「決して結ばれない相手ーー」
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騎士はリゲルといった。
彼はこの国では珍しい獣人であった。
この国では遠い昔、獣人は貴族の奴隷として飼われていた。
むろん、今では禁止されており、獣人の地位も向上したが、差別がなくなった訳ではない。
なぜなら、彼らは筋肉質な身体をもち、人にはない耳と尻尾がついているからである。
人々はそれを嫌うため、なかなか差別はなくならなかった。
とくに貴族は獣人を下に見る傾向があり、貴族と近づくことはもちろん、王城の近くに住むこともなかった。
一定の生活が保証されるようになった今でも、獣人たちは肩身の狭い思いをしているのだった。
その獣人の中でも、リゲルは特に目立つ見た目をしていた。
髪も耳も尻尾も真っ黒だったのだ。
リゲルは黒豹の獣人だった。
獣人の中ではさほど目立つものではなかったが、この国では色素の薄いものばかりで、金髪や銀、茶色が主流だった。
黒髪の者など一人もいなかったのである。
リゲルは獣人であることと、髪が黒いことで二重苦を負っていた。
そんなリゲルであったが、騎士としての実力は素晴らしいものだった。
そもそも騎士団には多くの獣人が所属しているのだが、その中でもリゲルは団長に抜擢されていた。
22歳という異例の若さである。
リゲルは王城を護ることも任されるようになったが、普段はフードを被って見た目を隠していた。
貴族たちも、フードを被る者が獣人であることはわかっていても、おおっぴらに彼らを貶めるような発言はせず、いないものとして扱っていた。
そんな中、ロゼッタと会っていたのである。
当時10歳であったロゼッタは、よく王子と一緒に騎士団を訪れていた。
リゲルを見るなりフードを無理やりはがし、犬みたいだなんだといってもてあそんだ。
騎士団は、貴族のご令嬢や王子に逆らえるはずもなく、なかされるがままだった。
騎士団の仲間は密かに、ロゼッタに触られることを喜んでいた。
大人たちに比べれば、ロゼッタたちの犬扱いは大したことがなかったし、ロゼッタのような最上級の美少女にもてあそばれることは皆の密かな楽しみだった。
それはリゲルにも不思議な気持ちを生んでいた。
ヒトと違う部分をバカにされていると感じる反面、もてあそぶだけで暴言をはかないロゼッタに愛情を感じていた。
リゲルのような獣人は、ロゼッタのような女の子に触られることさえなかったのである。
何度も会いにくるロゼッタに愛情を感じる一方、永遠に相容れない相手であることに憎悪をも感じていた。