え、なんか丸いんですけど...
「お父様、お母様、おはようございます!」
「ああ、おはよう私の天使。」「おはようロゼッタ。」
キラッキラなブロンドの髪にアメジストの瞳を持った母。
同じく、キラッキラなエメラルドグリーンの瞳を持った父。
ロゼッタの記憶にある印象とは少し違ったが、美しい色をもった両親だった。
「頭を打ったところはもう大丈夫かい?私の天使。」
「ロゼッタの可愛い顔に傷でもついたら大変だわ。」
ロゼッタの両親は少し過保護なようだ。
両親も悪い人ではないと分かり、ロゼッタはホッとした。
ロゼッタは視界に映る自分の髪が母にそっくりなプラチナブロンドであることに気づいた。
前世で顔面にコンプレックスがあったロゼッタは、ちやほやされていた今度の自分の顔にひそかに期待をしていた。
部屋に帰るとすぐ、鏡台の前に立った。
「メアリー...?私って、社交界で人気だったわよね...?」
「え、ええ。ロゼッタお嬢様にはパーティーの招待状も沢山届いておりますが...?」
人気のあるご令嬢は特にパーティーへの招待状が届く。
ご令嬢目当てに男性を呼び、その男性目当ての女性を呼び込むためだ。
有名なご令嬢が自分主催のパーティーに参加してくれることは、一種のステータスにもなっている。
(.....おかしいわ...)
ロゼッタは奇妙な気持ちになった。
鏡に映ったのは、母譲りのプラチナブロンドの髪と、アメジストのような瞳。
それより印象的なのが、体型である。
今までなぜ気がつかなかったのか?
というほど太っている。
そう、ロゼッタは太っていた。
ロゼッタは自分の手を頬に当てた。
プニッという感触があった。
顔は真ん丸。
手も真ん丸。
体のあちこちがプニプニで丸々していた。
(....どういうこと!?)
ロゼッタは困惑した。
記憶にあるロゼッタは、社交界でもモテモテ、国随一の美しきを誇る女性だった。
はずーー
なのに、一重まぶたで丸々としてるだと...!?
「ロゼッタお嬢様...?」
鏡をじーーーっと睨みつけたまま、不思議な行動にでるロゼッタを、メアリーは心配そうに見ていた。
ロゼッタは先ほど会ったばかりの両親を思い出した。
ロゼッタの両親も同じく丸々とした体型をしていた。
貴族然としていたから気にならなかったのもある。
昔は細くて綺麗だったんだろうな、と。
ロゼッタは勝手に想像していたのである。
その後、この国では、丸々とした女性がモテるらしい、とロゼッタは学んだ。
メアリーは、ロゼッタから見るとスレンダーな美女だと思っていたのだが、メアリー曰く「人生で一度も男性に声をかけられたことはありません。男が裸足で逃げ出すような体型なのです。お嬢様のような素敵な体型であれば....」ということ。
実際メアリーはそれが原因で彼氏と別れたばかりらしい。
ロゼッタはなんとも言えない気持ちになった。
(あんな美人なメアリーよりモテる私....)
鏡を見てショックを受けた。
しかも、体型はそうそう変わらないものらしく、ダイエットに励んでも効果はほとんどない。
顔にまでお肉がついているロゼッタは、一重まぶたが直る見込みもない。
そんな現実に直面したロゼッタは、まぶたを上げたり下げたりすることに忙しく、メアリーにけげんな顔をされていることに気づいていなかった。
しかし、この見た目は万人受けするらしい。(ただし自分を除く)
ー自覚ありのモテない私に愛を囁く殿方ーー
ロゼッタは寒気を感じた。
ただ、それでもロゼッタの頭の中では、かっこいい男の人に囲まれる自分の想像ができていたのである。
正直、ロゼッタもまんざらでもなかった。
ただ、ロゼッタは忘れていた。
問題はそれだけではないことを。
ぽっちゃり、と呼ばれる方への表記があります。
ぽっちゃりという言い方がしっくりこないので、丸々という表現にしております。