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遺されたメモ

2019.10.05


「通り魔仮面男事件」


2019年の5月下旬。

まず始めに木漏日小学校に通う11歳の少年が通り魔に鼻を切り落とされる事件が発生。切り取られた後の部位は未だ発見されず。その後、次々と同クラスの生徒がこの通り魔の犯人に身体の部位を切り取られる。生徒によっては致命傷になる部位を奪われたケースもあり、3人が死亡し、被害に遭った半数近くの生徒が現在も入院中である。何故か対象となっているクラスでは集団登校を義務付け、警護を付けるも、抑止には繋がらず。犯人は犯行時に居合わせた人間を躊躇無く殺害する。狙われている生徒達に関しては肉体の一部分を持ち去られた児童に関しては殺害対象から外れる様だ。詳しい経緯は不明。三年前の傀儡師の事件と合わせて調査が必要。現場に幾度と無く居合わせている5年4組の女子児童、羽斑柵が何かしらの鍵を握る可能性あり。警護も含め、俺を含む警官二人が彼女の行動を監視する必要有り。


2016.03.15


「バラバラ人形殺人事件」


夜間、蒼いコートに山高帽といった出で立ちの男が一般市民を襲い、身体の一部を持ち去るといった事件が数ヶ月の間に連続して発生。持ち去られた部位によってはその場で死亡している被害者もいる。最終的な報告では当時捜査を進めていた刑事を含む35人の人間が被害に遭う。この事件の最も不可解な点として犯人が被害者の持ち去った部位を模倣し、造られたレプリカの展覧会を開く点にある。直接被害の遭った被害者や、その遺族を招いて開かれる個展は「模造人体展覧会」と称され、招待状が関係者に送られていた。この事から、犯人は無差別にターゲットを選んだ後、持ち去った部位の所有者の身元を調べているという事になる。もしくは最初からターゲットは決まっていた可能性も除去しきれない。これらの展覧会への出席は任意であるが、出席した者の中には造形品としての質の高さから感嘆の声を漏らす者も少なくなかった。出席者の情報を頼りに、名のある造形師が数人容疑者としてあげられるが、その中の一人、人形造形師「月黄泉つきよみ」氏が帰宅中、何者かに襲われ、殺害された状態で発見される。その場の血痕や血の量から別の場所で殺された可能性が高かったが、数ヶ月に渡り繰り返されたこの通り魔による犯行は無くなり、犯人が特定される前に本件は未解決事件として捜査は打ち切られた。展覧会招待状の内容から本件の犯人の呼称を傀儡師かいらいしとする。


2006.10.06〜


「八ツ森連続児童誘拐事件」他


八ツ森市内にて女児誘拐事件が多発。

同一犯による犯行と思われていたがこちらも犯人が特定されないまま現在に至る。他、捜査資料については風雅が小学校の絵画コンクールの賞状を保管しているケースに入っている。

もし、通り魔に兄ちゃんが倒されてしまった場合、もしくはこんな事は書きたくはないが5年4組の生徒全員が被害に遭い、再び未解決事件として捜査が打ち切られた時の自分の為にもこれを書き残す。そうなった場合、俺は死んでも犯人を暴き出して裁きを受けさせる覚悟だ。


まぁ、兄ちゃん弱いけど風雅には笑われないよう精々頑張るよ。


もし何かあったら、霧島大学附属病院に所属している監察医の佐藤深緋さんを頼るように。

風雅と過ごした数年間、本当の弟が出来たみたいで嬉しかったぞ。両親もお前の成長を楽しみにしてたんだ。しっかり大人になってくれよ?


あれ?これ、俺が死ぬ前提みたいだな。ま、いいか。このノートはあくまで保険だ。こいつが役立つ日が来ないことを願って。


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