+現地点+
3年ぶりです・゜・(ノД`)・゜・
さて、今度こそコンスタントに(∩゜∀゜)∩age
◆◇◇Step by 8◇◇◆
未知が道に代わる昼下がり、当たり前のようにある対岸に求めたくなる。疲れているのだろうか。彼女の足音が響くのを心地よく思っている。猛暑と言うなら、今がいつか知らないが今年だろうと思う。かすむ視界にふと頭をよぎったことも、うやむやに消えた。
荷車のところまで戻れば―――、彼女は思い出すのだろうか。
もうすぐ三時間半ほど下ったことになる。そろそろ見える。時間だけを気にして見上げては、そのなんとなくな時間感覚の主を見る。
―――まだ高かった。
何にしても、荷車のところに着けば解決する。
そんな淡い期待しかなかった。
―――彼は無口だ。
なかなか辿りつかないことに、焦りを感じていた頃だった。後ろの足音が大きく、リズムが速くなる。気づくとすぐ近くを風が吹き抜けた。彼女の最後の跳躍が意外で、呆気にとられた。
「はやく。 見えた」
だけど僕は後ろを見た。灯台は、すでにずっと前から見えなくなっていた。遭難していた記憶が見える希望より、見えない不安を僕は恐れていた。
「行くか?」
「うん」
彼の問いに少しの間を置いて答えた。彼女のもとへと僕は駆けた。彼に遅れて、僕が着いた。
(それにしても―――、この荷車はどこに向かっていたんだろう)
(いや―――、彼女はどこに向かっていたんだろう)
(アルン…?)
とても地名とは思えなかった。確かに赤毛は日本人としては珍しいが、アルンなんて地名を彼女が言うのだから違和感しかない言葉に思えてならなかった。頭を振って意識を現実に戻すと、荷車の荷を下ろしを始める彼女に駆け寄り受け取る。
「―――重たいね」
また頭を振って、意識を現実に戻す。(こんなの少女が持てる重さじゃない)いや、彼も彼女も平然と作業を続けている。なんとも釈然としないが、作業を続けた。こうやっていつしか考えることを止め、僕も大人になっていくんだろうなって思った。
だって人が軽く感じようが、重く感じようが僕にはどうでもいいことなのだ。人がどう感じているかなんて本当のところは分からないから、同じかどうかなんて想像もしない。
勿論、低温睡眠による体力の低下も考えられたが――
(いや。)
はたして、そうなのだろうか。これも、彼が言う思い込みによる効果なのだとしたらどうだろう。
(違っている可能性がある?)
果たしてありえるのだろうか。そんなことを考えていた―――。
「さて。どれを持ち帰るかな」
確かにもう白く色のない月が出ていた。だけど、彼女さえ思い出せば二つの道が生まれるはずなのに―――。
(なぜだろう。―――この噛み合わない感じは)
僕だけが取り残されている。それが何故なのか。僕だけが何か根本的事実を見落としている。
僕はまた、彼との会話を思い出していた。
記憶が無いことで眼鏡をかけていたことさえ忘れているのかもしれない。
でも…、目の前の景色はよく見えている。
当初僕は、自分の考えが客観的観測の結果だとして考えていた。だが本当に必要なのは、逆の発想だったのかもしれない。それは僕が、人は人、僕は僕と、自分を他人と比べず生きてきた人間だったからの見落としだったんだろうと思う。
この日本と言う国に置いて、よそはよそ、うちはうちと言う基礎概念が柔軟な思考を阻害して僕も今日まで育ってきたんだろう。
自らの結果を真としてはいけない。
彼はあのとき最初の広場で、僕がここにどのくらいいたのかを聞いた。彼女は、記憶こそ無いもののあの広場にはいなかった。そして僕は、本当かどうかの確証はないが昨今まで低温睡眠だったんだろう。
おそらくここに、すべての根幹を内包している。
「戻ってきても還れない」
そして、彼がまたこう告げた。
これは、彼女もまた荷車まで戻っても思い出せなかったことに対する言葉だったのかどうかは分からないが、僕たちはその言葉を聞いて荷物の開封作業に入った。
◆◇◇Step by 9◇◇◆
つまり、答えは二択であってはいけないのだ。常に三択以上の道が介在しているから、他者の存在があるのだ。それが引いては、本当の意味での客観的観測になる。
荷物の中身は、布生地がほとんどだった。商いのために、移動していた。そんな風に―――。だからこそ、思ったんだ。ここはどこで、―――いまはいつなんだろうって。
「山道なのは分かるけど。
荷車だなんて、そうとう田舎なんだね」
―――こんな交通の不便なところで暮らしている人は少ない。
「そうですね。少しボロかったですか」
彼女の声は、より低く、遠耳にも機嫌良くは聞こえなかった。
「そ…んな……つもりじゃ…」
口ごもってしまう。
(なにか。噛み合っていない)
「俺が、低温睡眠に入ったのは2046年だ」
「―――そう。私は、ここでずっと暮らしていたから。いまは―――、たぶん2200年くらい」
与えられた答えに僕は、思い出せないことへの空虚さだけが残った。
僕は彼女の様にここで生きていたわけでもなく、彼の様に2046年を生きていたわけでもなく、いつを生きていたのかさえ分からない。自分の存在に想いを寄せれば頭の中が一瞬、白くなるのを感じてから現実に引き戻された。
そう―――。違和感のせいだ。
「なぜ、くらい?なの」
―――彼女は年代を断定していないことに違和感を覚えた。
「隕石衝突による地軸の変動。
それによる地球公転周期の変化もあるけれど―――。
誰も衝突以後の世界を観測出来ていないから」
「つまり?」
「いまは2200年なのかもしれないし、そうではないのかもしれない」
読んでくださいましてありがとうございます。