ヒロイン現る?
会場が少しざわめいた。
入り口を見ると、一人の少女が父親に連れられ会場へと入ってくるところだった。
(あれは....ハイドロ男爵...)
娘などいないはずのハイドロ男爵が、一人の少女を連れてきたことに驚くものがいた。
それ以上に、その少女に視線が集まる。
少女はとても美しかった。
ピンクブロンドの髪に、ゴールドの瞳。
なんといってもふくよかな体型をしていることが、ドレス越しにも分かる。
ロゼッタの隣にいるエドガー王子も、初めて見る少女に視線がくぎ付けになっていた。
それに気づいたロゼッタは、急に不安になった。
今まで、他に並ぶものがいなかったからエドガー王子を独り占めできていたのではないか、と。
ロゼッタは王の方へ向かってくるハイドロ男爵に声をかけた。
「ごきげんよう、ハイドロ男爵。」
「これはこれは、ロゼッタ様、お久しぶりでごさいます。」
(ハイドロ男爵はこんな方だったかしら...?)
ロゼッタは不思議に思った。
ハイドロ男爵の家は慢性的な資金難に見舞われており、爵位も低いことから社交界にもあまり姿を見せてはいなかった。
なにかの折に出てきたとしても、自信なさげにオドオドとした姿が印象的な男だったのである。
「そちらは、どなたかしら?」
ロゼッタは、あえて少女に声を掛けることなく、ハイドロ男爵に聞いた。
「私の娘です。」
ハイドロ男爵は得意げな顔をして話した。
なんでも、昔関係のあった女との間に子供ができていたことが最近発覚したそうだ。
「あの...プリシラです。」
少女はエドガー王子にペコっと頭を下げた。
「プリシラ、エドガー王子に一曲お願いしては?」
この男爵の言葉に、ロゼッタは怒りをおぼえた。
エドガーはパーティーで私以外の女と踊ったことはなく、他の誰とも踊らないことが暗黙の了解となっていたからだ。
それでも、エドガーはプリシラの手を取った。
プリシラの踊りはとても拙く、王子の相手としては全く不十分であったが、プリシラの表情も王子の表情もとても明るいものだった。
ロゼッタはそれからプリシラを目の敵にするようになった。
ロゼッタとプリシラでは、家の格や動作から滲み出る気品などに圧倒的な差があり、ロゼッタの方が美しいことは誰の目にも明らかだったが、エドガー王子の視線を奪ったプリシラに敗北感を味わったのであった。
新しく社交界に参加するようになったプリシラだったが、公爵令嬢であるロゼッタから避けられているプリシラに近づくご令嬢はいなかった。
しかし、プリシラは全くめげていなかった。
それどころか、その間にもプリシラはエドガー王子との仲を深めていた。
エドガー王子は、ロゼッタのことは気に入っていたが、目の前に現れたプリシラに心を奪われかけていた。
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このままロゼッタは悪役令嬢になる運命、だったのですがーー?