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EP:8

「恭平さん。今時間ありますか?」

 部屋に来たのはハルカさんだった。

「どうしたのハルカさん。とりあえず入ってよ」

 ハルカさんを部屋に招き入れる。失礼しますといって入ってくる。

「ごめん、散らかってるけどそこらへんに座っててよ。ちょっと片付けるからさ」

「あ、お構いなく」

 ハルカさんは気にしていないようだったがそれでも散らかった部屋を見られるのはあまりよくないので大体のものを片付ける。

「で、突然部屋に来て一体どうしたの?」

「あ、それはですねぇ」

 ハルカさんはもったいぶった言い方をする。

「それは……?」

 ごく……僕ははなぜかつばを飲み込んだ。部屋の中に神妙な空気が流れる。

「えっと、これからはしばらくこっちで暮らしてて良いって許しを貰えたんですよ!」

「おお!」

 よくわからないけどハルカさんの雰囲気に押されなんとなく驚いてしまう。

「で、それはどうゆうこと?」

「えっとですねぇ、天界には天界人は他の世界には行ってはいけないって言う決まりがあるんです」

「ふむ。でもハルカさんはそれを免除されたというわけか」

「はい!でもそれだけじゃなくてこっちのデータを向こうに送り続けていれば監視の者も来ないんです!」

 へぇー。天界ってなんだか警備というかなんというかとってもしっかりしているんだなぁ。

「なんで天界の人は他の世界に行っちゃ行けないのかな?」

 ハルカさんはそういうことにはあまり詳しくないらしく首を傾げて、

「何ででしょうね?」

 微笑ながら答えた。




「あー暇だ……」

 ハルカさんが部屋から出て行ったあと僕はなんにもやることが無くなってしまった。家にある大体のゲームやら漫画やらはほとんど制覇してるし最近のテレビはあまり面白くないからな。

 とりあえず何となく喉が渇いたので1階にある台所まで行って何か飲み物を探すことにする。

「あれ?コニカ?」

 階段を下りてすぐに玄関にいるコニカが目に入った。服も着替えていてこれから外出するようだった。

「おーいコニカ。お前今からどっかいくのか?」

「あら、恭平じゃないどうしたの?」

「いや、お前がなんか外に行こうとしてたからちょっと気になって話しかけただけだよ」

「そうなの?あ、ちなみに私はただ人間観察に行ってこようかなって」

 人間観察ぅ?なんだそりゃ。僕が顔をしかめているとコニカは、

「あれ?最初にあった時言わなかったっけ?こっちには人間観察に来たって」

 あー……そんなことも言った気がするなぁ。どうも僕は記憶力がいまいちのようだ。

「わるい全然覚えてない。で、人間観察ってなにするんだ?」

「覚えてないってあんたねぇ……」

 コニカはあきれてしまっている。人間忘れる生き物なんだからしょうがないだろ。

「まぁそれはどうでもいいわ。人間観察の内容が知りたいんだったらついてくる?」

 これにより僕のこれからの予定は決まった。




 今僕とコニカは街で一番人通りの多いショッピングモールの中のベンチに座っている。

 人間観察とはその名の通りただひたすら行き行く人を見ているだけだった。コニカはなぜか一人納得しながらメモのようなものを取っている。

「なぁコニカ」

「なによ」

「一体そのメモに何かいてるんだ?」

「これのこと?これには今まで通りすぎてった人の大体のプロフィールとかを書いてるの」

 プロフィールを書いてるって……

「お前そんなこともできんのか!?」

「うふふふふふ。異世界の力をなめてはいけないわ」

 恐るべしコニカの世界。あっちの世界にはプライバシーってものは無いのか?

