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第四怪 その2

 翌日、金曜日。ハイツまねくね駐車場。午後五時。


 「……なんでお前もいるんだよ」


 週末を使って統魔に赴くことになった僕は前日になんとか準備を終えて学校が終わり次第、自宅に戻り荷物をひっつかんでハイツまねくねの駐車場に来たのだが、そこにはやたらとデカいキャリーバッグを傍に置いた室長と肩掛けのデカいバッグを持った笠酒寄が待っていた。


 「なにって、昨日あれから笠酒寄クンにも電話して訊いてみたんだが行きたいらしくてな」


 笠酒寄のかわりに室長が質問には答えてくれた。が、元凶はアンタか、という思いが湧いただけだった。


 頭痛がしてくる。


 「室長、ちょっと待ってください。統魔に行くんですよね? 笠酒寄は魔術師じゃないし、登録もする予定はないですよね?」

 「そうだな」


 あっけらかんと室長は答える。


 「じゃあ、笠酒寄を連れていくとマズいんじゃないですか。一応は統魔の存在は一般人には秘密なんでしょう?」

 「問題ない。笠酒寄クンには私の知り合いのところで待っていてもらうからな」


 嫌な予感しかしない。室長の知り合いは多かれ少なかれ厄介ごとを持ってくる存在だ。そういったものに笠酒寄が巻き込まれてしまうというのは後味が悪い。


 「いや、室長の知り合いとか嫌な予感しかしないんですけど」


 もはやストレートに言うしかないだろう。下手に小細工を弄するよりもこちらの方が効果的だということに最近気づいた。


 「安心しろ。預ける相手は魔術師の中でも腕利きだから金庫の中よりも安全だ」


 信用できない。


 室長の言葉を信じて何度痛い目にあったことだろう。いや、あれらは僕がしっかりと室長のいうことを聞かなかったということなのかもしれないが。


 「それでも魔術師なんだから何かしらのごたごたに巻き込まれる可能性は高いでしょう? そんな場所に置いておくのは反対です」

 「心配してくれるの? 空木君。でも大丈夫、わたしは平気だよ!」


 どっちかというと兵器だけどな。


 なんて言葉遊びをしている場合じゃない。とにかく笠酒寄がついてくるというのはなんだかとてつもなく嫌な予感がする。具体的に言うと最終的に僕が殴られる展開になる気がする。再生能力はあるものの、痛覚は普通に存在している。殴られれば痛いし、骨が折れると治るまで滅茶苦茶痛い。あとかゆい。


 持っていく爆弾は一個で十分だ。


 室長のほうを説得するのは諦めた。こうなったら笠酒寄の行く気を削ぐ方向性で攻めることにしよう。あんまり気は進まないが。


 「なあ、笠酒寄。僕たちの用事にお前が付き合うことなんてないんだ。どうせついて行ってもなにも面白いことはないぞ。貴重な週末をただボーっとするだけで浪費するなんていうことはお前も望むところじゃないだろう?」

 「ボーっとするのはわたし好きだけど?」


 カウンターを放ってきやがった。


 しかも強烈なクロスカウンターだ。レフェリーがいたなら試合を止めるぐらいの一撃である。セコンドはタオルを投げるだろう。というか僕自身がギブアップ宣言したい。


 されども、ここで引いてしまったらこの先の僕自身の心労が増える。若くして白髪になったり、禿げたりするのは勘弁してほしい。


 そんな思いに突き動かされて、なおも笠酒寄を説得しようとした矢先にいつの間にか運転席にいた室長から声をかけられた。


 「コダマ、笠酒寄クン、早く乗れ。あと三十秒で乗らないと縄でくくりつけてそのまま三時間ほど引きずり回すぞ」


 宣言。こういう時の室長は本当に実行する。特に僕に対してならば迷いなくやるだろう。中途半端に再生能力があるというものも考えものだ。


 「ほら、空木君。早くしないと削れながら行くことになるよ?」


 目を離したすきに笠酒寄はすでに後部座席に搭乗していた。ホントに室長に似てきやがった。


 「カウント始めるぞ。じゅう、きゅう、はち……」

 「わかりました! わかりましたって! だからカウントはやめてください!」


 必死に後部座席に転がり込む。


 なぜ後部座席なのかというと、助手席には室長が自分のキャリーバッグを置いていたからだ。決して、笠酒寄の隣に座りたいと思ったとかではない。そう、これはしょうがないことなのだ。


 そんな言い訳がましい心境でクルマに乗り込む。


 同時にシートベルトもしていないのに室長がクルマを発進させる。


 運転は丁寧だが、同乗者には容赦がない。危うく笠酒寄のほうに転がってしまうところだった。


 「ちょっと室長。安全確認はきちんとしてくださいよ。そもそも免許持ってるんですか?」


 元々外国人の上に、魔術師なんてあやしい職業の室長が免許証を持っているかなんて聞くまでもないことだが、少しは反撃したい。


 「持ってるぞ。ほれ」


 前を見たまま室長はこちらのパスケースを放ってくる。持ってやがった。


 わたしも見せてー、とほざいてくる笠酒寄を無視しながら確認する。


 確かに、本物の免許証だ。顔写真も室長のものだ。しかし……。


 「これ、室長が二十八歳ってことになっているんですけど」

 「当然だ。約四百歳なんて申請できるか。戸籍はある人物に協力してもらって作ってる。これで五代目ぐらいだな」


 ばれたら一発で警察のお世話になりそうな犯行を白状する。たぶん、何かしらの権力も絡んでいることだろう。その辺に突っ込むと僕自身のほうが火傷しそうなのでやめておく。賢明になったものだ、僕も。


 そのあと三時間ぐらいは普段の百怪対策室の中とあまり変わりがなかった。

室長が魔術やら日本のサブカルチャーやらについての与太話を展開したり、それに笠酒寄がやたらに食いついたり(攻め寄りリバとかなんだ? 相撲の新技か?)、どこからともなく取り出されたお菓子に笠酒寄が舌鼓を打っていたり、僕が室長にからかわれたりと散々だった。


 そんな場所だけが変わった時間が三時間ほど過ぎて、とある街中のコインパーキングで室長はクルマを停めた。


 なんということはない場所だ。


 強いていうならば僕が住んでいる町よりも都会だということぐらいか。


 ここに統魔が存在しているのだろうか?


 「二人とも降りろ。荷物はそのままでいい」


 言うだけ言って自分がさっさと降りてしまう。


 逆らってここに置き去りにされても困るので、僕も笠酒寄もとっとと降りる。


 そこから十数分。狭い路地、いや裏通りと表現するのが正しいような場所。


 そんなところで僕たちは足を止めていた。


 時間はすでに夜の九時。週末ということもあってかなり周りの喧騒はかなりのものだ。


 そんな中、明らかに未成年の二人と見るからに未成年の一人はギラギラとネオンの輝く一件の店舗の前にいた。


 〈Bar マジカルカントリー〉


 「ほれ、圧倒されてないではいるぞ。ここが目的地だ」






 マジですか。


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