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第三怪

 朝、登校して下駄箱を開けると封筒が入っていた。


 (いきなりかよ……)


 とりあえず、この場で開けるわけにもいかないのでトイレに直行する。


 もちろんラブレターという可能性は考えない。僕にそういった甘酸っぱいイベントは起こらない。ここ最近確信したことだ。


 個室に入って開封する。


 中には予想通りに手紙が入っていた。


 内容はこうだ。


 〈相談したいことがあります。放課後五時に物理準備室で待ってます〉


 一方的すぎないか? 


 こちらの都合とかはどうでもいいのだろうか。


 行かないと室長になんていわれるのかわからないので行くが。


 まだ九月だっていうのに、なんでこんなにも僕の周りには変なものが溢れているのだろうか? でてこい神様。


 あといつの間にか僕の下駄箱を妖怪ポストみたいな扱いにしたやつもでてこい。こっちには見当はついている。


 きーん、こーん、かーん、こーん。


 まずい。HRが始まってしまう。取り合えずは放課後まではこの件に関しては保留だ。


 僕はダッシュで個室から出ると教室に向かった。





 放課後。


 いつもならそのまま百怪対策室に向かうところなのだが、今日は待ち合わせがあるのでそっちに行ってからになる。


 いつも通り笠酒寄が寄ってきたのでそれを伝える。あと、僕の下駄箱の件についても問いただした。


 「わかった。ヴィクトリアさんには空木君が女の子とイチャイチャしてるから遅れますって言っておくね。あと、下駄箱はわたしじゃないよ」

 「依頼人は女子かどうかわからないし、女子だとしてもイチャイチャなんてしないし、そしてお前以外に誰が僕の下駄箱に珍妙な噂をくっつけてくれるんだよ」

 「知らなーい」


 なんか拗ねてないか?


 僕、何かしたか?


 まあ、女心と秋の空というぐらいだし、そのうちに機嫌も治るだろう。


 「とにかく、余計なことは言わずに僕が遅れてくるっていうことを伝えてくれればいいんだよ。頼む」

 「……わかった」


 やはりなんだかいつもの感じではない笠酒寄は渋々という様子で教室から出ていった。


 「面倒は勘弁してくれ……」


 はぁ。


 ため息がかさむ。





 午後五時。物理準備室前。


 普段、物理準備室は科学部が使うために鍵はかかっていないが、今日は外で実験しているらしいので施錠してあるはずである。


 しかし、僕がドアに手をかけてノブを捻ると簡単にドアは開いた。


 せまっ苦しい準備室の中には一人の女子が佇んでいた。


 「あなたが空木コダマ君?」


 儚げで、どこか幽霊を連想される彼女はそう聞いてきた。ロングヘアが余計に柳の下の幽霊を連想される。


 が、そんなことで動揺する僕ではない。これでも普通の高校生よりも大分修羅場をくぐってきているのだ。


 「そうです、空木コダマ。『怪』の専門家への取次窓口ですよ」


 余裕たっぷりに僕は答える。


 初対面であるならば、ハッタリを利かせるぐらいのほうが上手くいくことが多い。


 なによりも信頼というものがそのままイコールで結果につながりやすい『怪』の世界は特にそうだ。


 「そう……。ドア閉めてくれるかしら?」


 か細い声で要求してくる。


 とりあえずは従っておいた方がいいだろう。


 これが僕を捕獲するための罠だとしても目の前の少女からなら余裕で逃げ切れる自信がある。


 僕はそっとドアを閉める。


 途端に彼女は僕の方に走り寄ってきた。


 (!)


 まずい、これはもしかして本当に罠だったパターンか!?


 くっそ、こんなところで捕まってしまったら室長にどんないじり方をされるかわからない。


 反射的に僕は身構える。


 しかし、彼女は殴ってくるわけでもなく、蹴ってくるわけでもなく、僕に縋りついてきた。


 「お願い! 私のお母さんを助けてほしいの!」


 涙ながらに懇願する彼女はいままでの幽霊のような顔ではなく、確かに生きた人間の顔をしていた。


 ちなみに僕は身構えたまま縋りつかれて混乱したまま動けなくなっていた。


 「お願い……お願い……します」


とうとう彼女は半泣きになっていた。


 「あ、はい。わかったんでとりあえず離れてもらっていいですか?」

 「ごめんなさい、もうちょっとだけ」





 あーはいはいそうですか。

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