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役割演技:RPG2

※未成年被害者のプライバシーを守る為、本名の記録を控えさせて頂きます。


(記録者メモ)


 参加者:

 【傀儡師に襲われた5年4組の生徒達】

【先生:望月風雅】

【自称殺人鬼:羽斑柵】

 【殺人鬼:望月里実】

 【メイド:被害者少女?】

 【深淵の看護師:天野樹理】

 【貧乳の監察医:佐藤深緋】

 【黒衣の人形造型師:私】


 記録者:私


(授業開始)


<先生>さてと。道徳の授業を始めましょうか。

<一同>はーい。(工房の椅子と机は教室を模して並べ替えられているが、室内を照らす明かりはランプが二つのみである。)

<先生>それでは今回のテーマは5年4組を狙った通り魔事件について話し合いたいと思います。

<一同>お互いに顔を見合せながら戸惑う生徒達。

<深淵の看護師>先生、被害者の中には事件当時の事を思い出したくない生徒もいると思います。発言を拒否する権利はこの場に存在しますか?

<先生>もちろんです。法廷で不利になる様な発言を控える事を法律では認められているはずです。海外ドラマでよく聞きますよね?犯人を捕まえた警察がよく言うあの一言。「お前には黙秘権が認められている」的なあれです。

<深淵の看護師>ここに集められた被害者達の目的は個々に知らされていますか?

<被害者A>夜埜からの頼みで俺が皆を集めた。ここに居る全員が真相を知る為にここに来てるよ。看護師の可愛いお姉さん。

<深淵の看護師>ありがと。その……怖くないの?そこに座る女性は君達の味方であるフリをし続け、仮面男として冷酷に君達の体を奪い去った女性よ?


<被害者A>死ぬほど怖いし、今も震えてる。人形が吊下げられてるこの場所も不気味ですぐに逃げ出したい。けどさ……最後のチャンスなんだろ?先生と直接話せるのは。


<貧乳の監察医>そうよ。もし、万が一、貴方達の先生が殺人鬼で無かったとしても彼女はそこで気を失っているメイドのお姉さんを刺し、望月曳光の妻、望月小夜さんを刺し殺したかも知れない。そして夜埜風雅さんの身を案じ、警護についていた警官達を1人残らず斬りつけていった。幸いな事に死者は出ていないようだったけど、重度の精神病と診断されない限り実刑は免れないわ。(尊さん?きちんと証言とってる?実際に必要なのは容疑者の発言だけだけど。心配なのはこれはRPGって事。役に成りきるという事は虚偽が認められる。って誰が貧乳よ!まな板だけど!イテテ……羽斑さんに刺された怪我、樹理さんの応急処置でどこまで持つかな……って私の呟きまで書かなくていいから)

 ※表記変更<貧乳の監察医>→<緋色の監察医>


<被害者A>皆は本当の事知りたいよな?これから先、体を奪われた俺達に待っているのはひどい偏見と辛いリハビリや繰り返される手術だ。俺なんて鼻無いし、これから先、一生化け物って蔑まれながら生きてかないといけない。結婚出来ねぇんじゃないかな。うやむやにされたら俺達は仮面男である先生を一生憎む事に労力を費やさなきゃいけない。だから納得のいく説明がほしい。それだけだ。


<殺人鬼>斉藤君・・・・・・ごめんなさい。皆もごめんなさい。


<被害者H>(おもむろに立ち上がり、殺人鬼の襟首に掴みかかる。)

 頭を切断された椚や大腸を抜かれた栂野、上半身を丸ごと持って行かれた及川や、下半身を持って行かれて死んだ小谷ちゃん。4人の生徒が訳も分からないまま、次に襲われるかも知れない恐怖の中、失意のうちに死んだ。なんで……なんで私もいっその事殺してくれなかったの?背中の皮膚を剥がされた私は今も皮膚移植の手術を繰り返し、ガーゼを交換する度に気を失うほどの激痛に苛まれているの。あなたは私がそんな苦しい思いをしている間何してたと思う?そこの一ツ目の夜埜君と仲のいい親子ごっこを繰り広げていたわよね?私達は貴女にとって何なの?この殺人鬼!貴女も同じ目に合わせてやる!