「なーんちゃって。そんなことできるわけないじゃない」

「っておい!今までのは嘘かよ!」

 思いっきり突っこんだ。今までで無いってぐらい突っこんだ。

「あ、でもプロフィールを書いてるのは本当よ」

「どうやって?」

「えへへー、実はただの勘」

 笑ってごまかそうとするコニカ。そしてそれをただ見つめる僕。

「勘だけに恭平はカンカンになってるわね……なんちゃって」

「……」

「あの、えっと」

「……」

「その……」

「……」

「……ごめん」

 よっしゃ勝った!初めてコニカに勝った気がする。

 え?なんの勝負かだって?そんなこと気にしちゃいけない。

「あーごほん」

 軽く咳払いをしてまた話し始めるコニカ。

「とりあえず私は人を見た目で判断してそれをあとで正確なデータと照らし合わせて、色々するために情報を集めてるの」

「ふーん。でも知らない人のプロフィールとか考えんのは面白そうだな」

「でしょでしょ?私も意外に楽しんでやってるんだ」

「たとえばあそこのおっさんとか」

「あーあの人ね」

「きっとあの人は家では娘の遊び相手をしてやれていないんだ」

「だからこんなところに来てプレゼントを探してるわけね」

「その通り。だけど娘が喜びそうなものはみんな値段が高くておっさんの財布の中身では足りないんだ」

「でもこのまま帰るわけにはいかないから適当な雑誌を買っていくと」

 しらないおっさんだけでここまで盛り上がれる僕たちって一体。

 まぁでもコニカとこんなに話す機会もあんまりないし、これはこれで楽しいからいいか。

「ねぇ恭平。あの若そうな人は?」

「んー?あれかぁ。あれはきっと……」

 そんな感じで僕とコニカは夜遅くまでひたすら人間観察を続けた。



「ただいまー」

「右に同じー」

 人が少なくなってきたので人間観察を切り上げて帰ってきた僕たち。

 パタパタとスリッパの音が聞こえてきて玄関までハルカさんが出迎えに来てくれる。

「お帰りなさい恭平さん、コニカちゃん。こんな時間までどこに行ってたんですか?」

「ねぇねぇ恭平。」

「ん?」

「どう?」

「んー、優しいお姉さんタイプで面倒見がよさそうだけど、実は腹黒とか」

「あー、それはありえそうね」

 納得するコニカ。そして頭の上に?マークが出ているハルカさん。

「あ、今のことは気にしないで」

「は、はぁ……」

「さてと、私は今日のデータでもまとめてくるわ」

 そういって自分の部屋へ行くコニカ。

「あ、恭平さん。お風呂沸いてるんで入っちゃって下さい」

「あ、わかりました。今から入ってきます」

 よし、風呂に入ってすっきりしよう。意外に人間観察は疲れたし。

「しかしコニカがあそこまで話せるやつだったとはな……」

 僕の適当なボケにも的確に乗ってきたし。

「だけど料理の腕がなぁ……」

 まぁあれは料理の腕というか、レシピに問題があったかもしれないが……

 風呂から出た僕は自分の部屋に戻り、そしてまた暇になった。

「あー、暇だ……」

 あまりに暇すぎたのでなにかゲームをやろうと考えた。なにがいいかなーと探しているうちに目についたのは、赤い帽子とちょび髭のおっさんと、その仲間やら他のキャラが闘うという少し前に大流行したゲームである。

「たまにはやってみるか」

そして真四角なハードにディスクをいれ、起動。

 陽気なリズムと共に画面には四角いマークが映し出される。たしか起動の時になにかボタンを押すと何かが起きた気がする。

 リアルなオープニングは当時なかなか驚かされたもんだ。オープニングも終わり、ゲームモード選択へ。特にやりたいこともないのでコンピューターと闘うことにする。

 久しぶりと言うこともあってコンピューター相手に少し苦戦してしまった。僕の全盛期はこんなんじゃなかったのになぁ。

 そして気合いを入れてやり直そうとしたとき、本日二度目のコンコン、とドアをノックする音が聞こえた。

「恭平くん?今暇かな?」

「全然暇だ。だから入ってきていいぞ」

 アイは失礼しまーす、と言いながら部屋に入ってきた。

「で、なんの用だ?」

「えっと、暇だからちょっと恭平くんと遊ぼうかなぁって……」

 なんだ、アイも暇だったのか。じゃあこれはアイも誘ってゲームをやるしかないじゃないか。

「よし、アイ。これを持つんだ」

 コントローラーをアイに渡す。アイはコントローラーをみて首を傾げている。

「なにこれ?」

「とりあえずアイは僕の言うとおりに動いてくれ」

「う、うん」

 不安げにうなずくアイに操作方法を教えてやる。

 ――これでしばらくの暇はつぶせそうだな。

 アイに教えながら僕はそんなことを考えていた。





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