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第五怪 その4

 三人で矢筈さんのオフィスに向かう。


 まさか室長の運転するクルマに再び乗る日がこんなに近いとは思っていなかった。


 やたらに上機嫌の室長以外の僕たちは静かだ。というか今の室長が上機嫌過ぎてついていけない。


 「なんだぁ~コダマ。どうしたどうした? あのはた迷惑なサンジェルマンだけではなく、統魔にも一泡吹かせられるというのになんだその顔は。もっと笑え! こういう風にな」


 そんなことをほざきながらクハハハ! と室長は笑う。まるで悪役だ。


 僕と矢筈さんは後部座席に座っているので表情までは伺うことはできないが、恐らくはひどい顔をしていることだろう。見たくもないが。


 「ヴィクトリアさんはいつもああなのですか?」


 隣からささやくように矢筈さんが訊いてくる。


 「あんな感じといったらあんな感じなんですけど、今日は特におかしいですね」


 過去にサンジェルマンと何かあったのだろうか? いや、統魔設立以前に存在していた、と室長は言っていたからサンジェルマンの石関係でか。


 とはいうものの、あまりにも普段の様子と違うので気にはなる。


 なので訊いてみることにする。


 「室長。なんだかずいぶんとご機嫌ですけど、過去にサンジェルマン関係で何かあったんですか?」

 「ああ、統魔に所属していた時代にあのアホ関係で何度隠蔽(いんぺい)処理に駆り出されたことか。そのたびに私達は徹夜で事後処理の羽目になったからな。今でも統魔の隠蔽班は毎年発見されるサンジェルマンの石専用の人員を割いているぐらいだ」


 なるほど。統魔時代から悩まされていたらしい。それはいい。しかし、


 「ちょっと待ってください室長。毎年発見されているってどういうことなんですか?」

 「それがサンジェルマンの不死伝説の元になっているんだ。サンジェルマンの石は統魔で管理しているだけでも数百。未発見のものはまだまだあると推定されている。一説には人格を数千に分割したらしいからな」


 『怪』の原因になりそうなものがそんなにあるというのは考えるだけでも恐ろしい。しかし、なぜそれがサンジェルマンの不死伝説につながってくるのだろうか?


 「人格を分割したことによって、それぞれの石が持っている知識や性質は違ってくる。そして、別に一人の人間じゃないから同時に存在できる。その上に、鉱石ゆえに運搬は簡単だ。つまりは、だ。死んだあと数十年してから石の能力が発動した場合、何が起こると思う?」


 今回の室長はいつにもまして饒舌(じょうぜつ)だ。よほど苦汁をなめさせられたらしい。


 「さあ、結局ぼくはサンジェルマンの石がどういうことをやらかすかっていうことは聞いてませんから、わかりませんね」

 「ああ、そうだったな。すまんすまん。石は発動すると生前のサンジェルマンの幻影を生み出す。そしてそいつは石に分割された知識やら考えやらを勝手に披露しだすんだ」


 なるほど。ということは今回の『怪』はそのサンジェルマンの石の能力が発動した結果の産物ということか。矢筈さんが目撃したのは幽霊じゃなくて、サンジェルマンの幻影だったわけだ。


 そして、サンジェルマン自身が死亡した後に石が発動すると、世界各地でサンジェルマンを目撃する人が出てくるわけだ。しかも大量に。


 「石を回収しきれないから、いつまでもサンジェルマンの幻影は世界のどこかで出続けている。そして、それを目撃した人がサンジェルマンが生きていると誤認する、ということですか?」

 「その通りだコダマ。サンジェルマンの遺産というか最後っ屁に付き合わされる私達の身にもなってみろ。統魔がやらかしたことでもないのに、その尻拭いだ」


 自分たちがやったことでもないのに、後処理をしないといけないということはたしかに嫌なものだろう。しかも相手は自分たちの(せん)(だつ)にあたる存在だったとしたらなおのことか。


 矢筈さんがそういった魔術師の不始末による被害にあってしまったというのは不幸だと思う。


 一般人に害を及ぼすのは魔術師として失格だろう。僕は一応魔術師見習いなのでセーフらしい。どういう理論だ。


 「それじゃあ、そんな石をどうしたらいいんですか?」


 『怪』を解決すること。それが今回の目的だ。室長のうっぷん晴らしではない。その辺はわかっていると思うが、一応は確認しておく。


 「簡単だ。石を破壊すればいい。過去の検証から分かっているが、砕いた石は分割されたサンジェルマンを維持できない。今回は出没した場所にある石を砕いてやれば、それで終わりだ」


 簡単といえば簡単だ。室長が直接ぶっ壊してもいいし、やりにくいなら僕の能力を使ってもいい。破壊するだけならばコトは容易に運ぶだろう。


 しかしながら、統魔のほうが解決していない。


 B指定以上のモノに対する干渉は厳しい処罰の対象だ。それを室長はどうにかするつもりなのだろうが、一体どうするつもりだろうか? 


 訊いてみたかったが、聞いた瞬間から共犯にされる恐れがあるので訊けなかった。


 クルマは滞りなく進み、矢筈さんのナビでなんの障害もなく僕たちは到着した。


 サンジェルマンの石があると思われる矢筈さんのオフィスの前に



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