<先生>松島!先生は僕の本当の・・・・・・。

<殺人鬼>(無言で立ち上がり、先生を庇うように被害者Hとの間に立つ殺人鬼。握っていた片刃の鋏を被害者Hに渡し、自身の衣服をその場で脱ぎ始める。子供達が唖然とする中、その細く白い体中に刻まれた古い傷跡に生徒達が小さな悲鳴をあげている。被害者Dの男の子だけが頬を赤くしながらも食い入る様に殺人鬼の下着姿を眺めている。なんとも破廉恥な小学生だ。)背中でした……ね?構いません、好きにして下さい。ただ、命だけは奪わないで下さい。風雅と暮らせれば私は何もいりません。傀儡師によって奪われた目、鼻、口、耳、顔、両腕両足、舌、乳房、奪われた部分を奪い返してもらっても構いません。最低限の生命活動だけはどうか奪わないで下さい。


<被害者一同>お互いに顔を見合わせ、戸惑いを見せている。

<殺人鬼>(被害者Dの視線に気づいた殺人鬼が一人の生徒に近付き、頬に手を添える。)長谷川君。舌を切り取った私が憎いですか?

<被害者D>(必死に首を振る)

<殺人鬼>私の事好きですか?

<被害者D>はい。あの公園で返り血を浴びた先生、すごく綺麗に見えました。

<殺人鬼>(まるで子供の様な笑顔をつくる殺人鬼。)いいんですよ?私の体を好きにしてくれて。貴方にはその資格があります。ただ、命だけは助けて下さい。

<被害者D>いいんですか?

<殺人鬼>はい。元々、私の体にそれだけの価値もありませんから。人形としての価値を失った私はパパからはもう愛されない体。子供を産めなくなった私の子宮は只の模造品レプリカですから。

<被害者一同>小さな悲鳴をあげ、どよめく。

<殺人鬼>どうしたんですか?皆さん?ここに殺人鬼はいます。復讐するなら今ですよ?もしかしたら気が変わったら皆さんの事を襲うかも知れません。(緋色の監察医がそっと白衣を脱いで殺人鬼の体にかけようとするが、それを止めさせる私。自称殺人鬼と先生は歯を必死に食いしばり、自らをその場に強く留めている。他の生徒が猪田里実という人間を知る為に突きつけなければいけない悲しい現実があるからだ)

<被害者D>その全身の古い傷跡は?そんなので同情惹こうたってそうはさせないんだから!男子生徒に色目を使っても許さないんだから!

<殺人鬼>(困ったように泣きそうな顔になる猪田里実。教師というよりは本来の望月里実として話をしているようだ。)

 色目は使っていません。私を抱きたそうにしていたのでこちらから提案させて頂きました。全身の傷は幼い頃に父の人形造形の為に付けられたものです。幸いな事に麻酔はかけられた状態でしたが。


<被害者A>長谷川、確かに先生は可愛いけど、俺たちの担任だぞ?親みたいなもんだろ?しかも今は夜埜の母ちゃんだ。

<被害者D>(被害者Aの男の子に頭を叩かれる。)ごめんってば。


<殺人鬼>親……ですか。(目を閉じ、涙が頬を伝う)


<被害者一同>(どよめき。)

<殺人鬼>私も貴方達の事は風雅の様に本当の子供のように思っていました。

<被害者D>ならなんであんなひどい事を!泣いて同情を誘たって無駄。って・・・・・・本当の子供?

<先生>ごめん。松島。

<被害者D>どういうこと?だって風雅君は私達と同じ11歳。そんなの年齢が合わないじゃない。だって、先生……23歳ぐらいでしょ?馬鹿言わないで。風雅君までおかしくなっちゃったの?だってどう見積もっても私達の年齢ぐらいで君を産んだとしか……。

 (被害者Dが、猪田里実に出来ている下半身の大きな傷跡に着目する)

 その傷跡まさか……帝王切開の後?

