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だいななかい そのろく

 願いを叶える。


 ということは織姫と彦星に思う存分いちゃついてもらうということだ。


 ん? ということは空木君がこの知らない女子といちゃつくってこと?


 「ヴィクトリアさん。わたしは反対です。『怪』を野放しにしておくだなんてどんなことが起こるのかわかりません!」


 「本音は?」


 「空木君が他の女子といちゃつくだなんてむかつきます! はっ!」


 ヴィクトリアさんの巧妙な誘導尋問に引っかかってしまった。


 「まあそうだろうと思って、わたしにもアイディアがある。おい、織姫、彦星。お前らもちょっとこっちに寄れ」


 ヴィクトリアさんの脅しみたいな言葉に素直に二人は従う。


 四人が顔を突きつけあう形になってしまった。


 「じゃあ、始めるか」


 気軽にそう宣言して、ヴィクトリアさんはいきなり織姫(二年生女子)の首筋に噛みついた!


 「「「!」」」


 わたしも、空木君(彦星)も、噛みつかれている織姫も驚いているだけで何もリアクションできない。


 「ぁあ……くぅ……」


 なんだかちょっとえっちい声を出すのは反則だと思うんだけど、噛みつかれている当の織姫がいいならわたしはいいと思う。


 噛みついていた時間はほんのちょっとだったけど、解放された織姫はなんだかうつろな目をしていた。


 ……これってまずいんじゃないかなあ……。


 「次は笠酒寄クンな」


 「え? ちょっと待ってください。心のじゅんビぃ!」


 かぷり。


 抵抗する間もなく、わたしはヴィクトリアさんに噛みつかれていた。


 痛いはずなのに、なんだか気持ちいい。


 何かが私の中に流れ込んでくるのがわかる。


 それが何なのかはわからないけど、今はこの状態が続いてくれないかな、と思ってしまう。


 忘れてた。ヴィクトリアさんは吸血鬼だった。


 でもなんで? わたしの血を吸ってどうするんだろう? っていうかたぶん吸ってないけど。


 そんなことを考えるけど、流れ込んでくる何かにわたしは抵抗できない。なすがままだ。


 「……ぁ」


 ヴィクトリアさんの牙が離れると同時にちょっと声が漏れてしまった。


 ……恥ずかしい。


 「じゃあ最後はお前だ、彦星」


 「そんなことさせるもノグァ!」


 とっさに首筋をガードした空木君(彦星)だったけど、ヴィクトリアさんは噛みつかずに空木君の額をバシンと叩いただけだった。


 ……ちょっと残念なような、ほっとしたような複雑な気分。


 うつろな目の織姫と、叩かれた額を押さえている彦星。そして頭の中がぽわぽわしてるわたし。


 ヴィクトリアさんはいつも通り。なんだろう、これ。


 「いったいなもう! 室長、何するんですか!」


 「どうにか体の支配権は取り戻せたようだな。コダマ」


 あれ? 空木君?


 ヴィクトリアさんのことを室長って呼んでいるし、いつもの空木君?


 彦星は?


 「さて、そっちのお嬢さんを起こして帰ってもらえ。学校を抜け出してきているんだろう?」


 何が何だかわからないままにわたしと空木君は二年生の女子を起こして、百怪対策室から送り出すことになった。





 「……で、何がどうなっているんですか、室長?」


 いきなり知らない場所にいたことに困惑してる女子を送り出して数分後。


 わたしと空木君とヴィクトリアさんはいつもみたいにソファに座っていた。


 どうやら正気を取り戻したらしい空木君がヴィクトリアさんに尋ねる。


 「なに、私の能力で織姫を笠酒寄クンに移して、コダマの彦星を軽い封印術で黙らせただけだ。そっちのほうが都合がいいからな」


 すごく自慢げだ。


 「都合ってなんです? っていうか僕、なんか今日の記憶がないんですけど」


 「迷い星という『怪』に憑りつかれてたんだ。未熟者」


 「マジですか……」


 落ち込む空木君。慰めてあげたいけど、今はヴィクトリアさんの話を聞いた方がいいみたいだ。


 「迷い星が完全に肉体を支配してしまうまでには数時間かかる。その間にキミ達が存分にいちゃついてやればこいつらは霧散して来年の七夕までおさらばだ。だから命令だ。デートしてこい」


 それならしょうがない。わたしは空木君とデートしよう。また被害者が出ても困るし……ん?


 「あのー、ヴィクトリアさん。いま、デートしてこいって言いました?」


 「ああ、してこい。資金は私が出してやる。後で統魔に請求するからがっぽりとな。遠慮することはないぞ」


 「え。あの、その、あう……」


 あんまりにも突然の事態に大混乱。


 空木君の方もおんなじみたいだ。ぽかんと口を開けてる。


 「いいか? しっかりといちゃつけ。もう見てる方が恥ずかしくなってしまうぐらいにな。そうじゃないと迷い星は満足しないだろうからな。恋人どうなんだろう? 恥ずかしがることはない」


 まだ一時だから十分に時間はあるな、なんてことを呟いてヴィクトリアさんは完全に他人事モードだ。


 わたしは空木君の方を見る。


 空木君もわたしを見る。


 視線が合ってしまって、思わず目を背けてしまう。


 「そういうのはほかでやってくれ。というかまずは着替えてこい。制服のままじゃまずいだろう。三十分後に集合だ。行け」


 「「は、はい」」


 わたしと空木君、両方の声がそろった。



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