょっと見てみたいです。鞭打ちの刑。コダマさんは無事では済まないと思いますが。


 声を荒らげるわたしを無視してヴィクトリアさんはタバコを咥えながら何かを書いています。


 「ほれ、二口女の退治方法をここに記した。ついでに明日コダマに開けるための鍵を持たせるから、その時に開けるといい。そしたら二口女も退治できる」


 あとは明日キミの学校にコダマが行くからそのときな、とヴィクトリアさんが締めくくって、そそくさと部屋から出て行ってしまいました。


 後にはコダマさんとわたし、そして一通の封筒が残されました。


 なんでしょう。このあしらわれてしまった感じ。


 キレそうです。


 怒りをヴィクトリアさんが残していった封筒にぶつけようとしましたが、端っこさえも破れませんでした

。何でできているんでしょうか?


 しょうがありません。


 ここは無責任な専門家の代わりに、助手のコダマさんで我慢することにします。


 「ではコダマさん。明日わたしの学校で会いましょう。もし解決できなかったら二口女にコダマさんが食べられている間にわたしは逃げます」


 「ホントいい性格しているね。君は」


 なぜか呆れたようにコダマさんが呟きました。



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