<殺人鬼>……ずっと父には産んですぐに死んでしまったと聞かされていました。恐らく世間的に公表出来ない子供だと考えたのでしょう。父が殺したとばかり思っていましたが、私が12歳で産んだ子はその後、ある施設に預けられ、風雅が小学2年の頃に夜埜さん一家に引き取られていたようです。

<先生>殺人鬼さんが先生になったのも?

<殺人鬼>はい。幸せそうにしていた風雅の生活に私が波風を立てるのもはばかれたので、せめて教師として貴方の事を見届けようと。それに子供が産めなくなった反動でしょうか。何より子供達が大好きなんです。

<被害者B>子供が好きならなんで僕達の事を襲ったんですか?

<殺人鬼>それは……えっと、私が子供を産めない事に起因しているのだと思います。

<被害者H>なにその人事みたいな言い方。貴方が好き好んで私達の体を切り刻んだんでしょ?

<殺人鬼>すいません。君達の事、私も子供のように大切でした。だから私は貴方達の血肉で構築された我が子がほしかったんです。

<被害者一同>(首を傾げる。)

<緋色の監察医>(そっと羽織っていた白衣を脱ぎ、教員にかける)

<殺人鬼>ありがとう。

<緋色の監察医>警察ではずっと今回の殺人鬼傀儡師の目的が謎だったの。バラバラ人形殺人事件、傀儡師事件として容疑者一名死亡となり未解決事件として幕を閉じた事件。そのケースに今回はよく似ていた。けど、三年前のあの事件で被害者は特定の誰かでは無かった。今回は5年4組というクラスが狙われた。そして何より……狩りの時期を終えたはずの傀儡師が被害者やその遺族に対して展覧会を開き、招く事は無かった。

<殺人鬼>風雅に傀儡師であった私の父、望月曳光の芸術性は受け継がれていますが……私にその才は残念ながらありませんでしたので。暗殺者としての技能は強く引き継いだ様に思えますが。

<緋色の監察医>一番気になっていた事があるの。奪った生徒達の欠損部位はどこ?過去の異常殺人者の中に子供の肉を好んで食する奴らがごまんと居た。あなたもその部類?

<殺人鬼>フフッ……確かに美味しそうでしたけど、大切な子達の体、食べたりしませんよ。パパにあの鉄扉の向こうに閉じ込められた時は、解体されたばかりの女の子を食べて生き長らえましたが。私の可愛いもう一人の子供はあの扉の向こうにいます。


(緋色の監察医が自称殺人鬼に刺された箇所を抑えながら立ち上がると、ランプを手に持ち、その鉄扉の向こう側を確認する。恐らくあの鉄扉の向こうにはもう一人の子供が飾られている)


<緋色の監察医>(青ざめた表情で数歩後ずさる。被害者遺族達も立ち上がり、その扉の向こう側を覗きこもうとするのを慌てて止めさせる)

 来ちゃダメ!いい?絶対にこの中は覗かないで?いい!?


<被害者生徒達>(お互いに顔を合せながら頷く)


<殺人鬼>どうしてですか?私の可愛いもう一人の子供、みんなにも見てほしいぐらいです。風雅に似て少し無口で素っ気ないですがとても可愛いでしょ?


<緋色の監察医>《《これ》》は充分証拠足り得ます。貴女の目的はこれだった。34人の生徒の欠損部位を再構築させた継ぎ接ぎだらけの寄せ集め肉塊人形……貴女、狂っているわ。


<殺人鬼>私はその扉の向こうに監禁され、幼い女の子を体を口にした時から人としては壊れていますよ。私はパパにママみたいに殺されない様に、人形になりきる必要があったから。


<被害者生徒達>(吐き気を催しているのかほとんどの生徒が口元を抑えている)


<緋色の監察医>やはり貴女は殺人鬼です……ここから先、少しでも危険と判断した場合、生徒達はここから避難させます。本来なら今すぐにでも生徒達を安全な所に避難させたいところだけど、貴女が暴走したらこちらに止める手立ては無い。

