第2章 3話
「………」
鬼は町を歩いていた
すれ違う人々を
鬼は動く肉片程度にしか
認識出来ない
鬼は磨耗していた
神経が心が思考回路が肉体が
全てをすり減らし
鬼はいくつもの戦場を
駆け抜けてきた
敗走もしたし
傷を負った事もあった
しかし鬼は全ての戦場から
生還してみせた
そんなぎりぎりの場所にいた鬼
ある日ある時
なんの前触れも無く
鬼はその場から滑り落ちた
ぎりぎり踏みとどまっていた
全てが転がり落ちてしまった
以来鬼は虚ろな目で
町を徘徊し
獲物を見つけては
殺すようになった
今となっては
殺人鬼という鬼に
変わり果てた存在も
昔は人間だった
それもただの人間では無かった
戦場では
誰よりも多くの仲間を救い
誰よりも多くの敵を殺した
そんな鬼を仲間は
英雄と讃えた
お前がいれば我々は
決して負けないと
王や貴族から
誉められた事もあった
しかしその裏で
敵対した組織や軍勢では
鬼は殺人鬼と蔑まれ
恐れられていた
鬼は降り出した雨に
顔を上げる
自分は何故
人を殺すのだろうか…
鬼は少し考えだ後
考えるのをやめる事にした
何故自分が人を殺すかなど
どうでもいい事だった
理由なんていらない
自分が鬼であるなら
人を殺す殺人鬼であるなら
自分が人を殺すのは
どうしようもなく
仕方がない事の気がした
鬼は虚ろ目で
獲物を探し始めた




