だいななかい そのなな
急いで家に戻って、ああでもないこうでもないと悩みながら着替えたけど、結局は満足いくコーディネイトにはならなかった。
デートなんて何着ていけばいいのかわからないもん!
しょうがないからフリルのついたブラウスにふわふわのスカートにした。
三十分後に百怪対策室に戻った時には空木君はもう着いていた。
……こっちは一所懸命に選んだって言うのに空木君はジーンズにパーカーという普通のファッションだ。
もうちょっとおしゃれしてほしかったかな。
「じゃあ、二人とも軍資金だ。これで存分にデートしてこい。あとは任せた」
ぽいっとヴィクトリアさんは空木君に封筒を投げる。
なんとか空木君は受け取って、ぶつぶつ言いながらも肩から掛けていたショルダーバッグに入れる。
同時にヴィクトリアさんは応接室から出ていく。
たぶんお昼寝をするつもりなんだと思う。
こうして、わたしと空木君のデートが始まった。
「なあ、笠酒寄、こんなことに巻き込んじゃって悪いと思ってる」
百怪対策室から出て、とりあえず遊べる場所にいこうということになったから、わたし達は電車に乗ってる。
隣に座ってる空木君からそんなことを言われた。
「ううん、そんなことないよ。だってわたし達が解決しないと他の人に迷惑がかかっちゃうんだから」
「それでも、ほら、初デートなのに強制されたみたいになってしまって……女子的にはどうなんだ?」
う~む。
たしかに女子的には初デートは空木君から誘ってほしかったかもしれない。
でも、こうして一緒いるってだけで、そんなことは吹きとんじゃうぐらいに、舞い上がってしまう。
具体的に言うと、さっきから空木君と手をつなぎたい。
でも、ここは彼氏のほうからつないできてほしいと思ってしまうのはいけないことかな。
……空木君ヘタレっぽいし、ここはわたしがリードするべきかもしれない。
なんてことを妄想していると、目的の駅についてしまった。
残念。
結局、わたしは空木君の質問には答えられなかった。
四星駅。
わたしが住んでいる町の隣の隣だけど、それなりに栄えてるから遊びに行くときには大抵はこの近辺になる。
平日のお昼でもけっこう人はいたりするから不思議だ。
お店はいろいろあるから、とりあえずは軍資金の確認だとおもう。
「空木君、ヴィクトリアさんからもらった封筒、いくらぐらい入ってるの?」
「そういや、確認してなかったな」
空木君はごそごそとショルダーバッグを漁って、もらった封筒を取り出す。
開けてみると、十枚の万札が入っていた。
「げ」
「うわあ」
思わず声をあげてしまう。
「高校生のデートを何だと思っているんだ、あの人は……」
空木君はちょっと嫌そうだ。
確かに、ちょっとびっくりしちゃったけど、どうせ統魔に請求されるんだから使わないと損だと思う。
というわけでわたしの中ではもう最初の目的地は決定してしまった。
「空木君、これはいくしかないね」
「……どこにだよ?」
「ショッピングだよ!」
大型のショッピングモールにはいろんなお店がある。
その中でも一番多いのは服屋さんだと思う。
そんな中の一つにわたしと空木君は来ていた。
もちろん女の子向けの店だ。
「どうかな? 空木君」
「緑と赤は補色関係にあるから相性はいいけど、引き立ち過ぎて目にきついな」
むう。
結構自信あったんだけど、空木君的にはお気に召さない感じだったみたいだ。
「あと、上が緑で下が赤だから苺を連想してしまうな」
いいじゃん、苺。
甘酸っぱいやつが好き。
「じゃあ次のね」
「ほいほい。最終的には笠酒寄が好きなやつを購入していいて思うんだけどな」
……空木君って女子の心に対して鈍い。
ちょっとむくれながらも、わたしは次の服を試着し始める。
今日は絶対に可愛いっていってもらうんだから!
……こういうのもデートなのかな。
結局、わたしは五着も服を買っちゃったけど、空木君は一着も買わなかった。
「特にこだわりはないしな」
彼女とのデート用におしゃれな服ぐらいは持っててほしい。
でも、荷物を持ってくれるのはうれしい。
「次どうする? 何か食べに行くか?」
だめだ。このままじゃデートじゃなくて友達とのお出かけで終わっちゃう。
それじゃあ織姫も彦星も納得しない。
もっとらぶらぶな感じが必要だ。
きょろきょろと周りを見渡してみると、『それ』はあった。
「空木君、あれ」
「ん? なんだよ」
わたしの指さした方向を空木君も見る。
〈花蜂にラブレター〉
映画だった。
たぶん、恋愛ものだと思う。
女優さんが写っているだけのポスターだから、詳細はわからないけど、デート中のカップルといったら映画でしょ!
暗い空間で、隣同士になったらいくら空木君が鈍くても、多少はどきどきすると思う。
そう決めたら、突進!
わたしは空木君の手を引いて映画館のほうに向かって行った。