<先生>監察医のお姉さん。大丈夫だよ。僕の母さんはもうそんな事しない。だよね?母さん。

<殺人鬼>うん。だって……風雅を取り戻したもん。貴方が居れば、あのもう1人の動かない私の子供も必要無い。監察医さん、何か勘違いしているようですね?私が仮面男とすれば生徒達は襲わない。何故なら彼はレプリカ作製の為に襲った人間に対しては二度と襲わない。でしょ?襲うとしたらそこに座っている看護師さんに監察医、そして人形造型師蒼星さんよね?標的以外は傀儡師なら無慈悲に殺す。

<黒衣の人形造型師>(主導権を握られる前に一つハッタリをかましておくことにする私)そうじゃの。ここで私達は殺されても文句は言えないわね。言わば、貴女の慈悲深い温情によって私達大人3人とこのメイドさんは生かされている。この工房に居る面子でお主に勝てそうな人物は1人ぐらいだしの。


<殺人鬼>……その1人は誰の事かしら?


<黒衣の人形造型師>知りたければすぐにでも私達を殺しにかかればいいわ?気付いた時に貴女は死んでるかも知れないけど。嫌でしょ?自分の子供と二度と会えなくなるのは。私も女手一つで育てている男の子が居るから気持はよく分かるわ。あの子を置いて死ねないもの。

<殺人鬼>……。(辺りを見渡し、困った顔をする)

<自称殺人鬼>……記録係のお姉さん、その子ってもしかしてあの模造人体展覧会でカピバラのマスクを被ってた男の子ですか?

<黒衣の人形造型師>そうじゃ。可愛いかったでしょ?

<自称殺人鬼>はい。

<黒衣の人形造型師>フフッ、自慢の息子じゃ。訳あって自宅学習をさせておるがの。

<殺人鬼>模造人体展覧会?何を言ってるの?傀儡師だった父はもう居ない。誰がそんなものを開けるっていうの?

<自称殺人鬼>あっ!そうですよ!私ずっと疑問だったんですけど、私は殺人鬼にバレる覚悟で5年4組の被害に遭って居ないクラスメイトを私の屋敷に誘拐したんです。ターゲットが消えた段階で違和感に気付くはず。


<殺人鬼>何言ってるの?羽斑さん?貴女が私の代わりに残りの生徒達全員の体を集めてくれていたのよね?


<自称殺人鬼>最初はそうしようと考えました。そうするしか、風雅君の命と幸せを守る術が無かったから。けど、やっぱり私には出来ませんでした。

<殺人鬼>そんな、じゃあ誰が一体、あの子の残りの部位を定期的に望月家に送りつけてきたっていうの?

<自称殺人鬼>私は……クラスメイトを匿う以外に何もしていません。

<殺人鬼>きちんと鮮度が保たれた子供達の肉体は一体誰が?

<緋色の監察医>(手を上げる)私が遺族に頭を下げ、残りの生徒を助ける為に亡くなった子の部位をそこで記録をとっている人形造型師さんの合図で送り続けさせてもらいました。

<殺人鬼>まさか……。

<黒衣の人形造型師>望月家に送り続けた部位は……発見が遅れ、搬送された病院で息を引き取った【大腸を抜かれていた栂野慎也】君の体じゃ。本来ならドナー提供に回される大事な体、ありがたく思いなさい。

<自称殺人鬼>じゃあ……あの展覧会場に飾られていた部位は喪服のお姉さんが?

<黒衣の人形造型師>そうじゃ。月黄泉氏には劣るがこれでも人形造型師の端くれ、見本さえあればそれなりのものは作製出来る。

<自称殺人鬼>見本はどうやって?

<黒衣の人形造型師>そこの監察医のお姉さんに頼んで特別に子供達の遺体を暴かせてもらったわ。気の良いものでは無かったがの。行方を眩ませた羽斑さんが殺人鬼に殺される可能性もあった。けど、殺人鬼として残りの生徒の部位を収集している間は生かされる。そして、貴女をあの展覧会に招く為の手段でもあった。貴女は必ず来る。仮面男が偽物だって気付いている貴女は、ほっとけないから。

<自称殺人鬼>はい。ほっておいたら、先生が捕まっちゃう。折角、風雅君は手に入れた幸せがまたどっかに行っちゃう。それだけはさせたくなかったの……だから私が殺人鬼になって……。

<殺人鬼>まさか、私に殺されようとしてたの?

<自称殺人鬼>はい。私が犯人として死ねば2人とも助かるかなって。けど、結局、私は犯人に成りきれなくて失敗しました。

<殺人鬼>馬鹿ね……本当に。(自称殺人鬼を泣きながら抱きしめる殺人鬼)

<自称殺人鬼>知ってますよ。私、成績優秀でも馬鹿なんです。暖かいなぁ。本当に先生は暖かい。私をあの両親から救ってくれてありがとうございます。風雅君が羨ましいよ、本当に。

<殺人鬼>殺人鬼なのに?

<自称殺人鬼>私もです。自称ですけどね?

 (先生役の夜埜風雅君が抱き合う二人の肩を叩く)

<先生>さて一段落ついた所で、気を取り直して事件を振りかえってみましょうか。自称殺人鬼の学級委員長Hさん。最近、クラスで変わったことはありませんか?

<自称殺人鬼>風雅君!じゃなくて先生!その呼び方、なんだか私がイタイ子みたいで嫌です。今いい雰囲気なのにぶち壊しだよ!

<殺人鬼>(クスクスと笑いを堪えている)

<先生>大丈夫です。元々そんな感じの子です。なんなら被害者の1人として名を連ねますか?

<自称殺人鬼>風雅君冷たい……いえ、私に被害者を名乗る資格はありません。

<先生>ではそのまま授業を進めます。何か最近変わった事はありませんか?

(彼は恐らく全ての事実関係を白昼の元に曝け出し、その上で被害者達の是非をとろうとしているのかも知れない。それはこの少年の少女に対する優しさ故)

<自称殺人鬼>あ、ええっと、通り魔事件が発生してクラスメイトの身体が切断され持ち去られています。場合によっては連れ去られてから部位を切除されているケースも。

<先生>それは大変だね。どうすればこの通り魔殺人鬼を止められると思う?

<自称殺人鬼>犯人の仮面男を捕まえれば犯行は止まります。けど……

<先生>けど?

<自称殺人鬼>その犯人は私の依頼でこんな事を始めたんです。だから全部私の所為なんです!だから私が悪いんです!


<被害者一同>ざわめき、顔を見合わせている生徒達。


<先生>どういう事かな?自称殺人鬼さん。


<自称殺人鬼>私が……ある日、ネットの掲示板で《片目が塞がった一ツ目の男の子がクラスで孤立して虐められています。どうやったらいじめの無いクラスに出来ますか?》って書き込みをしたんです。

<先生>そしたら?


<自称殺人鬼>その子次第だとか、先生に相談するようにだとか、偽善者乙、とか誹謗中傷の答えの中で真摯になって話を聞いてくれる人が居たんです。直接メールでやりとりをしませんか?って声をかけられて。

<先生>それで君はどうしたのかな?

<自称殺人鬼>その人……HN「ネズミの王様」って人と仲良くなって…色々お互いにいじめ撲滅の手立てを話していくうちに……色んな事を話しました。よくよく聞いてみるとお互い似た様な境遇でずっと自分も両親の事を憎んでいたと……。

<先生>柵のあの虐メ撲滅計画はその人と相談した結果生まれた?

<自称殺人鬼>はい。いくつかのヒントは得ました。

<先生>それはいつぐらいの話ですか?

<自称殺人鬼>5年へと上がり、君と同じクラスになってからの事です。

<被害者B>そんなに前から……。そいつが仮面男だったのか?

<自称殺人鬼>うん。最初はそんな感じじゃなかったんだけど、私を虐待する両親の話をした辺りから少し雰囲気が変わってきて「私がその苦しみを消し去ってあげましょうか?」って言われの。私はしばらく悩んだけど、両親を恨んでいた私は一言「はい」と返事をしてしまいました。けど、そこから全然音沙汰も無く、何かの悪い冗談だと思っていたら一通の見知らぬアドレスから返事が来てて。

<先生>そこにはなんて書かれていたんですか?


<自称殺人鬼>『件名:傀儡師 本文:依頼承りました。』とだけ。どこかで聞いた名前だと思ったら三年前の未解決事件の犯人で私はすっかり怖くなってそれ以上ネズミの王様との接触はしませんでした。

<先生>そして君の両親は依頼通り殺された。

<自称殺人鬼>はい。私が眼帯を付け始めた日の前日、屋敷の一階で殺されていました。

<先生>君はその時、傀儡師と遭遇した?

<自称殺人鬼>はい。次は君の番だと囁き、私を殺そうとしたように思います。

<先生>君はどうしたの?

<自称殺人鬼>どうせ殺されるならと殺人鬼傀儡師と取引をしました。

<先生>どんな願いを?

<自称殺人鬼>傀儡師は被害者の体の一部を持ち去ると聞いた事があったので、私は私の右目を対価にある提案をしました。

<先生>それがあの仮面男の通り魔事件に繋がった。君は対価を求められた。

<自称殺人鬼>はい……体の一部を差し出す様にと。

<先生>その眼と対価に両親の暗殺依頼を出したんだね?

<自称殺人鬼>ううん。両親を殺したのはネズミの王様の善意。私が望んだのは……。君が穏やかに平和で暮らせる虐めの無い世界。この右目はその代償。

<先生>その願いを叶える為に君は眼を差し出した訳だね。

<自称殺人鬼>うん。そして……どういう順番であれ僕に残された右目は最後に回す様に暗殺者傀儡師にお願いした。

<自称殺人鬼>うん……私の右目が無いことに風雅君には気付いてほしくなかったから…。それならいっそ、見えなくなって。私が一生風雅君の面倒を見るつもりでいた。

<先生>……全ての動機が僕に繋がっているね。

<被害者一同>(お互いに顔を見合わせている。それらの原因を作ったのは一ツ目の少年でも、眼帯少女でも無く、自分達が異形の彼の事を疎外していたからだと気付いたからだ)

<殺人鬼>羽斑さん!それは違うわ!私は……殺人鬼の私はただ……憎しみをぶつけただけ。貴女を私と同じ様な境遇に追い込んだそいつらが許せなかった。そして何より私は……風雅の左目を奪った原因を作った貴女が許せなかっただけ。

<先生>今、僕は自称殺人鬼さんに話を聞いています。本物の殺人鬼さんは黙っていて下さい。これは被害者達が事実関係をきっちりと知る為に大切な事なのです。本物の先生なら察して下さい。

<殺人鬼>……ごめんなさい。えへへっ(*^ ^*)

<先生>怒られているのに嬉しそうにしないで下さい。

<殺人鬼>ごめんなさい(´・ω・`)


<メイド>少しお疲れでしょう。紅茶をお持ちしました。全員分ご用意していますのですぐにお持ち致します。


<黒衣の人形造型師>すまぬ。出来れば茶菓子も……。

<メイド>かしこまりました。

<黒衣の人形造型師>私も供述書を記録するのが少し疲れてきた。紅茶時間ティータイムにしようかの。


<被害者一同>(全員頷く)


<先生>それでは10分間の休憩を挟みたいと思います。くれぐれもこの工房からは出ない様にして下さい。


<一同>はーい……?


<先生>あれ?メイドさん?刺されたお腹は大丈夫なんですか?

<メイド>応急処置をして下さった事も幸いし、命に別状は無いようですので。

<先生>逃げないんですか?

<メイド>なぜ?ここは私のお勤めしているお屋敷ですから。

<先生>そうですか。けど、貴女は僕の母さんに殺されかけましたよね?言わば殺人鬼に殺されようと。

<メイド>安心して下さい。殺人鬼は私ですから。


<一同>なんだってーっ!?


表記変更

※自称殺人鬼→眼帯少女

 メイド→自称殺人メイド 


<黒衣の人形造型師>茶菓子は?


<自称殺人メイド>すぐにお持ちします。二コリ(^v^)v V


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